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ヤスリ大好き。フィギュア制作のため、私が発明した画期的なヤスリとは?

私はレジン製の小さな猫を作る造形作家です。私は「ヤスリ」が大好きです。今回は私の造形に欠かせない「ヤスリ」について、ようやくたどり着いた至極の一品と、今まで体験してきたヤスリ達をご紹介したいと思います。


私のヤスリ使用は「粘土原型の研磨」と「レジン原型の研磨」の2シーン

私の猫フィギュア制作で、ヤスリを使うのは2つのシーンです。1つは「粘土原型の研磨」の時、もうひとつは「レジン原型の研磨」の時です。

前者の粘土原型とは、硬化した樹脂粘土ですが比較的柔らかく石膏くらいの硬さ=もろさです。一方レジン原型はそれよりもだいぶ硬く、プモデルのプラよりももう少し硬いくらいです。

そしてどちらにしても、ヤスリでの研磨には「削りカスで目詰まりしやすい」という問題があります。この問題を避けながら、それぞれの作業で効率よく、またきれいに仕上がることが目指すところです。

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【写真上:右が樹脂粘土。左がレジン】

結論。表面仕上げはサンドペーパーが最高。

ヤスリの役目は、形を「削る」レベルと、表面を整える「研磨」のレベル、の2段階があります。その中でデリケートなコントロールと精度が必要なのは、もちろん後者の研磨の段階です。

そこで、私が最も精度良く、信頼しているのがサンドペーパーです。これは金属ヤスリやダイヤモンドヤスリなど固形のものに比べ、使用とともに粒子感が少し柔らかくなるなど非常にデリケートなコントロールができるため、私の作業には最高のツールです。

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【写真上:サンドペーパー。私は240番、320番が主力です。タミヤフフィニッシングペーパー。9cmx23cmx3枚で120円くらい。それを小さく切って使ってます】

サンドペーパーの弱点

しかしこのサンドペーパーの弱点は、シート状なのでコシがないことと、目詰まりしやすいことです。そこで「適度なコシ」と「簡単に取り換えられる」、そんなヤスリがないものか、ずっと考えてきました。

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【写真上:サンドペーパーの弱点。目が詰まってしまう】

大発明!の自作ヤスリ「サンドペーパースティック」

そこでさまざまな試行錯誤の結果、最高に便利なツールを作りだしました。これが私の大発明(←大げさ)チョー画期的な「サンドペーパースティック」です。この名前は仮称です。

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【写真上:サンドペーパースティック。滑り止めのグリップとして太目のタコ糸を巻いています】

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サンドペーパースティックの特徴
●金属ヤスリではなく「サンドペーパー」を使い。
●非常に適度なコシのある硬さ。
●かなり細かい場所でも作業ができる。
●そして比較的容易に次のヤスリに交換ができる。
まさに夢のツールです。

これはもちろん、このまま販売されているものではなく、2つの工具を組み合わせて作りました。それは粘土作業用の金属製スパチュラ(粘土ベラ)に、スポンジヤスリをカットして両面テープで着けているだけです。

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【写真上:スポンジヤスリは、GodHand神ヤス。厚さは用途により2mmか3mm。スポンジ面に両面テープを貼り、7mm幅にカットしてスパチュラに付けてます。】


ここからは私の様々なヤスリ体験、ご紹介。

私の用途では、上記サンドペーパースティックを作りだして本当に作業がしやすくなり、これが一番お伝えしたかったことです。しかしヤスリの試行錯誤は何年も続けてきたことなので、ここからは、私が活用しているヤスリ周辺ツールをご紹介します。


影の立役者はメラミンスポンジ

まずぜひご紹介したいのが「メラミンスポンジ」です。このスポンジは、目詰まりし始めたサンドペーパーを、数回まではきれいにクリアしてリフレッシュしてくれます。これまたチョー画期的なものでした。

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【写真上:メラミンスポンジで、ヤスリの目詰まりを落としているところ。かなりきれいに落ちます】


極小部分はロック付きピンセット

これは仕上げ作業で、サンドペーパースティックも入らない極小な面などを研磨する時のツールです。それはロック付きピンセットでサンドペーパーを挟んで作業をします。

このロック付きピンセットも種類があり、一通り試しましたが、今は先端が尖らず、またクリップの強弱調整ができるタイプが最強です。

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【写真上:◎右・REGINE ピンセット ストッパー付 MR。4,000円くらい。◎中・HARPロック付きピンセット。600円くらい。◎左・HIQPARTS DCロックピンセット。1,600円くらい】

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【写真上:HIQPARTS DCロックピンセットで、サンドペーパーをホールド】


粗めの削りはセラミックブレード

樹脂原型(柔らかい素材)の場合、削りやすい反面、目詰まりもしやすいです。そこで表面研磨の前段階で、多少削る事が必要な場合はヤスリよりも先にこのセラミックブレードで削ります。

このセラミックブレードの本来の用途は、プラモデルのバリを削り取るなどです。刃物では削り過ぎてしまうリスクのある場合に、鋭利すぎないブレードで削るというツールです。

しかしこのツールをヤスリ代わりに使うのは、意外と思いつきにくく、私もつい最近、思いついて使用しはじめましたが、荒削り次元では非常に便利です。特に柔らかめの素材に対しては。

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【写真上:セラミックブレード。◎ガイアノーツ G-12 マイクロセラブレード。1,000円くらい】


電動サンダー

この電動ツールは超高速で前後運動をします。レジン原型仕上げの初めに、荒めの研磨に使います。先端は「サンドペーパースティック」と同様のスポンジヤスリに変更して取り付けています。

◎長所は、おおまかに全体を研磨する際の、圧倒的な仕事量です。◎短所はあまり精度の良い狙い方はできないことです。

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【写真上:先端は勝手にスポンジヤスリを付け、グリップにも滑り止めで太めのタコ糸を巻きました。◎アルゴファイル リニアストロークサンダー アルティマ5 AR105。たぶん13,000円くらいだった】


ハンドグラインダー(リューター)

これは研磨、研削能力は抜群ですが、それがゆえコントロールが非常に難しく、今はあまり使いません。レジン原型のパーティングライン(型の境界にできるズレやバリ)を削る際に使うことはあります。

◎長所は圧倒的なパワーで、ほんのちょっとでかなり削ることができるため硬いレジンをある程度削る必要がある時に使います。◎短所もパワーがあるところで、ほんのちょっとでも触れると確実に削ってしまうので、あまりデリケートで微細な作業はリスクが高く、今は使用していません。

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【写真上:ハンドグラインダー。◎アルゴファイル マイクロモーターシステム スターP30。たぶん3万円くらいだった】


ダイヤモンドヤスリ、棒状ヤスリ

金属棒ヤスリはあまり使いません。それは目詰まりを避ける事が難しいからです。

しかし、そんな金属棒ヤスリの中では、ダイヤモンドヤスリ(=ダイアモンドの粒子をベース金属に電着させたタイプのもの)は、比較的目詰まりのケアができるので使うこともあります。

◎長所は、形が決まっているので用途に合ったものなら的確に削れる。◎短所は2つ。番数の高い(細かい)ものが少ないことと。すぐに目詰まりするわりにクリアに手間がかかる。

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【写真上:ダイヤモンドヤスリ。◎WAVE HG特殊形状ダイヤモンドヤスリ。140番相当。1本、1000円くらい】

極細ダイヤモンドヤスリ

これも棒ヤスリですが、極小スペースを削る時にたまに使います。◎長所、短所は、ダイヤモンド棒ヤスリと同様です。

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【写真上:左から直径0.8、1.0、1.2、1.5mm】


シャープペン型、極細ダイヤモンドヤスリ0.5mm

これは0.5mm幅のヤスリです。シャープペンに入れて使用します。断面はマル型と四角型とがあり、シャープペンの芯を交換する要領で取り換えられます。

◎長所はもちろん微細な箇所を作業できること。◎短所はこれも目詰まりしやすいこと。

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【写真上:スジボリ堂、極細ダイヤモンドヤスリ0.5mm四角型 600番相当。3,000円くらいだったような。なおシャープペンは付属のものから交換しています】


シートタイプダイヤモンドヤスリ

ダイヤモンドヤスリのシート状のもので、自分で好きな形に切って使います。粒度はいくつか種類があったように思います。私は400番を買ってみました。

◎長所は、形状もある程度自由度があるので、使いたい形にできるところが便利です。◎短所はこれも目詰まりしやすいこと。

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【写真上:シート状ダイヤモンドヤスリ。400番相当。1,500円くらいだったかな】


グラスファイバーヤスリ

これは少し変わったヤスリで、グラスファイバーの束で消しゴムのようにこするヤスリです。

◎長所。これは実質的にひっかいているので、目詰まりということがないこと。◎短所は、こする流れの中で、始点、終点が明確でなく、シビアな小面積などの研磨に向かない点と、思ったより番数が荒めで、サンドペーパーでいうと240番から180番くらいの印象がしました。

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【写真上:グラスファイバーヤスリGF-1。1,200円くらい】


ベルト式ヤスリ

目詰まり問題解決の1つ方法として、次々と新しいヤスリ面を繰り出せるベルト式のヤスリです。実質的には布ヤスリを細くカットしたものをベルト状につなげて、その周回分を使えるというものです。

◎長所は、細めの面にも平面のコシのある状態で研磨できることと、すぐに新しい面を出せる。◎短所は、ベルトのはめはずしにちょっと手間があることと、そもそもこのベルトが固有の商品なのでコストが高め。

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【写真上:TRUSCOマルチサンドペーパー 320番。500円くらい】

「研磨の時間」はけっこう長いから探求の価値あり。

以上が試行錯誤してきたものからのピックアップでした。今、使用しているもの、今は使用していないもの、いろいろあります。

しかし私の経験上、当初は使わないかなと思っていたものでも、例えば数年後に「あ、あれが使えるかも」と思い出して使うケースも少なくありません。

「私の造形」において、ヤスリを使った研磨、研削の時間はかなり長いです。制作プロセス全体の中でも3~4割を占めるくらいのイメージです。そのため、この研磨をいかに効率よく、品質良く仕上げるかは、とても大きな課題ですし、そこを探求する価値はあるように思います。

まあ、そもそも工具などのツールが好きでもあり、今後もまたより良いツール、より良い使い方などを研究していきたいと思います。

今回もオタクちっくな長い話になり大変恐縮です。長らくお付き合いいただきありがとうございます。

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