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パンツスーツ姿のアヤ、びしっとメイクを決めている
「行ってくるね」
「行っといで気を付けて」

  なんて綺麗なんだろう可愛いんだろう
アヤが動いているのを見る度ニマニマしてしまう

アヤとつがいで居る事が僕の何よりの慶びで楽しみだ
それを邪魔しようとするなら赦さない
産まれて来たことを後悔させてやる


アヤの視線と聴覚が僕のデスクトップに飛んでくる、アヤがかけている眼鏡型カメラはめっちゃ高性能だ そして盗聴盗撮センサーに対してステルスだ

(株)鈍通の重役室のソファ、テーブルを挟んでアヤが座っている、音声、映像感度良好

「依頼人は被害届を取り下げるつもりは無く、またそれを理由にこちらの内定を辞退するつもりも有りません」

アヤの左側から聞こえるのは弁護士如月冴子先生の声

「被害届を取り下げないなら内定を辞退しろと恫喝されてますね」
「いえ、恫喝ではなくお願いで交換条件です」
コンプライアンス担当重役が落ち着いた声で答える

「交換条件にもなっていないですね、どちらも依頼人の負担と不利益にしかなりません 社内で業務に集中するための環境、安心して過ごす権利、尊厳が脅かされている状態の解消」
「ですから、山本は馘首、その他の分は当社からの解決金を」

「セクハラ絡みの窃盗犯の雇用を続ける事は貴社の不利益、子会社に籍が変わっただけだと認識していますが、それも依頼人に何も落ち度はありません、それで一千万? 貴社の初任給+みなし残業+諸手当で初年度年収450万弱、そこから昇給を考慮すると2年分ですが、これを妥当と?」
「当社規定の解決金です」
重役は碇ゲンドウみたいに言い放つ

「山本実氏の所業で御社の解決金の規定が一千万? 窃盗 セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、職権による鍵の不正使用?」
「一体、おいくらご希望でしょうか?」
声音に侮蔑が含まれてきた

「蓼丸氏は解決金ではなく、通常の勤務が出来る様 改善を希望しています」
「重々承知ですが、入社前に問題が起きた以上、周囲との摩擦が避けられず、お辛い事になるのではと」

「社員になる前、身分が確定する前だから面倒な相手は斬る方が社として得、そう仰る?」
「世論の代理人代理店である弊社は未来あるお嬢さんの為円満な解決を提案しています」
組んだ両手の甲に顎をのせて どやっと言いそうだ

「コネ入社で今も重要な取引先の縁者で有る山本氏を守る提案ですね」
「どう取られても構いません、蓼丸氏に歩み寄りが見られず、代理人同席という強硬な態度に出られた以上、内定取り消しはただいま決定、解決金をもって終了としましょう」
社のゲートに有る中華製チェッカーの性能を信じている(株)鈍通重役は強気だ

「蓼丸氏の代理人で有る私は未来ある御社の為に円満な解決を提案しましたが決裂の様ですね」

僕はappleを立ち上げた あれこれ依頼を打ち込む オファーの金額が提示され、3箇所に振込を完了した。  

「では、お引き取り下さい」
碇重役はニヤリと笑うと立ち上がった アヤと冴子先生も立ち上がり視線が変わった

「示談書は先生にお送りします、押印が確認されたらお振込みします、解決金の振込先は先生の事務所で宜しいですね」
「性急で強引ですね、暫くお待ちください、慌てるなんとやらは貰いが少ないし、身の程知らずに強引にすると女性にモテませんよ」

「これは余計なお世話ですな」
碇はちょっと怒ったみたいだ 声のトーンが下がった

「たかだかの年収と地位に尾を振るビッチにはモテる男に見えるんでしょうね」
冴子先生キッツ(笑)

「失礼します」
アヤの声が入り、一礼した視線の移動、ドアが開き廊下を歩く、沈黙のまま社のゲートを出た 地下鉄銀座線 アヤがイヤホンを装着

「冴子先生の事務所へ迎えに行く」
「Copy!」

赤坂見附乗り換えで25分ってところ、僕は西新宿へ歩き出す

冴子先生のTokyo city法律事務所は33階 冴子先生の元亭主健吾先生が出迎えてくれた 細長い面談室に入り対面して座る

「早速プレッシャー来てるよ」
健吾先生は顎髭を撫でながら言う

「うちのボスに鈍通から入電した」
「へぇ」

「跳ねのけてた」
「ほぉほぉ、正義の味方」

「という名目で涼次と組んでる方が金になるから」
「正解じゃん いくら引っ張れそう?」

「9桁かな 山本実の実家関係の代議士に手を回してるみたいだから、逆に突けそうなんだよね」
「あ~ もうすぐ選挙ありそうだし票に関わっちゃうもんね」

「成功報酬20%だから、ボスはホクホクさ アヤちゃんも億万長者だ 棄てられるなよ」
「健吾さんじゃあるまいし」
健吾先生、ちょっと嫌な顔を見せたけどすぐに笑ってごまかした

ドアが開いてアヤと冴子先生が入室、寒い所から来てコートを取ったら二人の匂いがかすかに香る アヤは僕の隣に

「男の子同士楽しそうだね」 冴子先生
「アヤに棄てられるぞってアドバイスされた」

「私が捨てるわけ無い」
「そうよ涼ちゃんは健吾と違っていい気になって暴走しないし、よその女に手を出したりしないから大丈夫」

健吾先生はヤベって顔になった




 

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