DJ SODA事件について──問題は服装ではなく距離

 DJ SODAがMusic Circus'23出演中に観客に胸等を触られた件が物議を醸しています。しかし、この件に関する議論は、概ね的を外しているように思います。

 まず、これは、野外フェス中の出来事です。そして、出演者を見ると、DJ SODAに限らず、自己の性的な魅力をアピールすることでファンを集めてきた人たちが多いです。すると、当然、そういうアーティストが好きな人たちが多く集まってくることになります。なので、客層の品位はもともと期待できません。

 スタンディング形式のライブの場合、アーティストが客席に近づいていけば、その近くにいる客は通常手を伸ばします。普通のライブハウスの場合、ステージと客席との間には1メートルくらいの隙間が設定されています(公式カメラマン等がここを使って左右に動き回ります。)ので、アーティストと客は握手したりハイタッチしたりするくらいしかできません。

 しかし、アーティストの側でさらに客に接近すると、客はさらにアーティストに接触してきます。例えば、アーティストが客席にダイブしてきた場合、客は、アーティストの身体に接触し、これを支えます。このとき、客たちが、「アーティストのお尻や胸に触れるのはまずい」としてさっと避けてしまうと、アーティストはそのまま床に落ちて怪我をします。

 また、アーティストが、客の最前列にある柵のところまで寄っていくと、客の手は、アーティストの頭や顔や腕や身体に接触できるところまで伸びていきます。この場合、横並びの客や後ろの列にいる客の手も同時に伸びてくるので、「アーティストの身体のどこに手が接触するか」を客側でコントロールするのは大変だと思います。このため、伸ばした手がアーティストの胸にあたるという事態自体は十分に起こりうる話です。

 この点に関して、アーティストの露出度の高さは実は関係がありません。なんなら、アーティストの性別も関係がないし、客の性別も関係がありません。その手がアーティストの胸にあたった場合ですら、性的欲望を満たす意思すら客にはありません。

 しかし、日本で、「客の手が伸びてアーティストの胸にあたった」という事故が起こると、すぐに日本人男性一般や非モテオタク男性を貶めるのに活用しようという人たちが出てきておかしな議論を始めます。

 この件は、アーティストが露出度の高い衣装を着て踊っていた結果性的に刺激された観衆がステージの上に登ってアーティストの胸を揉んだという事件ではありません。写真を見る限り
アーティストが柵のところまで寄った結果、近くにいた観客たちが一斉にアーティスト側に手を伸ばし、アーティストの身体の様々な部分に接触していることが分かります。その中に、たまたま胸に手が当たってしまった人がいるだけのことです。ジェンダーギャップ指数の順位が云々は全く関係のない話です。この客層なら、桑田佳祐が柵のところまで寄ってきても、同じような行動をとるのだろうと思います。

 したがって、こういう事故の再発を本気で防ぎたかったら、アーティスト側に、「どこまでなら客に近寄っていいか」を徹底することです。服装がどうなのかというのは無意味な話です。日本では、アーティストが露出度の高い衣装を着て踊っていた結果性的に刺激された観衆がステージの上に登ってアーティストに対し性暴力を働くという事案はほぼ起こっていません(少なくとも、私は聞いたことがありません。)。

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