見出し画像

2022.08.13 RSR 2022 in Ezo "NUMBER GIRL"

唯一無二の存在、実に、OMOIDE IN MY HEAD状態である。

正直、ライジングサンでのNUMBER GIRLの熱演をnoteに書こうか迷った。何故なら、冒頭の一文で充分だ、と感じたからである。

ここまで、言葉で言い表し難いライブを見たのは400本以上ライブを見ていて初めての感覚に近い。
NUMBER GIRLを初めて見たのは再結成後に行われたツアー「逆噴射バンド」以来なので、初めてなわけでもない。

非常に形容し難い。

熱演。そんな言葉で伝え表せないほど、どちらかというと一種の衝動のようなもの。

体感的にもそう感じたし、実際そうだったと思う。
それを踏まえ、でも、しかし、限りなく、覚えていることは、書き記していくことにする。

スタッフによる機材の準備がある程度終わったあたりで、しれっとステージにThis is 向井秀徳(Vo,Gt)が現れる。当然といっていいかわからないが、マスクをつけている。

去年フジロックの生配信の中で、NUMBER GIRLの演奏も生配信されていた。演奏はさることながら、Twitter上で自分が印象に残ったのは、「あの向井がマスクをつけて入退場、演奏中に酒も飲まず。向井をここまでさせてるんだから、コロナをしっかり対策とって生活していかないといけないと考えさせられる」と呟いてる人がちらちらいたことだ。当時、確かに、と思わず自分も頷いていたなあと。

この日はステージ上に黒ラベルの350ml缶がしっかり5本置かれていた。どこかほっとした。

ちなみに自分はこの日、下手側で前から3列目くらいで見ていた。中尾憲太郎(Ba)がグレイトフルに近い。

メンバーによるサウンドチェックが行われる。

余談だが、スタッフが弾いても音がでかかった、ベースはナカケンが弾くと更に音量が増してて、一緒に見てたやつと笑ってしまった。

ちなみにだが、本番中もナカケンは、スタッフに耳打ちしていた場面があったが、その後すぐに全体の出音がデカくなった。さすがすぎる。

そして徐に向井が弾き始めたのは、ZAZEN BOYSの「KIMOCHI」のワンフレーズ。向井なりの粋な計らいなのか、それとも鳴らしたかったのか、わからないけれども、観客はこの時点で盛り上がりをみせる。

「貴様に伝えたい 俺のこの…」

と続く所で、「あのー、もう本っ当にうーーーーっすら上がってるか上がってないかわからないくらい、マイクの音量あげてもらっていいですか」と「キモチ」の代わりの業務連絡に観客は笑ってしまう。

「じゃあ曲でちょっとやってみましょう。DESTRUCTION BABY」と言って、そのまま一曲フルで通すのである。まだリハなのに拍手は鳴り止まない。

その後も向井のどこか独特の言語感覚が、ただのリハなのに、ステージを見入ってしまう。これもまた魅力、なのかもしれない。

「始まるまで、ずっとステージにいようかな」

向井がそう言ってドラム台に腰掛ける。定刻の18:10まであと10分ちょっとはあったが、他の3人も各々スタッフと談笑したり、各々のペースでステージに残り、結局誰一人袖に引き返すことなく、本番の時間を迎える。

向井はずっとドラム台に腰掛け、ただただ何かを眺めている。

2019年2月、例年より早いRSRの第一弾アーティスト発表。そこに「NUMBER GIRL」の文字があった。再結成発表の瞬間だった。

ライジングサンに出ることを大きな目的として再結成されたバンドのこれから行われる演奏を、観客もそうだが、向井自身もどこか楽しそうにしてるし、寂しそうにも感じる。

時より起こる観客からの手拍子に近い拍手が起こっては、ビールを口にする、というまるで飲み会か、というようなやり取りも数回あった。

定刻になり、ライジングサンのアーティスト登場前のSEが流れる。メンバーが定位置につき、楽器を持つ。

3年待った瞬間が今始まる。

「どうも、福岡市、博多区からやって参りました、ナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」

アヒトのカウントから『タッチ』でライブは幕を開ける。イントロで向井のギター一本になる時の向井のどやっ、と見せつけんばかりの表情がたまらない。

そのまま『ZEGEN VS UNDERCOVER』を弾き始める。

「ヤバイ さらにやばい バリヤバ」

声を出して良い状況なら、皆が歌っていたであろう冒頭。今この状況、バリヤバだ。

そして、『TATOOあり』では、田渕ひさ子(Gt)のギターソロ、動きは静的、しかし、狂気に満ちたようなギタープレイ、それはそれは今までで見たことないくらい狂いまくってる。もう我慢できない観客が声を荒げ始める。良いじゃないか。これが見たかったんだもんな。

『EIGHT BEATER』『delayed brain』と続く。
ライブ後に、『delayed brain』でベースソロを急にふられたことをTwitterでナカケンは呟いていた。
非常に恐れ多い。
ちなみにその間、向井はと言うと、リフを弾き続ける田渕ひさ子に近寄り、カメラマンに向かって写真を撮れと言わんばかりのピースポーズ。良い意味でやりたい放題だ。これが向井秀徳なのだ。

「次の曲は、みんなで踊ろうちびっ子サンバ、という曲を演ります。」

そんな向井の曲紹介と真逆とも言えるほどの、ナカケンの高速ダウンピッキングから始まる『CIBICCOさん』。もうMCで次の曲は『CIBICCOさん』とわかってしまったので、ナカケンのベースで思わず笑ってしまう。一緒に見てたやつも同じだった。

どの曲間かは忘れてしまったが、向井がこう言う。

「もう少し、ゆっくり演ろうや。
 もう少し、ゆっくり演ろう。」

皆、同じ気持ちだと思うし、終わらせたくもない。それもきっと同じであろう。

夕暮れ時。演奏も後半に差し掛かる。
時より左右のスクリーンに映されるステージから見える夕陽が、この上なく綺麗であった。

次第に、前方で見ていた観客を指差して、

「君の17歳だった時のこと、私、知っています。
あなたに、君に、歌います。『透明少女』。」

ステージのバックライトが一斉にメンバーを照らし、浮かび上がるシルエットが、その存在感をより一層増していく。

田渕ひさ子があのイントロを弾き始める。
向井はまだ弾かない。それどころか、缶ビールに手を伸ばす。
ビールを飲む。
飲み切ったその缶をステージ下手に思いきり投げ飛ばす。
満を持して、向井も弾き始める。
アヒト・イナザワ(Dr)のカウントで曲が始まる。

この瞬間がもう脳内から一生離れない。
曲の間は良く覚えていない。


そして曲が終わり、向井が話し出す。

「ここで、皆さんにお話があります。」

ホームページ上にも記載されているが、ここにも載せておく。

金銭の面に関しては、この日口にすることはなかった。ただ、横浜のぴあアリーナでライブをやると言った後、向井はこう言う。

「これ聞いて欲しい、聞いて欲しい。
諸行は無常である。
よく聞け、諸行は無常であるわあ。」

「福岡市博多区からやって参りました
ナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」

『OMOIDE IN MY HEAD』が始まる。
解散発表のあと、そして、なんとなく、ライブが終盤に差し掛かってるような気もし、この日の『OMOIDE IN MY HEAD』はどこか切なく聴こえる。

フジロックでは、そこから間髪いれず、始まった次の曲。この日は、2002年の解散ライブに近い、いったん向井がチューニングをし、弾き始めた最初。『I don't know』。気迫に満ちている。
どこが良いとかではなく、とにかく気迫に満ちていて、この時、自分は涙が止まらなかった。

まだ終わらない。

「あなた、昨日の夜、何聴いてました?
その曲を演ります。」

そう言って演奏された『IGGY POP FAN CLUB』では、向井がとにかく楽しそうに演奏している、少なくとも自分にはそう見えた。それが何よりも印象的だった。

最後には、Ramonesのカバーである『I wanna be your boyfriend』を演った。これは直前で向井がメンバーに耳打ちしていたのもあって、本来は予定にはなかったのかもしれない(あくまでも憶測)。

でも、この『IGGY POP FAN CLUB』から『I wanna be your boyfriend』の流れがまた最高、いや、至高であった。

最後、向井がギターを高く上げ、何度も何度も礼をしていた姿を俺は忘れられない。

終わって興奮冷めやらぬまま、ナンバーガールの物販に行ったら、行列ができていた。

解散することを「諸行は無常である」で説得させるのは、実に、向井秀徳らしい。

この1時間の出来事はきっと、ずっと、いや、限りなくOMOIDE IN MY HEAD。



------------------------------
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in Ezo
SUN STAGE 18:10〜
NUMBER GIRL

リハ1. KIMOCHI(ワンフレーズ)
リハ2. DESTRUCTION BABY
1 タッチ
2 ZEGEN VS UNDERCOVER
3 TATOOあり
4 EIGHT BEATER
5 delayed brain
6 CIBICCOさん
7 透明少女
8 OMOIDE IN MY HEAD
9 I don't know
10 IGGY POP FAN CLUB
11 I wanna be your boyfriend【Ramones】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?