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通訳ガイドのススメ―英語が「話せる」ようになりたい人へ

第4回:リクエストは「Japanese Cuisine!」

新城宏治(株式会社エンガワ 代表取締役)

あれが食べたい、これが食べたい

日本に来る楽しみは、春なら桜、秋なら紅葉といった四季折々の美しい景色、歴史や伝統を感じさせる寺社やお城、秋葉原などに象徴されるポップカルチャーなどいろいろありますが、その大きな楽しみの一つに「日本食」があります。今や日本食レストランは世界中にありますが、やはり本場で本物の日本食を食べてみたいというリクエストは多いです。

私はガイドをする前に、食べ物のリクエストを必ず聞くようにしています。「メールによれば、今度のゲストはストリートフードを楽しみたい、それから日本で魚が食べたい……と。それなら、午前中は浅草だから浅草寺前の仲見世通りで和スイーツを楽しんでもらおう。人形焼き、抹茶アイスクリーム、きなこ餅、いちご大福、揚げ饅頭、メロンパン……、ゲストは何が好きだろうか? 昼は築地に移動してお寿司か海鮮丼かな……」などと思いを巡らしながら、ツアーの計画を立てるのは楽しいものです。もちろん、ゲストだけに食べてもらうのは申し訳ないので、ガイドも一緒に楽しみます(笑)。

マグロは部位によって味も名称も異なりますが、結局は全部おいしい!

ランチのリクエストで多いものは、お寿司、和牛、ラーメンなどでしょうか。お寿司は回転寿司のお店に行くことが多いのですが、おつまみやお菓子など、お寿司だけでなくいろいろなものがベルトコンベアに載って回ってくるので、お子さんは大喜びです。和牛はWAGYUという名前が欧米各地でかなり浸透していて、サシの入った独特の柔らかさが受けているようです。牛カツも人気です。ラーメンは言わずもがな、今や手軽な日本食の代名詞と言ってもいいでしょう。

私はラーメンが嫌いな外国人ゲストには未だかつて会ったことがありません

中にはちょっと難しいリクエストをしてくるゲストもいます。以前、真夏に「おでんが食べたい!」と言われた時には、「さて、この暑い時にランチでおでんを出してくれるのはどこだろう?」と、さんざん悩みました。銀座通りをゲストと歩いていた時に、いきなり「鯛焼きが食べたい!」と言われ、ティファニーやらカルティエなどブランドショップが立ち並ぶ中で必死に鯛焼き屋さんを探しましたが、鯛焼き屋さんを見つけることはできませんでした。

お酒も説明しがいのあるテーマです
発酵の話、お神酒の話、燗酒の話などネタは尽きません

食べられない理由はさまざま

その一方で、食べられないものや好き嫌いがある人も多いです。

一番大きいのは宗教上の理由です。ムスリムの方を案内する際には、そのあたりにかなり気を遣います。料理の中にアルコールが入っていないか、豚肉のエキスが入っていないかなどチェックします。日本料理の中には、料理酒や味醂など、わずかなアルコールが入ってしまいがちです。ヒンドゥー教やユダヤ教も食事ついては厳しいルールがあります。

また、アレルギーなどで体質的に食べられないという人もいます。グルテン(小麦)、乳製品、卵がダメという方は結構います。ベジタリアンやビーガンの場合も多いです。そのゲストが食べるものをどこまで厳しくコントロールしているのか、していないかはわからないので、その都度、確認するようにしています。

あくまで個人的なイメージですが、一般的に外国人ゲストは日本人より食べられるものと食べられないものがはっきりしているという印象を受けます。また、食べ物の嗜好は全般的に個人差が大きいとも言えます。中には一般的に外国人が苦手と言われる日本食(納豆、生たまご、漬物など)でも、全く気にせず食べるゲストもいます。そうかと思うと物凄い偏食の方もいます。以前、ある家族連れとランチを食べるために日本食レストランに入ったのですが、そこでお子さんが頼んだのが「白いご飯」だけでした。両親に理由を聞くと、その子は母国でも、おかずなしの白いご飯が大好きで、それしか食べないらしいのです。これはかなり極端な例だと思いますが。

天ぷらは外国人にとって食べやすい日本食の一つだと思います
それでいて奥が深いです

コンビニで手軽に日本食を楽しもう!

日本のコンビニはどこにでもある、24時間いつでも開いている、そして店内には欲しいものが何でもあるということで、外国人にも人気です。全ての店舗ではありませんが、外国人がよく利用するような地域(浅草、銀座、秋葉原、新宿など)には外貨両替機が置いてある店舗もあり、ドルやユーロなどの外貨を日本円に交換もできます。

実はコンビニは、日本食を手軽に楽しむ場所としても人気スポットです。サンドイッチ、おにぎり、コーヒーやスイーツなど、手軽に何でも買えます。しかも、価格も品質も、どの店舗で購入しても質は一定です。

「ガイドブックに載っているような日本食レストランもいいけど、コンビニで何気なく買って食べた日本の卵サンドイッチが一番おいしかった」「日本食ならちょっとお腹が空いた時に食べるツナマヨのおにぎりが一番だね」――以前にゲストから聞いた声です。街角のコンビニにも意外とおいしいものがある、そんなところも日本や日本食の魅力なのかもしれません。

ぜひ外国人ゲストには、日本滞在中にいろいろな日本食を体験してもらい、お腹いっぱい満足して帰国してほしいと思っています。


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4回に渡ってお送りした「通訳ガイドのススメ―英語が『話せる』ようになりたい人へ」は今回をもって終了します。
この連載を読んで、通訳ガイドをやってみたいと思った人は、全国通訳案内士試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。2023年度の出願申請は2023年7月10日(月)まで、筆記試験は2023年8月20日(日)です。

この記事を書いた人:新城宏治
1965年生まれ、千葉大学文学部史学科卒業。株式会社アルクで30年間、語学書の編集に携わる。2020年に独立して株式会社エンガワ創設。現在、株式会社エンガワ代表取締役のほか、大学の非常勤講師、NPO活動などにも関わる。

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