星屋心一

美術予備校で美術でなく「学科」を教えていました。「共通テスト倫理」「星屋の小論文」を某…

星屋心一

美術予備校で美術でなく「学科」を教えていました。「共通テスト倫理」「星屋の小論文」を某まとめから移すために参加。noteは人も記事も素敵で驚いています。

マガジン

  • 星屋の小論文(多摩美2023~)

    予備校で小論文を教えています。学生の小論文が圧倒的ですがこれらは自作の小論文。解答をはっきり言い切ることに繰り返しトライしています。小論文は解答の言い切りに力を注ぐのが一番です。多摩美術大学の最近の課題が先頭です。

  • 本日の本

    読んだ小説の感想文をこちらにあげます。1作1作楽しく読みました! もし感想を書かせたい本があれば紹介してください。遅筆で感想はなかなかあげられないかもしれませんが、少なくとも読みます!

  • 宮本浩次氏エレファントカシマシ感想

    大好きな宮本浩次氏とエレファントカシマシの感想文です。1つ1つものすごく力んで書いていますが(今後も書いていきますが)、サクサク読める短文でもあります。よかったらぜひ読んでみてください<(_ _)>

  • 《焼肉ライク》で半年間で体重が15kgへった話

    半年間焼肉ライクを食べて15kg痩せた当時のことを書いた文章です。

  • アーティストの誕生日(誕生月ごと)

    画家の誕生日をまとめました。①パブリック・ドメインのある作家について、②366日すべてに素晴らしいアーティストがいることを示す、という目的です。お気に入りの画家が見つかったらすごくうれしいです。いつの時代にもどこの国でもすばらしいアートがある。それは現代も同じでしょう。勤務校のインスタやツイッターではその日の誕生日作家をとりあげています。もし興味がありましたら覗いてみてください。 https://www.instagram.com/ochabiwwwgakuinwww/ https://twitter.com/ochabi_gakuin

最近の記事

詩集『死者と月』(関根全宏、七月堂2023年)の感想

 この詩集は日本の口語自由詩の歴史の豊かなバラエティを感じさせる傑作だ。そして、そのバラエティの全部を輝かせる「とどめの一撃」的な要素をもっていて、私はそれについて短文を綴りたい。  死と月とを私たちはみつめる。この触れられない眼前のものをあるときの私たちはみつめる。詩集『死者と月』の関根全宏はそれらを私たちを眼差す存在と捉えかえしている。    あんなにも遠いのに    死はいかようにも    私を見つめるのだった              (「墓碑銘」)  これは破

    • 星屋の小論文(多摩美2023)

      2023年小論文課題「(グー、チョキ、パーの形に見える手の写真ABCが直後に示されて)次の三つのうち、もっとも強いのはどれか。あなたなりの「強い」の意味を述べた上で、あなたの考えを四百字程度の文章で書きなさい。」その1です。画像は略。どれかひとつを強いと言い切ればいい課題ですが、「あなたなりの『強い』」の課題を最初の段落からある程度示すように気を配りました。ハンドサインの純粋さとして強いという話です。 2023年小論文課題「(グー、チョキ、パーの形に見える手の写真ABCが直

      • 小説「だんだん坂」

        「幽霊って信じる?」  そうカナコちゃんから訊かれて私はとまどってしまった。その口ぶりが奇妙だったからだ。  登校班のいちばん年少のカナコちゃん。いつもおとなしくて班長(わたしだ)の言うことにも素直にきいてくれる。それなのに、下校途中でたまたま一緒になったこのときに突然同級生みたいに話しかけてきたのである。  しかも、幽霊なんぞの話で。  じつはわたしはこのときカナコちゃんがちょっと怖いと思った。  だから、私はことさら大人びて聞こえるような返答をしたことを覚えている。 「信

        • 小説「耳男」

          耳男あるいは聞き男の話を知っているだろうか? きっと有名な話なのだが、あなたは違う呼び名で知っていてもおかしくはない。それはこんな話である。 死者が出る家に耳男があらわれる。男は家の戸口に耳をあててじいっとなかをうかがう。するとまもなく家人の誰かが亡くなってしまう。 ご存知の話だったろうか。昔どこかで聞いたことがあるという人もいるかもしれない。 これは私にとってはなつかしい話だ。成人するまでものすごいど田舎で育ったのだが、近所の大人たちの会話で耳男はたびたび登場してい

        詩集『死者と月』(関根全宏、七月堂2023年)の感想

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        • 星屋の小論文(多摩美2023~)
          22本
        • 本日の本
          90本
        • 宮本浩次氏エレファントカシマシ感想
          7本
        • 《焼肉ライク》で半年間で体重が15kgへった話
          3本
        • アーティストの誕生日(誕生月ごと)
          12本
        • 共通テスト倫理のための人物のまとめ
          66本

        記事

          星屋の小論文(多摩美2022)

          (この年の多摩美の小論文は「え、なに、むずかしそう」と感じる出題かもしれません。しかし、こんなばあいでも「自分の解答」をはっきり決めることが大切です。以下では、2つの解答を決めて書いていますが、その解答を不足をおぎなったり、長所を伸ばしたりすることで記述の活路をひらくことができるはずです。拙作のそこをよかったら参考にしてください<(_ _)>) 2022年小論文課題「『小さいが優しいもの』について具体例を挙げながら、四〇〇字程度で書きなさい。」その1です。自分にとって課題に

          星屋の小論文(多摩美2022)

          住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫)の「最後の一字」の感想

           先日読んだ本作の最後の一字の感想を。未読のかたは何のことかわからない感じの記述になると思いますが、インパクト大のラスト一字の簡単でまとまった解釈が意外と見当たらないのでここで書いてみます。  まず、本作の最後の一字は「以下略」のニュアンスがあるでしょう。素敵でしあわせな語らいの時間が続いていく。唐突感のある記号の使用でも、そんなハッピームードははっきりと感じ取れるでしょう。  もちろん、「括弧が閉じない」ということが主要な意味だと思います。本作の主人公たち5人はそれぞれ

          住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫)の「最後の一字」の感想

          ナボコフ『青白い炎』(富士川義之訳、岩波文庫)の感想

           ロシア出身のアメリカの作家ウラジミール・ナボコフの最高傑作といわれる『青白い炎』。本作は奇抜な構成の小説です。注釈者の前書き、詩人の遺作、注釈、索引の四つに分かれて、注釈者の狂気を感じる膨大なコメント群が詩本編をとりかこんでいる構成を持ちます。 わたしは機会あるごとに彼の怠惰癖を克服して書き出すように勧めてやまなかった。わたしの小型日記帳には、「英雄対韻句(ヒロイック・カブレット)を用いるように彼に示唆した」とか、「逃避行をまた話してほしい」とか、「わたしが吹き込んだ録音

          ナボコフ『青白い炎』(富士川義之訳、岩波文庫)の感想

          プルースト『失われた時を求めて』を読むのに7年半かかった話

           一昨日プルーストの長編『失われた時を求めて』を読了しました。読みはじめたのが2014年4月だったことをおぼえています。7年半。なんでこんなに時間がかかったのかというと、「こいつは絶対おもしろい作品だよ!!」という手ごたえがものすごくて、本当にちょっとずつ読みつづけたからです。  こういうことは以前にもありました。私はガルシア・マルケスの小説『百年の孤独』をすごくおもしろくて2日で読了しましたが、『族長の秋』は2ヵ月かかりました。『百年~』のおもしろさが読む手ごたえを倍加さ

          プルースト『失われた時を求めて』を読むのに7年半かかった話

          小説「霊の正体」(前編)

           私の知る数少ない経験から判断すると、霊と遭遇するときには霊の正体とも遭遇する気がする。というよりむしろ霊の正体が強烈な印象をあたえる。これが霊なんだこれが霊なんだという驚きがサイレンのように鳴り響いて、自分がおかしくなりそうなほどにテンションになっている。ぎゃくに、こうした突拍子のないテンションをともなわない霊体験を私は信じない。その眼でみると、世の中にはまことしやかな嘘がおおいと思う。  という文章が私の眼前にとつじょ出現した。日付は2021年の8月14日のこと。このと

          小説「霊の正体」(前編)

          宮本浩次氏エレファントカシマシ感想3曲

           今日もまた聴きたい3曲はエレファントカシマシと宮本浩次氏のもの。 我が祈り/『MASTERPIECE』(2012年)所収 RAINBOW/『RAINBOW』(2015年)所収 Do you remember?/『宮本、独歩。』(2020年)所収  これらは宮本浩次氏の「デー」を聴く名曲たちです。「デー」とはなにか。宮本浩次氏のシャウトの一種で「デヤ!」みたいな語勢のもの。この「デー」が発される曲はぜったいにフルエナジーで、パワーチャージしたいときに聴きたいうってつけの曲

          宮本浩次氏エレファントカシマシ感想3曲

          小説「月へ帰る」

           月へ帰る。そう聞いたら父さんと母さんを失望させるかもしれないな。それとも呆れさせるかもしれない。  最初に月基地への就職を報告したときの自分のことを思い出す。あのときは2人に月基地のライフラインを守る大切な使命だと胸をはって報告したっけ。でも実際はひどいものだった。ひと吸いの酸素が貧乏人から金をむしりとる商品となっていて、金持ちだけがふんぞり帰っている。そんな場所だった。  おれはその酸素ダクトの整備の職を得て、この構造を確かなものにするために貢献していた。その意味だって十

          小説「月へ帰る」

          小説「炎天」

           休みがあけるまで前髪を伸ばしつづけていたらどこまで伸びるのだろう。いまだって舌をつき出したら髪に触れられそうだ。  もし、休みがいつまでもあけなければどうだろうか。ぼくの前髪は顔をおおうほど伸びて左右にわけなければ生活できないだろう。  それはいやだな、とおもう。  もしももしも、最近はえてきた別の体毛もすごく伸びてきたらどうすればいいだろう。剃っても剃ってもしつこく生えつづける毛。  毛のことを考えながらぼくはゆらりと外出する。  外はアスファルトは高温でユゲがたっており

          小説「炎天」

          宮本浩次氏エレファントカシマシ感想Ⅵ

           夏にかならず聴く曲はエレファントカシマシの「歴史前夜」だ。私はこれを歌う宮本浩次氏にひたすらに夏を感じる。また、ステージ自体が熱をもって生きる夏のたかまりのように感じていつも胸がいっぱいになる。  「歴史前夜」とは、エレファントカシマシがただ1回だけ披露した楽曲である。2003年8月3日ひたち海浜公園のROCK IN JAPAN FESTIVAL だ。名作『扉』のレコーディング中の彼らは収録曲「歴史」を仮歌のままうたう。  スキャットやニセ英語でうたわれるロックを私たち

          宮本浩次氏エレファントカシマシ感想Ⅵ

          人間とは何かを考えてみた文章

           太宰治の小説『人間失格』で、題の言葉が読めるのは終わりの方だ。友人(と肉親)の画策で実社会から追放された瞬間につぶやかれる。主人公はずっと痛々しい自意識を抱えているが、この瞬間まで、自分が人間である資格を一度も手放したことはなかった。  他人がつながりを断つ瞬間に失われるもの。この人間は、「つながりを持つ資格」だと言いかえることができる。そして、それは決して『人間失格』だけの話ではない。  私たちは「同じ人間だ」といって他人に近づく。このとき「人間」は、他人とつながるた

          人間とは何かを考えてみた文章

          心が世界を更新することのポテンシャルについての私見

           むかし友人の演劇の感想をネットに書いたときに、「だれかを救うことが自分を救うことになるのはなぜか」というテーマを考えたことがある。これはけっして特殊な現象ではないと思う。たとえば「だれかを応援することで、自分自身が応援されていた」という話を聞いたこともあるし、CMのコピーでもみたことがある。  この現象に人間の根幹にある大切なものの駆動を感じた。そこで私はこれを「世界の更新」というキーワードで描いてみた。わたしがだれかを応援することは「わたしが応援されていない現実」をこえ

          心が世界を更新することのポテンシャルについての私見

          《焼肉ライク》で「ほぼ一日一食生活」をつづけていたら半年間で体重が15kgへった話(ごはん篇)

          (はじめに/私は週6日焼肉ライクで焼肉を食べつづけていたことがある。とくに積極的な目標があったわけでも、ふかい理由があったわけでもなくきっかり半年間その生活をつづけた。開始して1月で7キロほど体重が減り、以後はなだらかに月2キロほど減っていき「-15kg」という状態になる。)  ここ最近すごくあついですが、みなさまはきちんと食欲ありますか? ぜひともご自愛して、夏バテの夏をのりきってください。そんな気持ちで今回はごはんの話を書きます。  ごはん、白飯がめちゃくちゃ大好きで

          《焼肉ライク》で「ほぼ一日一食生活」をつづけていたら半年間で体重が15kgへった話(ごはん篇)