13人目

26歳　小渕倫太郎

はじめまして、こんにちは。
ITの営業をやっております、小渕と申します。この仕事は5年目になる…のでしょうか。大学を卒業して以来、ずっとこの仕事をやらさせてもらっています。営業は辛いとか言いますけど、最近の働き方改革のおかげでだんだんマシになってきてる感じがします。ノルマはまだありますけど、有給は取れるし、残業代も出るようになりました。IT業界は全体的に調子がいいという、その恩恵もあるでしょうね。私はこの仕事のことしかわからないですが、自分にはこの仕事が向いているような気がします。最初の頃は、たまたま内定貰った企業に行っただけで営業を自らやりたいわけではなかったですけど、いま思うと天命というか、運命だったのかなと思います。ノルマも達成できるようになったし、ITのこともわかってきて、成長著しい市場に自分がわずかながら貢献できていると思うと率直に嬉しいです。ここだけの話、最初はITなんて興味なかったんです。でもとりあえず内定が欲しくて、いろんな業種受けて、本当に偶然いまの会社と縁があっただけなんです。私は文系だし、ITのことなんて全くわからなかったですが、いまの会社よりも良い条件のところからは内定がもらえなくて、それで消去法で就職を決めたんです。でも、続ける自信はありました。いままでの人生を踏まえて、自分は興味がないことにもある程度打ち込めることがわかっていましたから。追って説明いたします。大学は経済学部でした。でも興味はなくて、それも受かったからという理由で入学しました。結果GPAは学年でトップ3。勉強はできるんです。興味はなくても、成績が出るから。成績のためなら頑張れるんです。興味って成績にならないじゃないでしょう。この映画にこれくらいの興味や関心、深い造詣があるから「はい85点！」とはならない。見えない指標には興味が持てないんです。ただ私も映画は好き、音楽も好き、ドラマもスポーツだって好きです。でも私はそれらを深く掘るという興味や関心が持てなかった。興味も関心がないから熱くなったこともない。なにか全部を犠牲にして何かを成し遂げたことがないんです。強いて熱中していたことを上げるとすれば、成績を上げることでしょうね。高校も、中学も、塾でも、全部私は成績の中で生きてたんです。成績を上げて、お母さんが喜んで、それを見て私が喜ぶ。そんな人生だったんです。だからいまの仕事も向いてるって思うんです。ノルマがあって、達成して、また新たなノルマが生まれる。成績と一緒。勉強と一緒なんです。だから私は続けられるし、興味がない分野も知れる。勉強なんです。すべては成績のための。でも、逆に言えば、人生のすべては数字とも言えて、だから私の中身は数字を取り払ったら何も残らないのかもしれません。「あなたのオールタイムベストの映画は？」と聞かれても、君の名は。かサマーウォーズですし、「人生を変えてくれた音楽は？」という質問には答えるのに30分くらい時間がかかると思います。好きなドラマは逃げ恥で、舞台は見たことないし、スポーツだってオリンピックを少し見るくらい。野球中継の延長に対して、「早く終われ！」と思いつつも、絶対に見逃さない番組があるわけでもない。趣味は何でしょうね。私にもわかりません。就活のときには、読書とか、ジョギングとか書いてた記憶がうっすら。当たり前ですが、こんなことを言うとバカにされます。「軽薄だね」って。「何が楽しくて生きてるの？」って。たしかに軽薄なんでしょう。私だって、少し前までは囚われていました。この事実に。この人生に。熱中できることがほしい。何かに熱中したいとすごく思ってました。けれど、気づいたんです。いまの自分の仕事、つまり営業の成績を上げることに熱中していると。私はいくぶん成績を上げることについては熟練者だと思ってます。だから変かもしれませんが、「成績を上げる」ことに対しての大ファンなんです。興味や関心はすべて、成績ではなく、「成績を上げる」という見えない指標に対して注がれていたんです。だから趣味は成績を上げることになるんでしょうね。成績は上がるんです。上がるのが楽しい。上げるために努力して、上がったら嬉しい。これはもはや趣味でありスポーツでもある。紛れもない、自分だけの、オリジナルの生き方なんです。この生き方は無敵かもしれないとすら思います。なぜなら、すべてに文化に興味や関心がないからすべてに平等で、０からちゃんと知識を蓄えられて、仕事ためになら活かせて、仕事の成績が上がることが楽しみなんですから。だから最近では、この生き方を否定する人は多分私のことを無意識に怖がってるんだな、と思うようになりました。もしコイツが自分のテリトリーに入ってきたら、一つ残らず吸収されて成績を挙げられてしまう！って。でも大丈夫です。私は、そんなあなたのことも踏まえて勉強できますから。まあ、仕事ならですけどね。普段なら、あなたには興味すら持たないでしょう。なんか私、仕事人ぽいでしょう？そう。勉強ができるって、無敵なんですよ。あぁ、明日からがまた楽しみです。