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途中までずっと一途

1日のはじまりは夜で、終わりも夜だ。
この世界の中で、朝からはじまる国はあるのだろうか。
「世界がもし朝からはじまっていたら、あなたも私ももっと健やかだったと思わない?」
君はそう言うと、シャンパンをひと口飲んで、グラスの周りを指で艶やかに拭く。

「でも、だとしたらこうやってロマンチックな夜もないと思わない?」
僕は白ワインを飲み干して、テーブルに戻す。クロスで口を拭くと、さっき食べたスコーンがついて、セリフに似合わずかっこつかない自分を自嘲する。

「このあとどうする?もう1日が終わるけれど」
憎たらしく、そしてあざとく笑みを浮かべながら君は言う。
「どうしようか」
答えは決まっているのに、僕らはわざとらしくピエロになる。
「もう1杯だけ飲んで帰ろうか」
僕はそう提案し、時計を見る。
もう1杯飲んでいる間に終電はなくなる。
そして僕らはまたあのホテルに向かうのだ。

駒を進めるように、僕らはあくまでもお互い予定調和ではないようなフリをしながら最後の1杯を飲み干す。

3週間に一度ぐらいのペースでしか君には会えないけど、
会うたびに「好き」という感情が戻ってくる。

「新しい1日のはじまりに、あなたと一緒なのはどうなのかしら」

「何も思わなくていいさ、ただ不自然じゃなければ」

僕らは手をつなぐわけでも、腕を組むわけでもなく
それぞれで歩くように同じホテルに向かう。そして朝になれば、互いの生活に戻るのだ。

「世界がもし朝からはじまっていたら、こんなことにはならなかったのかもね」

そういいつつ、フロントで僕らは大笑いする。
罪悪感すらも、このひとときは幸福に変えてしまうようだ。
世界が夜からはじまってよかった。夜がすべてを隠してくれるから。

僕=神木隆之介 君=上白石萌音


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