Q.E.D.

 思い出せることはいくつもある。感情のままに書き連ねることだってできる。けど、僕はしない。なぜなら、いわゆるそういう本能的な行動が君にとっては獣に見えるってことを知っているから。君はもっと論理的に──例えば数学の証明問題に取り組むみたいに──君の価値を言葉にして欲しいと思っているはずだ。たとえ君の頭が良くなくても、君はそうして欲しいと心底では思っている。それは僕も同じで、だってそうじゃなかったら、人間の本能が、獣の部分が、すべて正しくて何にも勝てないって思ってしまうだろ?
 本能を覆い尽くすくらいの理性で、君のことを“説明する”ことができれば、それは完璧な愛だと思わないか? そばにいても遠くに感じることがあるように、それができるなら遠くにいても君は僕を近くに感じることができる。
 でも残念ながら、ここまではわかっていても、まだ僕は君を説明することができない。証明の問題文は手元にあるのに、どこから書き出せばいいかわからないでいる。だからこうして、言い訳みたいにこんな駄文を書いているわけだ。でもひとつ、この問題にはそれこそ問題点がある。それは、採点者が君であること。つまり、答えの裁量も君に委ねられている。
 ここまで言えばわかるね? この問題は証明された。 Q.E.D

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