12歳 月野悠太

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12歳 月野悠太

はじめまして、こんにちは。
小学6年生の月野です。この前、学活の時間に、20歳の自分にお手紙を書くというものがありました。先生は、将来の夢が叶っているかとか、自分がしたいことができているかとか聞いたら?って言います。でも、僕には未来が想像できません。自分がこうなっているとか、こうなっててほしいみたいな期待も特にありません。将来の夢なんてものはなく、あるとすれば周りよりもちょっと裕福で幸せで、失敗と後悔の少ない生活です。でもその夢は誰もが持つ夢なんです。自分は何も特別ではありません。社会科見学でテレビ局に行った時も、自分がテレビに出る側になるなんて想像もできず、僕が注目していたのはカメラアシスタントさんとか、大荷物のADさんとかでした。最初から僕が主役で特別だなんて思いもしていません。僕が最後に特別だったのは、およそ5年前。僕に弟ができるまででした。それまでは家族で唯一の子どもだったこともあり、それはもうパパとママの愛を一身に受け止めていました。僕は王様で、泣けば僕のためになんでもやってくれたそうです。でも、弟ができてから、僕はまるで、弟の人生のためのモルモットになりました。僕がなんでも最初にやり、僕が失敗したことは弟にはやらせず、逆に僕がうまくいけば弟にもそれをやらせました。スイミング、習字、サッカー、ピアノ。僕は、まるでママが弟を妊娠しているときのように栄養を吸収され、経験や技術を吸収されました。弟は僕に対して世界で最も強い負けず嫌いを放ち、僕はそれを余裕な顔でかわすのが精一杯。それでも、弟が何かを失敗をすればママは僕を怒ります。お兄ちゃんがケイタを守るんだよ!ケイタはまだお兄ちゃんよりも子どもなんだからって。それを見て、弟が笑うのです。まるで悪魔でした。弟が悪魔に見えました。お兄ちゃんは弟のものなのです。でも、弟にも悪気がないことくらいわかります。無邪気で、かわいい。僕がきっとダメなんです。もっとしっかりしないといけないんです。だから僕は、弟のためにモルモット史上最高の人生を歩みたいんです。モルモットは決して人生の主役にはなれないけれど、真面目に、誰かたった一人の期待に応えようと思うんです。夢とか理想ではなく、弟がその分夢を見られるように、最高の土台になろうと思うんです。ちゃんと働いて、結婚して、子供産んで。弟はやがて僕のことをつまらない人間だとか、負け犬とか、兄貴よりも優れているとか思うようになるかもしれない。それでも、僕は、弟のために、これが一般的なんだと幸福のハードルを定めようと思うんです。普通を、目に見えるように。これをお前は超えてくれと言葉にしなくても、そう思わせられるように。そう決めて、20歳の自分に向けた手紙を書いています。そうなっていますか?

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