見出し画像

耳に心地よい通訳を目指して

初仕事は毎年緊張しますが、今年も無事にスタートを切りました。本番から逆算して、何日前にトレーニングを始めて、何日前に準備をして…という具合に、始動の計画を立てます。今年の初仕事は、クライアントのオフィスに自分のデバイスを数台持ち込んで、ネットワークに繋ぎ、Zoom通訳機能を使って同時通訳、セカンドデバイスで多言語通訳を聞きながらのリレー通訳が入るというマルチタスクもの。切り換えが複雑なため、お正月ボケの頭も一瞬でたたき起こされました。通訳技術の準備だけでなく、デバイスを操る心の準備も必要な時代です。

♢ ♢ ♢

近年リモート通訳が増えたことで、通訳者として『自分が発する音全般』により気を使うようになりました。対面の場では、人は聴覚以外の感覚も使ってコミュニケーションするため、耳から入る音以外の情報へも注意が分散されるものだと思います。通訳者は、通訳音声以外の部分で付加価値を生み出すことができることもあります。しかしリモート会議では、聴いている人の注意はより耳に集中するので、通訳も音声のみが勝負。クセのある言い回しやアクセントやノイズなど、対面の場ではさほど気にならない音も、気になってしまうことがあります。

目指すのは『聴こえるべき通訳音声は心地よく、聞こえるべきでない音は排除する』こと。

まずはマイクや雑音のない場所で良い音声環境を整えた上で、自分が不要な音を出さないように気をつける。ペン先の音、呼吸音、訳を考えている途中に発してしまう「えー」「Ah」や、間を繋ぐために入れてしまいがちな「そして」といった口癖など、不要な音をできるだけ減らすように努めます。

そんなノイズのない音声環境に通訳を美しく乗せたい。きっと一生満点はないけれど、通訳を聴く人がイメージを描けるような言葉選びや文章構成、音声表現を目指したい。そのための通訳技術であり、日々のトレーニングだと思います。そんな思いもあり、一昨年から音声表現のトレーニングも取り入れ、プロのアナウンサーに指導していただく機会を作っているのですが、『声で伝えるプロ』のアドバイスは本当に勉強になります。バイリンガルアナウンスのレッスンは、英語の発音やアクセントを矯正する機会にもなります。これは英語のネイティブスピーカーではない私にとっては、とても大事な訓練。自分の通訳練習を録音することも、退屈な訳になっていないか、不要な言葉を繰り返していないかなどを確認する上でとても役立ちます。

基盤あっての本番。すっと自然に耳に入る通訳、聴く人に負担のない通訳を目指して、今年も元気にがんばりたいと思います!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?