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生命

「ふぅ・・・・・・。今日は疲れたし、シコって寝るかあ・・・・・・」

 俺の名はまつ。普通の大学生だ。

 今日はTwitterとBlitzで疲れてしまったので、これからシコって寝るところである。

「俺も、なにか特別な人間になりたかったなあ。能力者とか」

 やっぱり、能力者というのは男子の憧れだ。なれるとしたら、氷属性とかがいいなあ。火や風に比べたらマイナーだけど、ちゃんと強い冷静なキャラとか憧れちゃうなあ。

「まあ、俺には無理か・・・・・・」

 とりあえず、シコろう。

 俺はティッシュを取り出し、エロサイトを開き、ズボンを下ろした。

 ――――。



 私の名はごりーしゃ。《ブリザード》のごりーしゃと呼ばれている。

 今日は決戦の時。夕暮れ時、近未来的な建物に囲まれた大通りで私たちは対峙した。

「《ふとんが・ふっとんだ》――!」

 パキパキパキパキパキパキィイッッ!!!

 先手をとったのは私だ。私の放った二節詠唱・下級氷魔法はアスファルトで舗装された地面をはしり、敵に襲いかかった。

 しかし、目の前の男はニヤリと微笑む。

「《ブリザード》。お前はたしかに強い。しかし、学園三位のお前では、二位の俺には勝てないぞ!!」

 その男の名は《二浪》のderoga。五万人の能力者が集まる『学園都市どじーた』において二位に君臨する能力者だ。二浪して入学しているため、かなりの魔力供給量を誇ると言われている。

 derogaは片手を地面につくと、迫る氷を前に冷静に詠唱を開始した。

「《センター中・妊娠適齢期に・囲まれて・本能を・抑えるのが・キツすぎた》」

 なに!!? 六節詠唱・上級特殊魔法だと!?

「なめるなよ? 俺はこの学園で、一位になる男だ!!!」

 ズオッッ!!!!!!!!!!!!

 でろがの周りから紅蓮の炎が爆発的に湧き出した。derogaの固有魔法《エロースの業火》である。炎は俺の氷を溶かし尽くし、逆に私に迫ってくる。

(くそ・・・・・・!! これは防ぎきれない・・・・・・!!)

 まさか、ここまでとは・・・・・・!! かなり浪人時代に貯金をしていたのだろう。しかも、氷と炎では相性も悪い。

 もうダメだと思った、その時。


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!


 私の目の前に突如、一人の男が現れた。

「よお、ごりーしゃ。手こずってんじゃねえか」

 《エロースの業火》を片手で受け止めたその男の名は。

「《男好き》のたいにぼ・・・・・・・・・・・・!!」

 学園都市一位。《男好き》のたいにぼ。

「どうして学園都市一位のお前が《ブリザード》に手を貸す・・・・・・!?」

 突然の《男好き》の登場に、動揺を隠せないderoga。

「こいつとは、同じクランに入ってんだ。ここで助けなきゃ仲間じゃないだろ」

 頼もしいたいにぼの背中。頼もしいたいにぼの言葉。男との情にだけは厚い《男好き》の言葉に、私は思わず叫んだ。

「行きなさい!! たいにぼくん!! 誰かのためじゃない!! あなた自身の願いのために!!!!」

「ああ、ごりーしゃ!! お前の穴は俺の穴! 俺の穴はお前の穴! ここで死なれちゃ、俺が困るからな!!!」

 たいにぼは、猛烈なスピードでderogaに向かって駆けだした。

「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 再び地面に片手をつくderoga。

「《玉袋・王水に・浸したら・透け透けに・なったわ》――!」

 時間がないからか、少し短めの五節詠唱。しかし、それでも猛烈な紅蓮の嵐はたいにぼにすさまじい勢いで襲いかかる。

「甘いぜ!! 《男だけの世界》!!」

 たいにぼが右手を振るうと、死の炎が一瞬でかき消えた。たいにぼの固有魔法《男だけの世界》である。

 全ての能力を打ち消す右手は、たいにぼを一位たらしめる強力な武器だが、デメリットもある。『男の殴り合い』を実現するための能力が強すぎるがゆえに、男ばかり寄ってきてしまうのだ。彼が《男好き》になったのはこのためである。

「悪いなderoga!! ここで消えてもらうぜ!!!!」

「ぐうううううううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 二人の距離は残り一メートル。たいにぼは右手を振りかぶり、derogaはセンターでマークミスに気づいた人のような表情を浮かべた。

「おらああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 derogaがたまに筋トレをするたいにぼの剛腕に吹き飛ばされる寸前。


「よくやってくれました。やはり、学園都市を創って正解でした」


 頭上から、声が聞こえた。地面から私の足が離れ、空中に浮かされてしまう。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

「なんだなんだ!?」

 見ると、たいにぼとderogaも宙に浮いている。空にどんどん引き上げられている。

 私を含めた三人は、空へ引き上げた元凶の人物のところまでたどりついた。

「あんたは・・・・・・・・・・・・こいしーむ!?」

 驚きの声をあげるたいにぼ。そこにいたのは、学園都市の創設者こいしーむだった。

「学園都市のトップがなぜ私たちの戦いを止める?」

 学園都市での戦いは許されているはずだ。私の質問に、こいしーむは肩をふるわせた。

「ククッ・・・・・・フッ・・・・・・フハハハハハハハハハハハハハハハ!!! 完成したのですよ、《ブリザード》!! 新しい生命を誕生させるための、『生命の門』がなア!!!」

 生命の門? なんだそれは?

「おい、どういうことだよ」

「うるさい、陰キャァあああああ!!!」

 質問したderogaが、こいしーむの手に吸い込まれた。

「な、なんだその力は!?」

「うるさい、陽キャァあああああああ!!!!」

 質問したたいにぼが、こいしーむの手に吸い込まれた。

 二人が、消えてしまった。

「大いなる力を得たあなた方には、『種』となってもらいます。この学園都市の生徒たちには『卵』になってもらいます。さあ、《ブリザード》。あなたも、こちらへいらっしゃい」

 なんという力だ・・・・・・! くそ! もうこれは諦めるしかないか・・・・・・

「最後に教えてくれ。あんたは『陰キャ』と『陽キャ』、どっちなんだ?」

 突然もがきだすこいしーむ。

「ぐ、ぐおおおおおおおおおオオオオオオォォォォォ!!! 私は!! 私はあああああああああアア!!!」

 しかし、息を整えると、こちらへ手を向けてきた。

「・・・・・・はぁっ! ・・・・・・はぁっ! 私は! そのような単純な人間の二分割を終わらせるために『生命の門』を開くのだ!! さあ!!!! 贄となれ!!! 《ブリザード》!!!!!!!」

 こいしーむの手から光が放たれる。光が私を包み、私の意識は薄れていき・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ――――。



 ああ、もうちょっとでイキそう。

「はあっ! はあぁっ!」

 俺はまつ。もうちょっとでイキそうな男だ。

「ん?」

 エロサイトに夢中で気づいていなかったが、隣に「ちょうどチンポが入りそうな大きさ」の虹色の穴がある。なんだこれ?

「俺にもついに、異世界転生きたか?」

 手を止めて見るが、穴は「ちょうどチンポが入りそうな大きさ」から広がる気配はない。

「くそっ! 期待させやがって!!」

 俺にはやっぱりチャンスは回ってこないのか。

「・・・・・・でも、どっかを入れれば全身が吸い込まれるタイプかもしれないな・・・・・・」

 俺は、イキり立ったチンポを見つめる。

「とりあえず、チンポ入れてみるか」

 ―――。



「顕現せよ!!!! 『生命の門』!!!!!!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!!

 私の名はこいしーむ。新人類の誕生のため学園都市を建設し、『種』と『卵』を手に入れた。門が開いた今、『神』が出てくるのを待つのみだ。

 ズオオオオオオオオオオオオオオッッ!!

 門から、ピンク色の巨大な肉の塊が姿を現した。”ソレ”はあまりにも大きく、眼下の学園都市を全て覆うほどの巨大さだ。

「神だ!!!!!! 神が降りたぞオオオオオオオ!!!!!!!!」

 思わず叫んでしまった。見下ろせば、逃げまどう学園都市の生徒たち。しかし、君たちには、『卵』になってもらはなくては困る。

「さあ、『種』です!!!! 存分に放出するのだ!!!!! はははははっはあはああははあはははははははははははああああ!!!!!!!!」

 私は三人の生徒の魂をピンクの肉塊の、穴の部分に向けて放った。

 ――――。



「うおっっ!!? なんだこれ!!!! キモチイイイ!!!」

 俺の名はまつ。穴の中は、ヌットリと温かくて気持ちよかった。

「やばい!!!!!!!! 腰止まんねえわ!!!!」

 虹色の穴はドクドクと脈動して俺の肉棒を離さなかった。

 

 スルッ!


 俺の肉棒に何かヒンヤリとしたものが吸い込まれた。

「なんだこれ!!!! なんだこれ!!!! めちゃくちゃでそう!!!」

 あああああああああああああああ!!!!! 出る!!!!!!!!!!

 ――――。



 私の悲願がようやく叶う。肉棒――”神”は動きをどんどん動きを早めている。ああ、ようやく叶うのだ。『陰キャ』も、『陽キャ』もない世界。どちらにもなれない自分の、生きられる世界。

「さあ!!!! 新人類の誕生だあああああああああああ!!!!!!!」

 ”神”はドクンと波うち、大量の白い液体を学園都市に放出した――!

 ――――。



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 出てしまった。無限に精子が出ている気がする。死ぬほど気持ちがいい。

「もう、死んでもいいかな・・・・・・」

 あまりの気持ちよさに、俺は意識を失った――

 ――――。



 逃げまどう生徒たちを包んだ白い液体は、生徒たちをすべて溶かしつくした。

「私も、はやく・・・・・・」

 私にも液体が降り注ぐ。もう少しで私も”なれる”。

 意識が溶けていく・・・・・・・・・・・・。

 ――――。



 液体で満たされた学園都市。そこから、美少女が浮き上がった。一人、二人、三人、四人・・・・・・。無数に美少女が出てくる。

 そこには、『陰キャ』も『陽キャ』もなかった。全員が『美少女』。こいしーむの夢、『人類美少女計画』は叶ったのである。

 そして、こいしーむ自身も。

「ふぅ、”なれた”みたいだねー」

 柔らかくて甘い、鈴のような声。こいしーむも、美少女になっていた。

「あ! 門がまだ開いてる。 ・・・・・・行ってみようかな。”神”の世界に。 私、美少女だからなんでも許されるよね!」

 こいしーむは、ルンルンと空を駆け上がり、”神”の穴の中に飛びこんだ。

 ――――。



「んあ・・・・・・・・・・・・?」

 寝てしまっていたようだ。鏡を見ると、寝起きの顔だ。でも、美少女なので寝起きでもかわいい顔である。

「あれ・・・・・・? 私、女の子だったっけ・・・・・・?」

 あんまり覚えていない。そうだったっけ。いや、そうだ。私は、『美少女』だ。

「なんか、ムラムラする・・・・・・」

 体も発達してきて、最近性欲が抑えきれない。適当なオタクでも食べるか。

「この豚って人でいいかな・・・・・・」

 Twitterでささっとオフ会の約束をする。性欲の強そうな人を選んだので、すぐに”仲間”を増やせるだろう。

「○○ー! ご飯よー!」

 お母さんの声が聞こえた。窓の外を見れば、もう朝になっていた。

「さて、行きますか!」

 まつは、元気いっぱいに外に飛び出した。

                            おわり


 

 

 

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