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ココロトクトク~Heart sounds~

”トクンッ・・・トクンッ・・・!”

彼の心臓の音。私の大好きな人の音。

遠距離に住んでいる彼。すぐには会えない彼とのビデオチャットの時間は、私にとってかけがえのないものだ。

「心臓の音、聞こえる・・・。」

私が吐息混じりにそう言うと、彼は笑って何か言った。・・・しかし、接続が悪いのか何も聞こえない。

もう、おっちょこちょいなんだから・・・!!でも、そういうところが好きなんだよな、私・・・。

そんなことを考えているうちに、自分が彼女ヅラをしている気がしてきて、なんだか恥ずかしくなってきた。

「あなたがそんなにカメラに近いから、ドキドキしちゃうんだからね・・・!?」

照れ隠しに、息多めにそう言うと、彼はまた笑って何か言った。・・・しかし、また聞こえない。ディスコの設定が悪いのかな?

だが、これは普段できないことをするチャンスだ。

私は、彼のことが好きだ。しかし、彼に好きと伝えたらどんな反応が返ってくるか分からない。もし冷たい反応をされたら、もし拒絶されたらと考えたら胸が苦しくて、死んでしまうかもしれないと思う。怖くて怖くて仕方がなくて、ずっと想いを伝えられない。

けど、今なら言える。彼の言葉を聞かなくて済む今なら、この言葉を、この想いを伝えられる!!

「あなたのことが、好きです!」


「俺も、好き。」

聞こえないはずだった彼の言葉。ずっと好きだった彼の言葉。

いつの間にか設定を直していた彼は、油断していた私に愛のカウンターパンチを食らわせた。

「ドキドキしすぎて、死んじゃいそうだよぉ・・・。」

私がそう囁くと、彼は画面越しに笑っていた。

”トクンッ・・・トクンッ・・・!”

じーたは、たわしマンに心臓の音が聞こえないように、胸を必死で押さえた。

ココロトクトク~Heart sounds~ 完



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