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料理の一番星

ふと見上げてみるともう暗くなっている。街灯の眩しさから徐々に目が解放されてくるとぼやぁっと視界がひらけてくる。するとポツンと光が見える。「あ、一番星だ」と小さく呟く。そしたらポツン、ポツン、ポツンと新しい光が見えてくる。光の数は瞬く間に増えたかと思うとあっという間に満点の星空だ。

たくさんあるのに最初はよく見えない。一番最初の光を見つけるとそのほかの光が見えてくる。そんなことが良くある。スパイスの世界だってそんなこと良くある。そんな時に一番最初によく輝いているのが「スターアニス」こと八角である。

中国の西南部が原産といわれているスターアニス。今ではインドネシアやベトナムでも栽培されている。インドでもごくわずかだか栽培されており、インド東北部、中国やミャンマーに近いアルナチャルプラデシュ州が唯一輸出される量のスターアニスを栽培しているそうである。アジアでは古くから料理はもちろん薬などとしても重宝されてきた。独特の甘みを含んだ香料は香水以外にもタバコ、歯磨き粉として活用されている。中国を代表するスパイスミックス・五香粉の中のスパイスの一つで中心的存在とも言われている。確かに中華料理の一番星は「スターアニス」であることが多い。日本にも古くから伝わっていると言われ、線香などにも使われているが古くは戦国武将が兜の中にスターアニスを醸し士気を高めたとか。

スターアニスを栽培して実ができるまでは15年かかると言われている。ただ一度収穫できると100年先まで毎年収穫できるそうである。それも年に2回も。

星のような形をしているから「スターアニス」。アニスやフェンネルのような香りだから「スターアニス」。8つの種を囲むように星型をしているが、種には香りがなく周りの殻の方に香りがある。なので見た目が良い種がしっかりと入っているスターアニスより種が入っていないスターアニスの方が上等品だと言われている。

16世紀末にはイギリス人の船乗りによりヨーロッパに伝えられ、独特の甘い香りを活かした様々なデザートやお酒などが作られるようになった。

一番星になるスパイスはスターアニスの他にもいろいろといる。カレーを食べて「あ、カルダモンだ」や、「クミンを感じる」などと良く聞く。キャラウェイ、オレガノ、ミントなんかも一番星になりやすい。どれも光り輝くスターたちだ。

暗闇の中の一番星。未知の料理の一番星。どれも新たな世界への道しるべだ。

「あ、一番星」

気がつけば美しい世界が広がっている。

Welcome to world of wonder and beauty.

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