あれから一年。

おそロシア。

恐らく、この一年で最も有名になった学者は松戸の全裸中年男性・人・丸の内OL・癒し系動物動画botこと小泉悠氏だろう。

ロシアのウクライナ侵略でとばっちりを受けた人は非常に多い。選挙区が苫小牧の癖にロシアに肩入れしまくる鳩山由紀夫は「まぁ鳩ポッポだし」で済まされるし、同じカテゴリーとして当事者のウクライナ人学者からほぼ名指しでスパイ呼ばわりされた鈴木宗男は「まぁムネオだし」で終わるが、生涯をかけてロシアにシンパシーを超えた感情を抱き続けた日本人学者達はほぼその言論生命を断たれたか、またほぼそれに等しい扱いを受けている。女性声優業界唯一無二のロシアマニア、キャスティング時に「ロシアキャラならすみぺでいいだろ」扱いだった上坂すみれはあれ以来ロシアに関する言及をほぼ一切止めてしまい、自暴自棄になったのか脱ぎ散らかして水着写真集を出した。いや、関係ないけど。

良くも悪くも、ロシアによるウクライナ侵略は一部ではあろうと、関係した日本人の命運をかの如く動かした。

ましてや、当事者であるウクライナ人、侵略者のロシア人、双方とも運命の歯車は狂った。

愛憎半ばをもってロシアを見続けている小泉氏でさえ「ロシアの行動原理がよくわからない。この戦争はロシアにとって利益がないのに」と言っているのだ、自分など到底理解できないだろう。


日本マスコミが絶対に報じないロシア現代経済物語

ロシアというのはソビエト社会主義共和国連邦の後継国家、という事になっている。少なくとも国際慣習上ではそうなっており、冷戦期にはソ連が座っていた国連安保理常任理事国の椅子にちゃっかりと座っている。

しかし、その椅子の座り心地はあまり良くないようだ。国連安保理常任理事国というのは相応の責任というものも国際社会から求められるのだが、その責任を果たせるだけの銭がロシア政府にはない。

いや、厳密にはあったのだが…というのが正解に近いのだろう。飲んだくれのエリツィンがクリントンからおだてあげられているその裏で、オリガルヒたちは御自慢の金融工学を使って旧ソ連時代のBtoB通貨だった不換通貨ルーブルを二束三文で買い漁り、または発行しまくった。

Kamil Galeev氏と日本語訳者の仮蔵氏のツイートを掲載しておく。
ここには「オリガルヒの錬金術」の一端が記載されているのだが、要するに不換貨幣ルーブルを用いたダイナミック汚職だ。いや、合法化された汚職としか言いようがない。
(どこぞのスペシャルウルトラデラックスバカが「造幣局も民営化されるべきだ!」と吹き上がっていたが、誰も相手にしなかったのはこういう実例がちゃんとあるから)

その結果訪れた1994年のロシア経済破綻。インターネット時代の夜明け前なのでネット上ではほとんど記述がないが、結局この経済破綻は「好き勝手不換通貨ルーブルを発行しまくったコムソモール上がりのオリガルヒ連中」が「不換紙幣ルーブルを換金できるようにした結果」、思い切りハイパーインフレーションを起こした結果でもある。
例えるなら、遊戯王が爆発的にヒットした際、カードを「札束刷っているような感覚だった」と述懐したKONAMI幹部に似た感覚だろうが、こっちはあくまでいち企業に過ぎない。
ロシアの場合は国家規模なのだから巻き添え食らった一般国民(特に年金受給者)にとってはたまったものではない。なおハイパー藤巻師匠は意図的に混同している模様。

信用できる貨幣を発行できるというのは、現代の貨幣経済においては絶大な権力なのだ。難しい概念だろうが、簡単に理解したいのであれば『ハイパーインフレーション』という漫画があるのでお勧めしたい。

一般国民からすれば、オリガルヒは「勝手に紙幣刷りまくって私服を肥やした挙げ句、ハイパーインフレーションというツケを自分たちに押し付けた」憎悪と怨念の象徴である。本邦においてわかりやすく説明すると、就職氷河期世代における竹中平蔵の様な存在だ。

オリガルヒと結託しているというイメージの強いエリツィンはたちまち不人気になった。某総理の孫が「爺ちゃんの支持率、消費税以下。僕の支持率もそうなっちゃった」と笑いにしていたが、実際に被害を受けた側は笑い事では済まされない。

オリガルヒたちも自分たちが物凄く憎まれている事はわかっていた、このままでは「オリガルヒ殺すべし、慈悲はない」と民衆がスレイヤー化しかねない。しかし、国際社会の体面上、民主主義国家という体裁は取らなくてはならない。そこで引っ張り出されたのが、当時は「内気で陰鬱な雰囲気のKGB上がりの内務官僚」だったプーチンだった。

とはいえ、ポッと出のプーチンの言う事を聞かない連中は多かった。そこで取ったのが、「オリガルヒ同士を戦わせ、一方に肩入れし、もう片方は徹底して弾圧する」というやり方だった。ソ連崩壊から辛酸ばかりのロシア国民は大喝采、プーチンの権力基盤は固まり、彼についたオリガルヒもまた経済を牛耳った。見方によっては完全にプロレスだが、今だにプーチン人気が年金受給者で高いのはこの時の苦難と、カオスを好まぬロシアの国民性なのかもしれない。余談だが、この手の政治的プロレスが本邦で最も得意なのが森元総理だ。ロシア利権の本丸の一人である彼が、プーチンにやり方を伝授していたとしても全く驚かない。

ロシアの年長世代にとってプーチンは、秩序を回復し(たとえプロレスであっても)オリガルヒから富を取り返してくれた英雄なのだ。今回の戦争でも、最も支持をしているのは年長者層だというカラクリの背景には、「二度とあの惨めな時代に戻りたくない」という強烈なトラウマが存在する。


ロシアと日本は相似形

とはいえ、今のロシアの内部事情はお粗末としか言いようがないのは歴然たる事実だ。モスクワでは激しい権力闘争が行われているが、その一方では最前線の兵士が文字通りのウラー突撃を敢行して、ウクライナの肥沃な大地の新たな肥料となっている。
彼らの大半は徴兵か、それとも本邦の旧陸海軍同様に貧しい地域から様々な悲惨な動機からやってきた志願兵だ。HoI4でよく揶揄される「ソ連は畑から兵士が勝手に生えてくる」というのはこういう事なのだというのを、嫌になるほど見せつけられている。

むしろ、彼らは「祖国の防衛に殉じた者」として顕彰されるし、遺された家族は遺族年金が支給される。それが幾ばくかであろうと、血を流した代償として金と名誉が与えられる。
それは国家という巨大な共同体を守護した者に与えられるべきインセンティブであり、これからも共同体を維持していく以上は絶対に避けられない儀式でもある。

翻って、本朝はこの点においては『先進国で最も悲惨でお粗末』としか言いようがない。
経済戦争の特攻隊員として廃人となったのに、名誉どころか労働しない役立たずだの税金の無駄遣いだのと罵声ばかり浴びせられ、最近ではルンペルブルジョアジーの一種たる社会学・経済学をキメた自称保守連中が「役立たずなど処分してしまえ」と豪語できる本邦文士達と比べると何と人道的であろうか、とさえ思える。(自称リベラル側は問題外なのは言うまでもない)

そもそも、共同体を「煩わしい」だの「自由への阻害」だの「利権組織」だの「既得権の象徴」だの「因習塗れで時代遅れ」だのとケチョンケチョンに罵って、「そんなモノいらない」とやってきたのが民意の多数派だったのだ。共同体維持の為の顕彰なんて発想には至らないだろう。そして、「犠牲は要求するが報いがない共同体」など維持する価値がない。

恐らく、戦争はまだ続くであろう。ロシアは最早引くに引けない状況となっているし、ウクライナは「全土を取り返すまで止めない」と明言している。
確かにロシアは現代国際社会に喧嘩を売った側だが、だからといってウクライナが綺麗で絶対的正義とも言い難いくらい汚職塗れな国なのも確かだ。だから自棄っぱちでキエフの全裸中年男性チ○コピアニストことゼレンスキーが大統領になったのだ。

我々は似た境遇の、「隣国の隣国」ウクライナの惨禍を眺めながら、ただひたすらに来るべき時の備えをしておかなければならない。だから銃刀法規制緩和早くしろってんだろ、自己責任の裏返しは自力救済、その為の武装なんだから。


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