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インスリン注射と飲み薬

わたしは意識のない間、相当な量のインスリンを体の中に入れ続けていたらしい。

たしかに血糖値か1200もあったらそうだろうな。

それで、なかなか効かなかったそうだ。(主治医談)


さて一般病棟に移ってから、三食インスリン注射をすることとなった。

わたしの実家は、父と弟が糖尿病患者で、毎食前にインスリン注射を打っている。これは見慣れない者にとっては少々グロテスクな光景かと思う。

まあ家族だから目の前で打つのだし、他人と食事するときは見えないところ…トイレとか車の中とか…で済ませてくるようだけれども。


それが、自分ごととなった。

けっこう落ち込んだ。


毎食前に看護師さんが血糖値を測りにくる。「チクッとしますよー」と指先から血を取るけれど、全く流血しないので、あの機械はどんな仕組みなのか。

そして一度戻り、改めてインスリンの注射をしにきてくれる。それも全然痛くないので、毎回凝視していたけれど針先はほとんど見えないくらい細いようだった。

最初はお腹の肉…あまりある肉なので打つところに困らないのだけど…に打ってもらっていたけど、会話の中で「どこに打ってもいいのよ」と言うから何回か腕にもしてもらった。

「これって、皮下注射、ですよね?」

「膵臓とは遠いところに打ってると思うけど、どうやって効くんですか?」

いろいろ聞いてみた。

ザックリまとめると、「脂肪」部分に皮下注射すると、体の中にゆっくりと薬が取り込まれて行き、血糖値の上昇を抑える働きをするのだ、とのこと。

わたしは割と太っているので、腹の肉に注射したのでは脂肪が厚くて効き目が遅くなるんじゃないかと、まじめに心配したけれど、笑われてしまった。

…………

飲み薬の話。

「念のために聞きますが、飲み薬と注射どちらでコントロールしたいですか?」

「インスリン注射は年々改良されていて、毎食じゃなくて1日に1回で済むものや、1週間に1回で済むものもあります。出来るだけ飲み薬で血糖値をコントロールしたいと思ってますが、どうしてもダメなときは退院してからもインスリン注射を打つことになります」

と丁寧に教えてもらった。

そりゃ飲み薬の方が良いに決まってる。注射を見るのもされるのも平気だけど(なんなら採血の時はじーっと見つめてるのが好きだけど)自分で自分に注射するのはなかなか大変そうだぞ、と思った。

タイミングや薬の量や使った後の針の管理…。

主治医と治療チーム(内分泌専門の主治医と、栄養や薬のことに詳しいドクターと、たぶん研修医、の3人)は、2、3日ごとに薬を変えていた。

どの薬が効くか、試していたのだろう。

ある時インスリン注射は唐突に無くなり、飲み薬が追加された。

その次の日寝る前になんだか体が痒い、と看護師さんに伝えたらすぐに「見せて!」と言われ、あちこちめくられた。

次の日の朝には主治医が慌てて病室にやってきて「見せて!」と言う。昨夜看護師さんに見られてるし、こちらは女とは言え50過ぎているし、いくつか病気もしてるのでドクターに体を見られるのは全然気にならない。

それであちこちをペロンペロンと出していたら「はい、わかりました」と止められた。あれ?内科系のドクターは患者が脱ぐのは慣れてるのではなかろうか?

「血糖値が下がっても、体が薬で痒くなるなら中止しないといけませんから」と言われて焦った。

せっかく飲み薬で行けるかと思ってたのに。

昼にはもう一人のドクターも駆けつけてきて、やはり「見せて!」と言う。こちらのドクターは女性なので遠慮なくあちこち見ていたが、特に感想もなく帰っていった。

夕方にはまた主治医がやってきて

「検討したのですが、特に薬によるものではなさそうなので、このまま継続して治療しますね」

と言われてひと安心。

それにしてもちょっと痒いと言っただけで大騒ぎになってしまった。あまり変わったことがなければ大人しくしていよう。


それから2日ばかり、毎食後の血糖値測定は、悪くはなっていなかったけれど大きく前進もしていないように思えていたが、

「明後日退院できますよ」

と朝のウォーキング中に廊下で呼び止められて主治医に告げられた。

「え、そ、そうですか?」と嬉しさより戸惑いが先に出た。

飲み薬でそんなに捗々しい結果が出ていないって言ってたのにな…

病院生活が10日以上続いたら、退院して食事運動服薬の全てを自分で責任持ってやるのが、なんだか怖かった。


1日延ばすか、という選択肢もあったけれど、家族が都合つけてくれると言うので退院することにした。

そしたら、栄養指導、薬剤師による薬の説明と立て続けにスケジュールが入り、のんびり風呂にも入っていられなくなった。

退院前日には「お預かりしていた薬です。お返ししますね」と看護師さんが来てお中元を入れるような紙袋で薬を返してくれた。(この薬の量については別に書く)

それで、翌朝2週間分の飲み薬を渡された。

血糖値コントロールの薬だけでなく、うつ病関連の薬も2週間分出ていたし、便秘薬も2種類出ていたので、ちょっとすごい量の薬になった。

最後に看護師さんに「便秘の座薬もあるんだけど、どうする?使う?」と聞かれ、

座薬なんかいつ出てたのか知らなかったので「座薬っていうほどすごい便秘じゃないので要りません」と断ったのだが、

「こちらで処分しても良いのだけど、入院費の中に入ってて、お代は貰ってるものなのでやっぱり持って帰ってね」

そんなわけで、手付かずの座薬がまだ手元にある。

便秘が酷くてトイレで泣いた話はまた改めて書く予定。



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