"パルス型消費行動"をD2C的に攻略する方法

株式会社バイオフィリアの取締役をしている矢作です。
先日弊社のマーケティング戦略について取材をしていただきました。

ココグルメの事業を立ち上げて以来2年半ほど経ちましたが、おかげさまで順調にグロースしています。

そんなココグルメのマーケティング戦略の中心に据えているのが
「パルス型消費行動」
というスマホ時代の購買行動の攻略です。

パルス型消費行動とは何か?

「認知」→「興味関心」→「比較検討」→「購入」というカスタマージャーニーをいかに効率よく進めていくか?

従来のマーケティングはそう考えられてきました。

かつては
・TVCMで情報を得て
・しばらく経って小売店で商品を見かけ
・棚の商品の中から一つを選ぶ
という購買行動の中では、上記のようなマーケティング設計は有効だったかもしれません。

ECが当たり前になり、スマホによって購入が暇つぶしに近づいていった結果、購買行動は大きく変わってきたと言われています。

その新しいユーザー行動が「パルス型消費行動」と呼ばれるものです。

「パルス型消費行動」という言葉が初めて世の中に出てきたのは、(おそらく)2019年にGoogleから発表されたレポートです。

ユーザーが購買に至るまでのプロセスを解析していった結果、時間とともに徐々にAIDMAを辿っているモデルではなく、AIDMAを同タイミングで突破し一気に購買まで至っているという事実でした。

※AIDMAは、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字をとったものです

みなさんも日頃の購買を思い返してみると、
・商品を認知して
・関心をもって
・比較検討して
なんてせずに、単に思いつきで買ってしまうことが多いのではないでしょうか?

左:ジャーニー型消費    右:パルス型消費

このような購買行動が、一定の波形の中で突然波長が大きく触れていったような動きから「パルス型消費行動」と名付けられています。

一方で、従来のような認知から購買まで徐々に進んでいくモデルを「ジャーニー型消費行動」と呼ばれています。


パルス型消費行動の振る舞いは、もちろん従来のマーケティングでも(エンタメや観光分野では特に)「衝動買い」として理解はされていました。

しかし現代ではその「衝動買い」が、消費財や耐久財の分野まで起こっているというとのこと。


ジャーニー型消費行動では認知・興味関心・比較検討・購買というユーザーの段階的な状態がありました。

一方でパルス型消費行動は
・気になっているフェーズ
・購買フェーズ
の二つの状態しかありません。

この二つのフェーズではどのような心理的変化や行動が起きているのでしょうか?

「気になっているフェーズ」でユーザに起こること

気になっているフェーズでのユーザーの心理状態は、上記のGoogleのレポートからさらに1年後の追加調査によって明らかにされました。

気になっているフェーズでユーザーにおきる心理状態が、
「バタフライサーキット」
というものです。

気になっているフェーズでは大きく、

さぐる期
気晴らししたい/学びたい/にんまりしたい

かためる期
納得したい/解決したい/確信したい/答え合わせしたい

という二つの状態が存在しています。

直感的には、まずは色々な情報にある程度触れてから( さぐる期 )徐々に確信をもっていく( かためる期 )に推移していると考えがちです。

しかし実は、Googleの検索データなどから購買までの行動を分析すると、「さぐる期」と「かためる期」は交互に発生しており、購買フェーズに移行するタイミングすらも「かためる期」ではなく「さぐる期」で発生していることもあるのです。

このようなユーザーの心理的な振動のことが「バタフライサーキット」と呼ばれています。

バタフライサーキットの5つの分類

とはいえこのバタフライサーキットは、どんなジャンル・どんな人でも同じように発生しているわけではなく、ある程度の分類があることもわかっています。

その分類は大きく5種類あるとされています。

全方位型
このタイプは「さぐる」と「かためる」が同程度に起こっており、情報源も検索やSNS、リアルな口コミなど多岐に渡っており、きっかけが分かりにくいタイプです。

主観型
これは自分自身が主体となって得た情報に強い確信を持って行動するタイプで、「学びたい」「気晴らししたい」がメインになっています。
あまり周りの情報には踊らされず、自分で文脈を理解して購入に至ります。

慎重型
商品の購入に向けて思い立ってから非常に丁寧に情報を収集するタイプです。
情報収集をするなかで最後はオフラインに行き着くケースが多く、親しい友人や店員さんとじっくり話すことで結論を出していきます。

真面目型
慎重型とは逆にオフラインで知ったものをオンラインで最後購入するタイプです。オンラインで初めて出会う情報には感度は低く、一度オフラインで興味を持ったものに対してきちんと網羅的に情報を撮りに行きます。
例えば比較サイトで最安値を検索するようなタイプもこれです。

瞬発型
デジタルで情報を収集そのものを楽しみ、その中で出会った商品やサービスを積極的に試しに行くようなタイプです。
情報を取りに行くとしても、自分の確信を強める意味合いでの情報収集が多くいです。


5つのタイプは人の性格だけではなく、どんなジャンルの商品を購入しようとしているかによっても異なるため、一概に整理するのは難しいとされています。

以上が「気になっているフェーズ」でのユーザーの心理的変化ですが、果たしてこのような取り止めのない状態からどのように購買へと遷移していくのでしょうか?

「購買フェーズ」でユーザーに起こること

「気になっているフェーズ」から「購買フェーズ」に移るには、大きく6つのシグナルがあるとされています。

Safety: より安全なものを見つけたとき
For me: より自分にあったものを見つけたとき
Cost Save: よりお得なものを見つけたとき
Follow: 噂を聞いた時
Adventure: 挑戦をしたいとおもった時
Power save: 買い物の労力を抑えられる時

自分の購買のを振り返ってみても、たしかにこれらに分類されるきっかけがあったように感じます。

これらのパルスのきっかけは、同一人物・同カテゴリであっても、時と場合によって変化するとのこと。

しかしながら、ジャンルによって反応しやすいセンサーはある程度分かれているようです。

ジャンル別のシグナルとその影響度

Googleの調査によるとジャンルによってパルスを発生させるシグナルの強度は異なるようです。

直感センサーの反応しやすさ

最も反応しやすいのは、
Safety: より安全なものを見つけたとき
For me: より自分にあったものを見つけたとき
の二つで、耐久財であるととくにFor meのシグナルに反応しやすいとのことです。

この感覚は馴染み深いのではないでしょうか?

今の状態でも暮らしてはいける、生きてはいける。
でも色々な広告や情報に触れていく中でずっと需要がリマインドされ続け、
・「今のよりも間違いなく良い」という納得感
・「そうそう!これ!こういうこと!」という発見
があるとついポチってしまいますよね。

Googleのレポートでわからなかったこと

以上がGoogleのレポートで解説されていた、「パルス型消費行動」の整理です。

しかしこのレポートの中では、
「じゃあサービス提供者はどんなマーケティングをすればいいの?」
という方針は示されていません。

そこで弊社事業のマーケティングを行うなかで、見えてきた一つの方針を整理してみました。

結論、全方位的に面・質を幅広くとるのが正解

パルス型消費行動の原則は、
・常に購買意欲がリマインドされてきている
・その中で突然購買行動につながる
ということです。

つまり、
・特定のチャネルだけ取捨選択する
というのは機会損失でしかなく、
・オフラインからオンライン、オウンドからペイドまで、あらゆる顧客接点に自社サービスの情報を提供し続ける
ということが重要なのです。


さらにパルス消費行動は、
・「探る期」と「固める期」を交互に行き来し
・6つの直感センサーにたまたま引っかかった時に購入する
という特徴の通り、
・選り好みせずにさまざまな情報を発信し続ける
というのが重要になります。

かつてのマーケティング戦略では
・メッセージを一つに絞る
・「この商品しかない」というロジックを脳内に構築する
というのが主眼とされていましたが、
パルス型消費行動をとる現代人には機会損失が大きいと考えています。


「いろんな面にいろんな情報を載せるなんてコストかけてるだけでしょ・・・」
と思うかもしれませんが、
実は低コストで実現する方法もあります。

低コストで面・質を幅広く情報発信する方法

低コストでいろんな面にいろんな情報を載せる方法とは、ずばり、
お客さん自身に情報を発信してもらう
ということです。

UGCをなるべく多く、複数の切り口で発信してもらうことで、広告コストや自社リソースを最小限に面と質を担保することができるのです。

例えば、金銭的インセンティブやクーポンを付与して「お得さ」を訴求するコンテンツを量産していくのは、
・情報は増えてもバリエーションが少ない
・For meやSafetyの情報が得られない
という点で購入のパルスが発火しずらくなります。

またインフルエンサーに投稿をお願いする形も、一定程度恣意的な発信内容に統一されてしまうため、情報のバリエーションが減ってしまいます。

そこで重要なのが
お客さん自身に、自分の言葉で、自分の体験を発信してもらう
仕組みを作ることです。

弊社では、投稿内容を下手にコントロールすることなく、ピュアな気持ちで情報を発信してもらう、というのを大事にしています。

金銭的なインセンティブをつけたキャンペーンは実施せず、
インフルエンサーさんへ投稿を依頼したとしても
・商品価値を体感してくれそうな人に限定
・純粋な商品の感想を載せてくださいという形
で依頼させていただいています。

購買時の摩擦を最小限にする

お客さんを巻き込んで幅広い情報を出し続けることだけではなく、
パルスが少しでも起きた時に摩擦を少なく購入してもらう
というのも重要です。

「買ってみるか!」と思い立っても、サイトを色々見回っているうちに「また今度でいいや…」と離脱してしまうと、次に購入パルスが発生することは2度とないかもしれません。

手間を最小化する

購入時の情報入力や遷移の手間を極限まで削るのは、摩擦を緩和するために重要です。

大前提、顧客は想像以上にめんどくさがりです。

・フォームの項目を削る
・自動入力の補助
・決済手段の多様化
などは当たり前に整備し、なるべく頭を使わずに購入してもらえるような土台作りは欠かせません。

今買う理由を用意する

購買のパルスが発生した時、最も起こる離脱パターンが「今じゃなくていいや」という感情です。

単品通販の分野では、期間限定のキャンペーンや季節ごとのおまけ同梱などあらゆる手段を用意して「今買ったらお得である」ということを訴求しています。

古くからある手段ですが、やはり効果的です。

リスクを背負う

顧客が感じるだろう失敗リスクをなるべく会社が肩代わりするのが理想です。

・合わなかった時のための返金保証制度
・商品受け取りの手間を減らす工夫
・決済の手数料
など顧客に発生しうる負担を会社側が追うことで、「あれ?大丈夫?」という不安を覚えることなく購入してもらうことができます。


これら以外にも購入時の摩擦は数多く存在し、テクノロジーや時代の変化でもちょっとした摩擦は変わってきます。

マーケター自身が顧客側の立場で毎日さまざまな商品を購入することで、発見してくしかありません。

まとめ

パルス型消費行動は、生きるために必要なものは当たり前に手に入る上に、いつでもどこでも購入できるスマホが世の中に普及した、現代の先進国ならではの行動です。

テクノロジーもチャネルも価値観も、急速に変化する時代についていけるように、常に新しい発想を持っていきたいです。


ということで、株式会社バイオフィリアはそんな新しい発想でプロダクトを届けていける仲間を募集中です!

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