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感想 アウトロー・キング

 ネタばれ注意・ドラマ「アウトロー・キング」だけでなく、映画「ブレイブハート」の結末に関わる記述があります。

 先日、歴ログさんがTwitterでお勧めしていたドラマ「アウトロー・キング」を見ました。ロバート・ブルース(スコットランド王ロバート1世)のイングランドに対する戦いを描いた作品です。
 ドラマと聞いて何シーズンもあるかと身構えておりましたが、歴ログさんから2時間程度と教えていただいて、思い切って視聴することにしました。また歴史ドラマについては、以前ローマ帝国もののドラマを見ていた時にウェルキンゲトリクスが裸でカエサルの前に引き出されてきて、妻に「子どもがいるのに」って文句を言われて以来、リビングで歴史ドラマを見づらくなっておりまして、寝室でタブレットにての視聴となりました。

 ロバート・ブルース、英国史、スコットランド史に詳しい方は別として、この名前に聞き覚えのある方の多くは映画「ブレイブハート」に登場した人物として知っていらっしゃるのではないでしょうか。僕自身もそうで「ブレイブハート」の主人公ウィリアム・ウォレスも登場するのかな?と思いながら見ましたが、残念、登場するにはするのですが、登場した時には既に死体でした。
 お話としては「ブレイブハート」の続きの時代。あるいはクライマックスとラストシーンの間になるのか?「ブレイブハート」も観たのがかなり前なので、ちょっと記憶が曖昧になっているのですが、序盤でウォレスが死んでいるのでその位の時代です。

 演出としてはまず、残酷描写けっこうキツめなのが印象に残ります。主人公の妻子を匿った城主の息子が吊るされて胴を割かれるシーンはなかなかショッキングでした。敵対者と少しでも関わったというだけで蹂躙されてしまう人々は歴史のエピソードとしてはよく目にするものですが、このように映像にされるとその残酷さ悲惨さを突き付けられるようです。製作者の意図としても単なる残酷趣味ではないのでしょう、多分。

 歴ログさんも褒めていた美術について。歴ログさんのおっしゃる通り、実際にもこのようであっただろうと思わせるリアルさが良いです。考証が正しいかどうかまで検証するのは僕の手に余るのですが、リアルと感じさせるイメージ喚起力があります。
 特に地面が基本ぬかるんでいるのが「ああ、イギリスだなあ」という感じで良かったです。勝手なイメージなんですけどね。
 史実ではありえない煌びやかで華やかな衣装やセットも好きですが、歴史ドラマとして見ようとすると、リアルな方が好みです。

 最も印象に残ったのは物語前半で、翌日の一騎打ちを約束した敵から夜襲を受けて敗走するシーン。古今東西の多くの英雄にも数十騎まで手勢を減らした経験のある人物は多いのですが、映像化されることでその絶望的なことが実感されました。この様な状態になった敗将に運命を託すことの難しさを思うと、ロバート・ブルースに限らずその様な状態から再起した人物が少なからずいることが驚くべきことに思えてきます。

 合戦シーンについては中世のイングランド軍と言えば長弓兵のイメージが強いのですが、意外にもこの作品ではほとんど出てきません。スコットランド側の弓兵の方が少し登場するだけです。百年戦争より半世紀ほど前だと、まだ弓兵は主力ではなかったのでしょうか。単に演出の都合かもしれませんが。
 戦術的には両軍とも肩と肩が触れるほどきっちり陣形を整えて激突!ではなくて、かなり乱戦模様に描写されています。中世だと実際にもそんな感じだったでしょう。
 父の所領を取り返すために主人公の配下になったダグラスという登場人物が双剣で無双するのは、なかなかカッコよかったです。軽く検索したところ史実ではジェームス・ダグラス卿といって、十字軍に参加したかったのに果たせずに亡くなったロバートのため、ロバートの心臓を携えてスペインでムーア人と戦って討ち死に、とのこと。インパクトのある経歴の持ち主ですね。

 ドラマとして見る場合、志を同じくする兄弟を次々失っていく主人公の感情とか、主人公の前妻の娘と妻の間に愛情が生まれてゆく様を描写することで、囚われた主人公の家族により強く同情するように演出されているとか、そんなところにも注目すべきでしょうが、どうやら僕は歴史ドラマを見るときに、歴史の本で学んだことを映像で補完してもらえることを一番楽しんでいるようでして、物語の受け手としては邪道かなと苦笑しています。

 主人公ロバート・ブルース。本作では最前線にも立つ逞しい戦時のリーダーという感じですが、「ブレイブハート」ではもっと文官ぽく描かれていたように記憶しています。有能だけど、線の細い秀才って感じ。まあ「ブレイブハート」でも本作のような描かれ方だと、ウィリアム・ウォレスとキャラ被りになってしまうでしょうが。
 今、自分の記憶の確認と、両作のロバートの描かれ方を比較するため、「ブレイブハート」を再見したい気分にもなってるんですが、あれDVDだと3時間越えの大作だったような・・・。時間が作れるかなぁ・・・。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今週末、本業の方でイベントに参加いたしますので、そのお知らせもご覧いただければ幸いです。


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