映画『BLUE GIANT』|自分をこれっぽっちも疑わない人

サックス奏者の大と、ピアニストの雪祈、ドラムの田辺。世界一のジャズプレイヤーを目指して上京した大を中心にして、3人が出会い、ジャズバンドを結成し、日本一のステージで演奏するに至るまでを描いた映画。

音楽の良さは自分には評価できない。ジャズを聴いたことはほとんどないし、音楽を聴いて、何がどう良かったと説明する言葉を持ってない。
でも、この映画が良かったかどうかは分かる。間違いなくいい映画だった。

何度も泣いたから。
自分の理想の自分がそこにいて、ちゃんと努力してたから。

こんな言い方おかしいんだけど「自分は努力したいんだ」ってことがこの映画を観て分かった。努力している人を観て、なんでだかどんどん泣けてきた。
小さなジャズバーで、初老の男性が田辺のドラムを褒めた時。
努力して、その努力が間違ってなかったと他人に認められた田辺の姿を観て、ボロボロと涙がこぼれた。
ライブ後、SO BLUEの平さんが雪祈のピアノを酷評した時。
自分の実力を過大評価していたことを突きつけられ、自分がチームに迷惑をかけたことを知り自己嫌悪に至る雪祈の絶望に涙した。

大のすごいところは、自分のことをこれっぽっちも疑っていないところだ。
世界一なんて大きな夢、実力もないのに語るのは恥ずかしい。実力がついてからだって、他人に嗤われるのが怖くて言えない。
でも大は、初めてサックスを吹いて、世界一になると決めた時から、世界一になる自分をこれっぽっちも疑ってない。世界一になるためにどうしたらいいかということだけ考えている。
こんなにも自分のことを信じられる人は、現実にはいない。皆の前では信じているように振舞っても、独りになった時には、本当に世界一なれるのかという疑いと向き合わざるを得ない。でもだからこそ、心の底から自分のことを信じている大は魅力的だし、人を惹きつける。海賊王になる人みたいなもんだ。

自分を信じ、自分を疑わずに毎日努力を続けられたら。
これは、多くの人に共通の願いなんじゃないかなぁと思いました。

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