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オリンパスOM-3 マニアック過ぎたフィルムカメラ

 デジタルカメラが主流の今でもオリンパスOM-1,OM-2は人気がある。ミラーレスになってもオリンパスはそのデザインを受け継いでいるほどだ。
その2機種の後継機として登場したのがOM-3とOM-4。カメラショーで一緒に発表されたが発売はOM-4に1年遅れの1984年。当時は学生でOM-2Nを使っていたがOM-3はいずれは欲しいと思った数少ないカメラだった。
OM-3はマニュアル露出のみでOM-4はオートとマニュアル露出ができる。この当時はOM-4の性能が一般的でOM-3のようなマニュアル露出のみは少ないうえにシャッターは機械式とプロかハイアマチュア向けのカメラだった。

両機とも同じ部品が使われているものが多い。OM-4にはセルフタイマー(グリップ横)があるがOM-3にはない。しかしOM-3の革の部分を触ると穴があるのが分かる。あまりに似ているからかオーバーホールをした時にOM-4の基盤を入れて戻ってきたこともある。                    

この2台の売りはマルチスポット測光。画面の中心部でスポット測光で測った露出を8点まで演算できるので細かい露出の調整が出来る他に白飛びしない明るさに補正できるハイライトボタンと黒潰れしないシャドウボタンを備えている。

シャッターボタンの近くにあるスポット測光は撮影時の指の移動が少なく使いやすい。その横にあるのがハイライトとシャドウのボタンだが露出の補正値が
分からないと逆に失敗する危険性が。Rのボタンはフィルムを巻き戻す時の
ボタン。使い過ぎでOM-3Tiのものに交換されたので色が違う。      

スポット測光は精度が高く複数の露出を演算することは少なかったがリバーサルの撮影でも露出を外す事も少なく露出の明暗差がある時には重宝したし露出の測り方の勉強になった。今の分割測光は精度が高いが明暗差がある時にはスポット測光で露出を判断することは必要だろう。

 OM-3を購入したのは1987年。専門学校を卒業しカメラマンとして働くことになったが会社の機材が乏しい事から自分の機材を使うことになり持っていたカメラ2台(OM-2N、4)では故障時の予備がないので購入した。
ファインダー内の露出表示も見やすくOM-2Nのように画面の中にシャッター速度や露出の指針がなく構図の邪魔にならない。今のカメラのように1/3刻みなので細かい露出設定が要求されるリバーサルの撮影でも露出の状況が分かりやすく単体露出計を使わなくてすむので急な露出の変化にもすぐに対応ができた。当時のカメラは暗い時は露出の表示が分かり難いカメラが多いがイルミネーターが点灯できるのも重宝した。


シャッターダイヤルがマウントのところにあるのがOM機の特長のひとつ。
慣れれば左手だけで絞りとシャッター速度の調整ができるので便利だ。

 OM-3を仕事での撮影で使ったのは3年程度。その間にニコンのカメラを少しづつ揃えていった。理由はサポートの悪さとシンクロ速度の遅さ。OM-3はシンクロ速度が1/60以下と当時は平均的な速度だったがニコンFM2Nは1/250と日中シンクロをする時にこの差は大きい。オリンパスもOM-4の改良型OM-4 Tiで全速同調できるスーパーFP発光を搭載したが専用ストロボでしかできないうえにバウンスができないなど実用としては限られた撮影にしか使えなかった。

 OM-3は売れなかったようで早々と製造終了。マニュアル露出しかできないのにOM-4と同じ価格では買う人は少ないだろう。他社がプログラム露出で撮れるなど自動化が進んできたカメラが発売している時に機械シャッターで高性能のスポット測光を備えているだけでは厳しい。
その後中古市場で人気が出てきたためか94年にチタンボディのOM-3Tiが発売された。追加された機能はTTLでストロボが使える程度でどのくらい売れたのか。色も軍艦部がグレーになってデザインを殺すことに。そのおかげでOM-3は修理できる期間が延びた。ほとんど話題にならなかったがフォーカシングスクリーンが改良されピント合わせがし易いということでOM-4に入れてみた。確かに以前のものよりピント合わせが良くなったがその時はOM-3にはビーティー社のインテンスクリーンというピント合わせのしやすいスクリーンを入れていたのでOM-3に入れることになるまで10年ぐらい先になったが今はそのスクリーンを使っていてピントの山はつかみやすい。

 オリンパスはAFカメラの販売に失敗し一眼レフ市場から撤退。しばらくはコンパクトカメラの発売のみという冬の時代が続いた。

 OM-3はその後は主にプライベートでの撮影に使う事になったが街中での撮影が多かった。小型のボディとレンズは首から下げて1日歩いても疲れを感じさせない。動くものを連写して撮るということもしないのでワインダーも付ける必要もなく1枚撮っては巻き上げるというシンプルな使い方だ。2002年にオーバーホールをした後にテスト撮影をすると露出の表示がおかしくなったりしたのでサービスセンターに持って行った。20分ほど待たされた回答は基盤をハンダづけ出来る人間がいないので基盤をきちんと固定できないというお粗末なものだった。最後通告を受けたが使用頻度も少なくなっていたからか数年は使えた。OM-3の売りであるスポット測光と露出計が使えなくなったのは残念だがシャッターは問題がないので単体の露出計を使って撮っている。

 デジタルカメラがメインになりフィルムもインフレ並みの高騰とますます使う機会が少なっているがこのカメラのフィーリングの良さだけでなくズイコーレンズの写りの良さが今も使い続けている理由かもしれない。フィルムの価格が昔と同じならOM一桁シリーズでまだ使ったことがないOM-1を購入してマニュアル機2台での撮影というのも良いかもしれないが今の価格では実現しないだろう。

撮影のお供としてセコニックのメーターも。街歩きの撮影ではニコンのFM2Nも使っていたがフィルム高騰のあおりと長年の仕事での使用でお疲れの部分もあり検査をするかという状況。                     


ここ数年は街歩きより花の撮影に使う事が多い。理由は90mmマクロが気に入っているため。F2と明るいしマクロ以外でも人物撮影でも絞りを開けて撮れる万能のレンズ。カメラの大きさに対してレンズが大きいが持ちにくくないのは撮影時に使うものの箇所の配置の良さか。ミラーレス一眼は小さくする事ばかり力を入れているが使う時にスムーズにいくように設計して欲しいものだ。


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