側転

側転が得意だった。地面に左手を付き、右手を伸ばして地面に付くように向け、足を蹴り上げ、頭が地面、足が空を向き、そのまま足が地面に戻ってくる。どこでも側転をしていたので、母からは「手が汚い!」とよく怒られたものだ。

側転のきれいさは、頭と足がまっすぐであるか、足が空に向かって伸びているかだと思っている。いつもきれいな側転を目指して楽しんでいた。幼稚園の時は、いつも「俺の側転を見てくれ!」と言わんばかりに、まわりとは比べられない、きれいな側転を見せつけていた。

「きれいな側転」は、どのように評価していたか?これは幼稚園のお遊戯場所にある大鏡を見ながら側転していたからだ。私の側転は、きれいに足が伸びていた。ただ頭と足がまっすぐであるかはわからない。実際に、私の側転でほめてもらった記憶がない。

でも、自分にとって側転はきれいなはずである。あれだけ楽しんで練習したので。ただ、大人になって側転をすると、体が重いのか、運動神経が鈍ったか、頭の重力センサーがおかしくなっているのか、側転をすると足はまっすぐにならず、1回の側転で頭がクラクラする。子どもに見せたいのに、見せられないのが残念だ。私の側転のきれいさは、今では私の頭の中でしか見られない。もしかしたら、母や弟の頭の中にも残っているかもしれない。

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