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2023/09/26 読書記録 人生が楽しくなる病気とは

赤瀬川原平著 『吾輩は病気である』

図書館で他の本も借りてくるが、つい先に読みたくなる赤瀬川原平。

冒頭には、つぎのように書かれている。

ほくはもう還暦である。(中略)ゴールはまだ先のようなので、この本もこれから新しくスタートである。(中略)僕の健康法を発言しておこう。

吾輩は病気である

この本が刊行されたのは2000年(平成12年)なので、昭和12年生まれの赤瀬川さんは63歳だったということになる。今の私より若いが、20年前のことなので、おおよそ同じような年齢といってもいいだろう。というわけで、共感しやすい内容であった。

仕事は必要だが楽しみも必要である。とはいえ、楽しみだけでは、楽しみが楽しみでなくなる。その例として、朝ビールを飲んで昼もビール、3時にもビールを飲んで、暇さえあればビールということになると、ビールなんて楽しくも何ともなくなる、と書かれている。

私はビールは飲まないが、ビール好きな人の気持ちはわかる。

仕事が終わって、風呂に入って、やれやれとビールを飲むのが楽しみだ。(中略)だから、どうも人間の生活というのは仕事があって、その合間にぽつぽつと楽しみが待っている、というほどよいバランスが健康のもとのようである

吾輩は病気である

なるほど、わかった!

年金でなんとか食べるには事欠かない毎日で、自由に使おうと思えばいくらでも自由になる時間があるのに、なんとなく楽しくないのは、これが理由だったのか。

老人世界でいちばん重要なのは趣味だ。(中略)老後の世界というのはとにかく生きるしかないわけで、その限られた時間を楽しむしかないのだ。(中略)自分の時間を食べていくのは自分である。(中略)趣味というのが日々の食事のようにあらわれてくる。(中略)重心を自分自身の価値観の方に移すことができるかどうか。老後の趣味の勝負のしどころである。

吾輩は病気である


赤瀬川さんは中古カメラが好きだ。

中古カメラのことで頭がいっぱいになり、それが病気みたいな、熱病みたいな症状を呈することは事実である。(中略)つまり健康な病気である。という言い方はおかしいが、人生が楽しくなる病気といえばいいのか。

吾輩は病気である

しかし、中古カメラは金持ちの趣味のように思える。年金で食べることには困らなくとも、私には趣味に使えるお金はさほどないがどうしたものだろう。

赤瀬川さんによれば、中古カメラ店のジャンク品を超安値で買った時の喜びは濃密であり、そのカメラから1枚でもピタリとキマった写真が出てくると自分は天才だと思えるそうだ。

凡人の私でも、その気持ちはわかる。

最後に、還暦を過ぎた高齢者だけでなく若者にも参考になるであろうあとがきを引用しておく。

病気なら病気を完全に防ごうとする。それが逆に弱点となって、ストレスから病気になるという皮肉がある。完全ということの罠みたいなもので、病気は多少しようがないんだと構えたところで、むしろ病気をするするとすり抜けて行ったりするものである。

吾輩は病気である

ところで、本の表紙になっている写真、何だかわかりますか?

当時の赤瀬川さん、そして今の私くらいの年齢でないとわからないかもしれませんね。

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