ヨーロッパで活動中のビッグバンドの話。WDR Bigband、BBC Bigband、SWR Big Band、メトロポールジャズオーケストラ、UMO Jazz Orchestra等々

はい、ビッグバンドファンです。今日はヨーロッパで活動中のビッグバンドについて取り上げてみたいと思います。

ヨーロッパのビッグバンドの特色

ビッグバンドひいてはジャズという音楽はアメリカで生まれたものなので、アメリカ発というものは多いのですが、しかしながらヨーロッパも負けてはいません。特徴は文化として根付いている、育てているという点かなと思います。ヨーロッパは元々クラシック音楽の発信地というところで、ミュージシャン育成はじめオーケストラの運営などでも企業や自治体が積極的に予算を付けたり活用していったりということがある、これがビッグバンドにおいても同様の形が見られるんですね。今から紹介するビッグバンドも放送局が抱えている、日本で言えばNHK交響楽団のビッグバンド版ですね、そういうビッグバンドもありますし、更には国営ビッグバンドなんていうのもあったりします。日本もね、こういう安定した基盤の上で活動出来る、そんなビッグバンドが出てきて欲しいなぁなんて思ったりしますが。

WDR BigBandについて

そういうわけでまず紹介しますのが、西部ドイツ放送「WDR」が運営するビッグバンド「WDR Bigband」です。結成経緯をWikipediaで確認しますと、起源は1946年8月ということでまだ第二次世界大戦の傷跡が生々しい頃なんですね。当時NWDRケルン、これは現在の西部ドイツ放送WDRの前身ですが、ここで活動していた「Kölner Rundfunk-Tanzorchester(ケルナーランドファンク-タンゾルチェスター)」これが大元であったということです。ただ、この段階では特にジャズやビッグバンドをやるというものではなく、演奏曲も指揮者を変えつつ形を変えながらダンス音楽等含め色々とやっていたそうです。これが1950年代終わりになると、いよいよジャズをやろうという話が出てくるわけですが、当時のケルナーランドファンク-タンゾルチェスターの編成はジャズビッグバンドをやるような編成ではなかったので改めて別に設立しようという話になったそうです。実はここからが複雑なのですが、WDRビッグバンドの起源には2つのバンドが関わってきます。一つはKurt Edelhagen(エーデルハーゲン)氏をリーダーとしたバンド、もう一つはWerner Müller(ヴェルナーミュラー)氏をリーダーとしたバンドです。まず設立の依頼を受けたのは前者のエーデルハーゲン氏で、バンド結成の為に1957年よりドイツに限らずヨーロッパ中からミュージシャンを集め結成したそうです。ただ、このバンドはあくまでリーダーのエーデルハーゲン氏のバンドということで、WDRとの契約もリーダーのエーデルハーゲン氏がWDRと毎年契約を更新するという形であったため決して今のような安定した活動基盤というわけでなく、ましてや「WDRのビッグバンド」と言えるほどの活動でもなかったとのことです。で、結局1972年にはエーデルハーゲン氏とWDRの契約が終了、エーデルハーゲン氏のバンドも解散となるのですが、その後エーデルハーゲン氏が1976年から1980年の間「WDRダンスオーケストラ」というオーケストラでレコーディングを行っていたことが次に繋がってきます。さてここでもう一人のヴェルナーミュラー氏ですが、こちらは元々ダンスやエンターテイメント系を得意とするオーケストラで指揮を振っていたという縁で、先程ご紹介したエーデルハーゲン氏がWDRからの依頼を受けて結成したビッグバンドと一時期並行で活動していたそうです。その後、ヴェルナーミュラー氏は自身のバンドに所属しているミュージシャンとWDRの弦楽セクションのミュージシャンを組み合わせた「Great WDREntertainmentOrchestra」を結成、更にこれがエーデルハーゲン氏が1976年から1980年の間に指揮を振っていた「WDRダンスオーケストラ」と合流、「WDRビッグバンド」が誕生と相成ったそうです。その後はバンドリーダーを変えつつ、2016年夏以降はボブ・ミンツァー氏がリーダーを務める現在世界でも屈指の名門ビッグバンドでございます。

WDR BigBandの特徴:様々なミュージシャンと共演

と、結成経緯はこんな感じですが、バンドの特徴はどんなところにあるか。概ね4つあると思います。

1つ目は様々なミュージシャンとの共演を重ねているという点。これはプレイヤーだけでなく作曲家等含め様々な形で共演をしており、共演するミュージシャンによって全く違うスタイルの演奏を聞かせてくれます。なので、聞いてて飽きが来ない、毎回どんな演奏をしてくるんだろうか、どういうアレンジをするのか、ドキドキしながら聞ける、これがWDR BigBandの魅力の1つかと思います。

WDR BigBandの特徴:演奏技量の幅が半端なく広い

2つ目は、こうした異なるスタイルのミュージシャンとの共演を支える卓越した演奏技量です。当然ただ共演するというだけでは音楽的に単に中途半端になるだけなので、当然やるからにはそうした様々な音楽に精通している必要があるわけですが、これが実に見事なんです。例えば2007年、ブレッカーブラザーズと共演してグラミー賞も獲得した「Some Skunk Funk」、これ聴けば分かりますがフロントのブレッカー兄弟と後ろのWDRビッグバンドの息の合い方が尋常じゃないです。まさに「ブレッカーブラザーズビッグバンド」といえるぐらいに演奏がシンクロし、グルーヴィーな演奏を展開するんですね。

ところが今度は翌年2008年になると、なんと「The World Of Duke Ellington」というデュークエリントンの楽曲をフィーチャリングしたアルバムを出すんです。もうサムスカとは真逆ですよ、真逆。ところがこれがまた見事。A列車で行こう含めスウィンギン且つエリントンらしいちょっと粋な部分まで見事に演奏してしまう。これだけ芸幅の広いビッグバンド、多分世界でもそうないんじゃないかと思うんですが、どうですかね?

WDR BigBandの特徴:YouTubeチャンネルがスゴイ

そして3つ目、これは配信やアプリなど今時音楽事情にもきっちり対応しているという点です。YouTubeチャンネルも2016年1月に開設し、現在登録者数3万2000人、総再生回数は900万回、他FacebookページもInstagramページも立ち上げ、Twitterもやっているというね。しかもYouTubeの動画、演奏の動画が殆どなのですが何とフルで結構乗っかってるんですよ。おいおい、いいの?タダだよ?大丈夫?って聞いてるこちらが思わず投げ銭したくなるぐらい、なんか大盤振る舞いなんです。しかもしかも動画見て頂くと分かりますが、編集もきっちりされてます。これだけ楽曲のバリエーションも豊富で演奏も確かですから、多分ですがジャズとかビッグバンド関係無しに音楽好きであれば何らかいいなと思うんじゃないかな、うん。なので是非ね、今在宅でお仕事されている方も多いと思うんですが、是非WDRBigBandのYouTubeチャンネルね、BGMのお供に加えてみてください。ほんとにいいですから。

WDR BigBandの特徴:サウンドの軸がしっかりある

そして、最後4つ目、これだけ芸風が広いんだけどやっぱりWDRサウンドっていうのがあるんですよね。サウンドに軸がある感じであったり、アレンジや演奏もおしゃれなんですけど、これがまたニューヨークとか西海岸系のビッグバンドが醸し出すおしゃれとは違ってね、なんていうか小粋さというか知的さというか前面に出てこないんですよ、これが。基本ミュージシャンとの共演が多いのでそうならざる得ないというのもあると思いますが、これがねまたよくて、サウンドの随所にそういうところが感じられる、これが憎らしくてハマるという。まぁ、これはやっぱりあとは実際に聞いてもらうのが一番です。先程紹介した通りYouTubeチャンネルにもうこんなに上げちゃってていいの?っていうくらい大盤振る舞いに動画を上げてくれてますので、聞いちゃってください!!

メトロポールジャズオーケストラについて

さてWDRBigBandについてだいぶ熱く語ってしまいましたが、続いて取り上げるヨーロッパのビッグバンドは・・・メトロポールジャズオーケストラです!!こちらはオランダの楽団で、Wikipediaによるとジャズのビッグバンドと交響楽団を組み合わせた総勢52人の音楽家により構成される世界で最も規模の大きい合奏団です。結成経緯ですが、こちらも1945年第二次世界大戦後にオランダ公共放送の要請を受けたドルフ・ヴァン・デル・リンデン氏が結成、以降同放送曲の援助を受けながら運営しているということで、今やオランダを代表するオーケストラとなっています。2005年からはVince Mendoza氏が首席指揮者となり、ここから一気に知名度含めて国際的な立ち位置を引き上げ、2011年にはグラミー賞を受賞するに至りました。2013年から現在まではジュレス・バックレイ氏が首席指揮者となっています。普段の活動としてはTV、ラジオ、さらには各地のジャズフェスティバルへの出演等を通じて定期的に演奏するほか、オランダの映画やテレビ作品はかなりこのオーケストラに演奏を依頼するそうです。またこのオーケストラもWDRBigBand同様に他のアーティストとの共演、あるいは楽曲を取り上げることが多いです。

メトロポールジャズオーケストラのサウンドの特徴

この楽団の特徴ですが、これは何と言っても独特なリズムにあると言えます。動画も上がっているのでいくつか見て頂くと分かりますが、絵的にはビッグバンドというよりかなりクラシックのオーケストラに近い印象を持たれると思います。先程紹介したWDR BigBandと比べると顕著に分かると思います。なので、指揮者がクラシックと同様中央の指揮台に立ち指揮を振り、指揮者の周囲には弦楽器がいるというスタイル、編成はステージによっても変わりますが、特にクラシカルなホールでの演奏ではビッグバンドの編成がかなり後ろになるんですね。で、ここまで聞くと「なんだ、要はクラシックなオーケストラがちょっとビッグバンドっぽいことやってるってだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、いやいやそんな半端なことだったらここで紹介しません。聞いて頂くと分かるんですが、これが不思議ときっちりジャズというかビッグバンドのサウンドになってるんですよ。ほんと不思議なんですが。特にVince Mendoza氏が首席指揮者になってからはかなり洗練されて、曲によって主役を変えたり、弦楽の良いところとビッグバンドの良いところを上手く引っ張り出してくるんですね。で、この融合の肝がリズムの作り方なわけです。いわゆるドラム・ベース・ピアノを中心にしたジャズではオーソドックスなリズムの作り方も勿論するのですが、これをティンパニなどクラシックなオーケストラでのパーカッションを前面に出すような作り方をするときもあれば、指揮と弦楽を中心にしたリズムの作り方をするところもあり、これらを場面に応じて上手く組合せてきます。でこの組み合わせの妙というのはそのままこの楽団の色にもなってきて、例えばアドリブソロ部分で、ソリストが盛り上がってきたところに弦楽隊によるバッキングで煽ったり、逆に弦楽器がメロディを奏でている後ろから管楽器によるいかにもビッグバンドな打ち込みが入ってきたり、こういう他のオーソドックスなビッグバンドではなかなか出来ない色の出し方を随所に入れてきます。なので、例えばスタンダードな曲をスタンダードなアレンジで普通に演奏しても特徴が出てくるので、まさに世界でも類のない独自のサウンドを築き上げているといえます。

狭間美帆さんについて

ちなみにこの弦楽とビッグバンドという組み合わせ、最近どっかで聞いたことないですか?そう、狭間美帆さんのm_unitです!!このオーケストラを意識したわけではないのでしょうけど、結果的に共鳴するところがあったんでしょうね、なんと昨年8月にこの狭間美帆さん、メトロポールジャズオーケストラの客演常任指揮者に就任しました!!更にヴィンスめんでゅーさ氏とメンでゅーさ氏と同じく過去に同楽団の音楽監督を務めたジュールス・バックリーが名誉常任指揮者となり、3人による新たな体制が構築されることとなったそうです。スゴイ!!狭間美帆さんのこともこのチャンネルでどっかで必ず取り上げますんで、是非見てくださいね。

というわけで、がっつり紹介してたら結局2つになってしまいました。当然まだまだヨーロッパのビッグバンドありますからね、とても1本の動画で収まる話ではないのでね、少しずつ紹介していきたいと思います。興味お持ちいただけましたらチャンネル登録よろしくお願いします。以上、ビッグバンドファンでした!!ばいばい

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