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エッセイ387. 東京ヴォードヴィルショー50周年記念 「その場しのぎの男たち」

東京ヴォードヴィルショーの50周年ということで、華やかに 贈り物や花の並ぶロビー。新宿は紀伊國屋サザンシアターです。
7月21日の初日からまだ4日目の24日に行った時は、ロビーに強い百合の花の香りが漂っていました。観客層は中高年とそれ以上が主です。最初からついてきたファンにとっても、はや50年です。

7月30日に東京での公演が終わりましたので、ネタバレもご容赦いただけるでしょうか。

学校の日本歴史ではさらっと流してしまう事件ですが、物語はロシアの皇太子ニコライが日本人の警察官に切り付けられた暗殺未遂事件(大津事件)直後から始まります。

物語は全て、関係各大臣が集まって事件収拾に苦慮する、ホテルの一室のみで進行します。
私は「らんまん」にはまっていましたので、この部屋が、
【結婚前の寿恵子が鹿鳴館の舞踏会のために練習させられる洋館】
と似ているので、嬉しかったです。

明治の元勲の多くは土佐藩・薩摩藩・長州藩出身で、倒幕前後以来のべったべたな人間関係です。

ごわす、で、じゃっどん! で、 知りもうさん!    の世界。
(懐かしい、らんまんの高藤さんと同じ)
楽しい楽しい!

やっと総理大臣になったのに、
たった5日でこんなことが起きたと嘆く、総理大臣・松方正義。
内務大臣は、せごどんの弟の西郷従道。
通信大臣の後藤象二郎と、
あとから駆けつける陸奥宗光ぐらいは、なんか社会の時間に名前聞いたことあるなぁぐらい。で、以下、外務大臣の青木周蔵ぐらいになるともうわからない。

そしてあとからやってくる大御所の伊藤博文。
伊藤四郎の怪演がすごいです。
今回は、伊藤四郎と、陸奥宗光役の佐藤B作さんが見たくて来たのですが(チケットが最後の一枚だった)、期待通り、いや以上でした。
ピンマイク越しでも声が小さく、聞き取りにくかったのがちょっと残念でしたが、動きも少なく、終始ぼやきというか、つぶやきなのですが、これで日本の政治を動かしてきて、人に逆らわせなかったんだよなぁ、と、実物の伊藤博文を見ているような錯覚を起こさせてくれます。

「一大事でございます!」と、知らせが飛び込んでくるたびに、しょうもない知恵を絞って考えた解決策が、いちいち潰される面白さ、可笑しさ。

今ではでんぐり返りが技となった、引退した くの一やら、とんちんかんな巡査の妻やら、数は少ないが女性陣もいい味でした。

気のいい人たちがどんどん追い詰められていく「パニックもの」は、三谷幸喜さんの得意なところだと思うのですが、いや本当に、面白かった。周り中が笑うので、自分も遠慮しなくて大笑いできて、鎖骨折って暑くて引きこもっていたブルーな日々が、一気に吹っ飛びました。

佐藤B作さんが74、伊藤四郎さんがなんと86歳ですって。

本当に楽しかったです。


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