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エッセイ485.矢部太郎展に行きました。

今年1月から始まった大河ドラマ「光る君へ」の大ファンで、
一回見終わるごとにチャットして感動を分かち合っている友人が、
このドラマで、従者乙丸役で活躍中の矢部太郎さんの展覧会、
「ふたり 矢部太郎展」
のことを教えてくれました。
私は芸人さん・俳優さんとしての矢部太郎さんには詳しくないのですが、
彼のコミック、「大家さんと僕」の大ファンです。
ドラマ「光る君へ」では、すぐに駆け出す姫様の後を、市女笠を抱えて一生懸命走って追いかける従者、乙丸がとても好きです。

すぐにしょっ引かれるまひろお姫様のお供をしていて、殴られたり縛られたり。ときに、置き去りにされて、
「ひどいじゃないですか〜姫様〜」とか、
まひろをかっさらってパカッパカッと馬で走っていく道長の後を走って追いかけたり、道長におそれ多くも、「いいかげんにしてくださいませ」と意見したり。
(当日矢部さんが話してくださったのですが、走るシーンは、あれはいろんな角度から何度も撮るし、ここで走ってるところ、あそこの場面で走っているところ、と、1日に何回も走らされることがあるのだそうです)


この展覧会が始まって初の土曜日である昨日、4月27日にEチケットを購入の上、立川のPLAYミュージアムに行ってきました。家からちょっと遠いですが、「エルマーの冒険展」などの良い展覧会もやってくれる、素敵な美術館です。
「ふたり 矢部太郎展」は、7月まで会期はあるのですが、この日、ライブで矢部太郎さんに会えると言うのでわくわくしながら向かったのです。

展示を見終わる出口近くにライブ会場が用意されていて、私は開始の1時よりだいぶ前から立って待っていました。
一番前に張り付こうと思って。

1時、サマースーツの矢部さんが小型のスーツケースを手に入ってきました。
他の人がじわじわと矢部さんに近寄っていくので、私も一緒に一歩一歩間合いを詰めて行きました。


1時から4時まで矢部さんが何かやってくださると案内にあったので、その3時間の間、ときどき出ていらして何かしてくれるのだと思っていましたら、3時間ぶっ通しでした!
矢部さんありがとう😭

最初の1時間が過ぎたときに10分、次の1時間のあとで10分お休みしただけで、ずっとそのお仕事ぶりを見せてくれたのです。
漫画大好きな私は、もう落涙ものです。

開始、1時間目。13〜14時ぐらい。
「楽屋のトナくん」2巻の表紙絵を、下書きから彩色のできた完成まで見せてくれました。
ほとんど絶え間なく、
「この弦が入らないな、どうしましょう」
「3本でいいですかね」
など、見ている私たちと会話しながらです。
(矢部さんは最近チェロを習っているそうで、チェロを弾くトナくんと、それを聞いてないで水を飲んでいるハリモグラのハリー君の絵です)



作画はiPadとApplePencil, アプリはクリスタだそうです。
私もダウンロードしたけど、全然使いこなせないやつです。

あの温かい感じの字や絵の線はこんなふうに。
こんなに何度も描き直すんだ・・など、1時間の間、作品ができていく過程をたっぷり見ることができました。

「僕はどこから描き始めると思いますか?」と言われたので、
「顔の、輪郭ですか?」
と言ってみたら、(自分もそうなので)

「そうです。では、どこから描き始めるでしょうか」
「左のほっぺ・ですか?」
「残念、ここです」
・・頭のてっぺんあたりでした。
わ、乙丸さんと、いや矢部さんと会話をしてしまいました。
光栄です。




2時間目、14時〜15時ぐらい。
ネーム作成の最初から、見せてくれました。
題材は、この展覧会のあとに始まるオバケについての展覧会で、作品を依頼されていて(お化け研究員にも任命されているそうです)、
「それを今日は描いてみましょう」
というものでした。
遥か昔、漫画家になりたかった私には、ネーム作りはとても興味があります。
今は作画アプリの機能で、入力した言葉をコマの中に入れていけるそうです。

矢部さんの口癖は、できたのを見て「あ、いいですね」です。
嬉しそうに、「あ、いいですね」って。
私もつられて、笑わないではいられませんでした。

この1時間もやはり始終、ぎっしりと詰めかけた私たちファンに、
「四谷っていう地名だけで怖くないですか」
「お岩さんを こういうお化けにしちゃおうかな」
「最後は、現地解散てどうですか、僕とお岩さん」
など話しかけながら、作業を続けます。

想起されているらしいことを、上を見て目を閉じて、
「う〜ん・・どうしようかな。どうしましょう」
と考え考え、入力していきます。
刻々出来上がるネームと、コマの中に描き込まれるラフな線をみていると、次の作品の生まれる現場にいるんだなぁ、と、わくわくしました。

3時間目、15時〜16時ぐらい。
アクリル絵の具による「大家さんと僕」テーマの作画。
小さなキャンバスに和紙を貼って描かれるとのこと。
和紙を貼っているのがお好きなんだそうです。
オーガナイザーの女性と、
「何を描きましょうかね。海はまだですもんね」
「じゃ、海で・・」
という会話があり、描いている手元をiPadからスクリーンに飛ばして大写しにしてくれます。私は最前列だったので、実際に矢部さんが描かれているのと、スクリーンと、両方を見ることができました。
大家さんは、トレードマークの大きなグレーの頭を真上から見たところ。

この展覧会では、大屋さんテーマの描き下ろしの絵がたくさん展示されていて、この絵も乾いたらそこに加わるそうです。


「大家さんと僕」では、お家とその周辺が主な世界でしたが、この明るい絵の中で、大家さんと矢部さんは自由にいろいろな景色の中で遊んでいます。


新宿伊勢丹を見るときゅんとする私には、夢のような3時間でした。


出来上がった絵はとても綺麗でした。



数種類の白と、青のアクリル絵の具、あとでオレンジで海の深い濁りを表していて、最後にグレーで大家さん。
細かく、また大胆に絵筆を動かす矢部さん。
それが悠々としていて、とても楽しそうです。
絵が上手な人って・・・こういう感じなんだなぁと思いました。

今日は、持ってくるつもりだった矢部さんの本を玄関に置いてきてしまったので、ミュージアムショップで「ぼくのお父さん」を買い、サインをしていただく列に並びました。

私の番です。
うわ、胸がドキドキする。こんなの、30年ぶりですけど。

矢部さんが
「長時間お待たせしちゃってすみません」
とおっしゃって、絵の事が口から出て来ず、
「乙丸さんも大好きです。
遠くに小さく写っているときでも、
まひろを見守って心配してたり、笑ってたりしますよね」
と言ったら、
「じゃ、乙丸っぽいのを描きますね」
と、描いてくださったのがこれです。
光栄です。

本当に来てよかったです。
この先、矢部さんのどの作品を読んでもこの日のことを忘れないでしょう。


イチオシはやはり、初めて矢部さんに出会った、大家さんかなぁ・・


また会いに行きます!

そういえば矢部さん、右袖についちゃった白いアクリル絵の具。

落ちましたか?






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