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エッセイ274.素晴らしいお医者さん(2)

素晴らしいお医者さんというお話です。
ちょっと前に、何につけても痛がりの私が、次を楽しみにするほどの素晴らしい歯医者さんに出会ったことを書きました。

今回は、中国鍼とカッピングです。
これは、今年7月に一人で日本に帰ってくる日の朝、ずっと世話をかけていた義弟にそんなことを頼んではいけないような気がして、自分でスーツケースの重さを測ろうとして、背中をやってしまいました、そこから始まった話です。

先に帰った家族の分まで、制限ギリギリの30キロまで入っていそうなスーツケースの重さを、ぶら下げるデジタル計で測ろうとしたのです。
我ながら無茶です。

私は黙っていても動いていても、動作がもたついていてどんくさく、哀れを誘うらしく、キャリーケースを引っ張って友達のいる方へ向かって歩いて行っただけで、友達が向こうから駆けてきて、
「ほらほらまったく〜、またなにやってんの、持ってやるよ!」
と言われたことがあるぐらいです。

普通は、スーツケースの重さを測りたいのなら、それを横にして、その取手に秤を引っ掛けて持ち上げるもの。そうすれば膝をぐっと入れて、腰や背中の負担を分散できるのに、何を思ったか、背の低い私が、縦方向に立っていて腰ぐらいの高さに来ていたスーツケースの取手に秤を引っ掛け、腕だけで持ち上げようとしました。私はしばらくフラフラし、デジタル表示がパラパラ動いてなかなか決まらないのでつい、「反って」しまった。・・その瞬間に、背中の真ん中で「ぼきっ」という音がしました。その後の、乗り継ぎながらの涙の帰国については、他で散々愚痴ったので遠慮するとして、帰ってからすぐ、寝ても眠れない、起きていても眠れないというのが始まりました。
で、たまたま帰国していた友達が行っている、この鍼と漢方とカッピングの治療院に通うことになったのです。

(ところで、「経絡・経穴の有無」については、あると言い、ないと言い、論争が続いているそうです。私は昔、体調不良と、入院しても治らなかった顔面神経麻痺が、鍼で一度で治ったため、「ある」派です。けれども、なぜ効くのかはわかりませんから、自販機でジュースが買えるようになったお猿と同じレベル。ただただ、そのうち治るであろうと思って、通い続けているのです)

さて、「ぼき! 」からもう、今日でちょうど2ヶ月です。
日常生活には差し支えなくなり、眠れるのは、週に一回通っている鍼とカッピングのおかげかなと思っているわけです。

私の先生は中国の方です。
中国鍼は、日本のそれより太くて痛いと言います。
両方経験した私なので言えますが、本当です。
先生は、その太めの鍼を、全くためらわずに次々打ってくれます。
痛い! と言いたいですが、次々打ってきますので言っている隙がなく、本数を数えて必死に耐えます。
打ち終わってから20分光を当て、それから一旦鍼を全部取ります。その次に首から足首までさまざまな大きさのガラスの玉を、バーナーで中を温めているのでしょうか(見えないのでわからない)、ぽん!ぽん!と据えていき、そうすると据えられたところの、中の空気に引っ張られる痛辛心地良い・・・あの感じは、癖になります。

これは20分も待ちません、数分で、かっぽんかっぽんと言わせながら取ります。
そのあと先生が「叩きます」と言うと、叩かれることになってしまいます。覚悟を決めるしかありません。
叩くとは、遠回しな繊細な表現なのであって、書いていいのかな、えー・・皮膚に極小の穴の開くように、そういう道具で叩いていくのです。

叩いては玉をぽん!と据えていってくださり、そこで「瘀血おけつ」が、あれば、吸い出されると言うわけです。

初めてそれをすると聞いた時、昔の『ひるに血を吸わせる治療」とか、「昔の床屋さんは瀉血しゃけつという、腕を切って血をとる治療をしていた」というようなことを思い出しました。
私の娘が渡航前に、トラックがいきなり開けたドアに激突してむち打ち症となり、ぼーっとしていましたので、初回、一緒に連れて行きました。しかし彼女は鍼、カップの数もずっと少なく、「叩かれた」のは、アトピーの出ている肘の内側と膝の裏だけだったそうです。私のように、通い続けても鍼とカップが減らず、また、瘀血については、「おおっ」というほど、出るのは、かなり身体が悪いようです。

施術後、ちゃんと結果を見せてくれます。
「先生、これはどの部分ですか?」と、コットンを指して訊くと、

「これは左の膝ね。悪いね。だからこんなに出るね」
「こっちは痛い背中の右のここから出たね.悪いからこんなに出るね」

と、即答されます。一度などは、「あ、いっぱい出た」と先生が呟き、他のところにいた鍼医のみなさんが見に入っていらして、それぞれ、「うわ」と言っておられました。
しかしなんで外から見ただけで左膝が悪いとわかるのだろう。しかも、通い始めて、左膝と、長年悩んだ大転子だいてんし痛が、いつのまにか治っていたのでした。先生すごいありがとう。

背中側が終わりますと、最後に仰向けになって、鍼を打っていただきます。前面の、全面です。顔にも掌にも。なかなか痛さに慣れません。こちらもまた20分待ち、それで終了です。

前回は、二人の先生が両側に立って次々と鍼を打ってくれながら、いろいろ話が弾みました。住んでいる場所とか、奇妙な地名の謂れとか、私の仕事の話とか・・。先生たちにとり、患者たちは裏も表も文字通り知り尽くし、見慣れているので、お話も普通にどんどん振ってくれるのですが、こちらは恥ずかしい。タオルで要所要所を隠してくださってはいても、一人だけ私はこんな姿でまな板の上の鯉。しかも、耳まで含めて顔だけで30本は打っていますので、先生が何か面白いことをおっしゃって、

「あっ、本当ですね、あははは」

と言ったら、顔のあちこちと、足首までもビンビン響いて痛かったです。

そうそう、この前初めて、「足首に打たれてすごく痛かった」ということがあったのですが、思わず「あたたた!」と言ってしまったら、先生に、

これはイライラしていると特に痛い場所ね

と教えていただきました。そういえば夫婦喧嘩してから行ったのでした。
痛いの嫌だから、もう仲良くしときます。


素晴らしい鍼とカッピングのクリニックのご報告でした。

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