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エッセイ251. 「東京暗黒街ー竹の家」①李香蘭が素晴らしい

邦題「東京暗黒街ー竹の家」は、マニア必見の傑作というか、奇作です。
こういう作品を堂々と作っていた当時を思ったり、
気をつけていても爆笑し、腰が痛くなったり、忙しかったです。
2回観ました。

この映画、「House of Bamboo」は、1955年度制作のアメリカ映画です。

昔はよく、「日本の家って、木と紙でできているんですってNE?」
みたいなことを書かれているのを読み、「建具はね?」と、心の中で言い返したものですが、この映画の作られた、今から67年ぐらい前だと、そうか。
・・そうか日本の家は、竹の家という感じだったんですね。

私は、この映画に出演を承知した、早川雪洲氏と、シャーリー・ヤマグチ嬢を尊敬します。
勇気がありました。

二人ともアメリカで長く活躍した俳優さんです。
早川氏は、いくら若くして渡米したからといって(21歳だったそうです)
映画の中で話す日本語が不自由すぎるので、英語をすごく頑張り、血中アメリカ人濃度が高くなったのかもしれません。

ヤマグチ嬢は、映画の脚本を読んだり、撮影が始まったら、
あ、ちが・・・・いやこれは、あまりにも・・
と、困ったかもしれませんが、日米友好のためとか、日本に興味を持っていただきたいなどの気持ちがあって、熱演されたのかもしれません。

私はこの映画で、すっかりヤマグチ嬢のファンになってしまいましたが、
この方、満州で生まれ育ち、父親の親友の娘分となって「李香蘭りこうらん」と名乗った歌手・女優さんであると聞けば、ご存知の方も多いでしょう。

李香蘭、山口淑子城は、中国人スターとして戦時中に活躍して大人気だったため、終戦時は裏切り者の中国人(漢奸)として処刑されそうになりました。
その後、アメリカに渡ってシャーリー・ヤマグチとして歌に映画に大活躍されました。
劇団四季ミュージカル「李香蘭」も素晴らしかった。
なにしろ絶世の美女です。

本物のほうが、ずっと綺麗、という稀な例でしょうか。

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私が知っているのは、山口淑子さんとしてです。
日本に戻ってずっと経ってから出演していた、「3時のあなた」のホステス役でしたが、当時は、話し方のすごく上品な、日本人離れした美貌のおばさま、と思っていました。

のちに政治の道に進まれたのにはびっくりしましたが、この「竹の家」の山口淑子さんは、とにかく英語がとても自然。ネイティブに近い。
よく、日本のドラマに「明らかにローマ字表記にしてもらった脚本を丸暗記した」という台詞回しをする外国人の方が出てきますが、シャーリー・ヤマグチ嬢は全然違います。感情がこもっています。本当に素晴らしい。

残念ながらこの映画は今は、hulu, Netflixその他では観ることができません。

我が家では、夫がアメリカの「クライテリアン・チャンネル」というのに契約していて、聞いたこともない大昔の洋画・邦画を見ていて、「竹の家」を発見。

おお! 横浜と東京でロケしたんだって。
昔の横浜、東京を見てみましょう。
絶対面白いから。
と誘ってくれたので、観ることができました。

本当にいろいろな意味でとても面白かったので、
オールド映画ファンのみなさんのために、ご紹介しようと思います。

【ストーリー】
富士吉田です。
富士山の前を蒸気機関車がシュッポッポー! と走っていきます。

ウィキペディアによると、このシーンのために、3日間公共機関を貸切にしたことと、当時すでにその路線は電化されていたのに、わざわざ蒸気機関車を他から持ってきて撮影したのに対し一部の日本人から非難の声があがったとのことです。

悪党たちが、この電車に積まれたマシンガンを奪おうと言うのです。
牛を引いて線路に入り込んでわざと列車を停車させ、警護の警官らを射殺し、ブツを奪って逃走します。
停まったままの電車に不審を覚えた農婦が近づいて死体を発見し、
「きゃ〜〜〜!」
と叫ぶところで、タイトルロールが流れます。


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右下ですが、なぜか農民が、羊を連れて歩いて行きます。

次のシーンはアメリカです。撃たれて重傷を負った男が、手術台の上で今や息絶えんとしているところへ、刑事が写真を出して見せ、
「この女は誰だ!」と詰め寄ります。
「彼女に何もするな」と言いながらこの男、
「これは俺のワイフ、名前は マリコ・名古屋・・・」
と言い終えてから(言うなよ)、苦しそうに「うっ」と言って、死にます。

この人は犯罪に関わった男で、日本人女性マリコ・名古屋と結婚したものの、悪事の果てに警察に射殺されたらしいのです。


シーンは東京に飛びます。
左上、今は山下公園に係留されて余生を送っている「氷川丸」ではないでしょうか。

「ウエルカムトーキョー」とあるのはどこの跨線橋か。西日暮里か。
下2枚、築地と、松竹の浅草国際劇場ですね。

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現在の氷川丸の勇姿。

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映画でも、シアトルから着いた船舶と言っていますので、実際に日本ーシアトル間を長年往復した「氷川丸」ではないでしょうか。
(山下公園に行かれる方は、是非、氷川丸を見学してください。
古き良き船旅の様子を知ることができます。


さて、日本にやってきた謎の男エディ。浅草国際劇場にやってきます。
どうやら、松竹の踊り子をしていたマリコ・名古屋を探しているようです。
映画の中で、部屋の中に「松竹・春の踊り」のポスターがたくさん貼ってあります。あと、普通の家の居間や、お風呂場の壁に、なぜか「月桂冠」の日本髪の女性のポスター他、女性の絵姿が必ずのように貼ってあるのにも注目です。

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屋上でリハーサルをしているのは、「春興鏡獅子しゅんきょうかがみじし」、お正月あたりによく上演されます。見ていると、違う舞踊の舞踊のキャラがどんどん出てくるので、松竹の出血大サービスでしょう。

右下、エディがリハーサル街の踊り子たちに、
「だれか英語を喋れないのか?」と英語で聞きます。
(この人、日本に送り込まれるにしては、一言も日本語勉強してないんです)
すると、親切な白塗りの女性が「はい」と答える。

エディが「ハァイ!」と言うと彼女は、綺麗な英語で、
Hi means "yes " in Japanese.  (はい、は、日本語のイエスですよ?)
とすかさず言うので、爆笑しました。

この映画では、純ジャパなのに、英語または中国語アクセントで、不思議な日本語を、単調な棒読みで不自由に喋る警察関係者、街の人々がいっぱい出てきます。

占領軍は1952年には日本を去りましたが、1955年制作のこの映画では、普通に米兵がそこらへんに座ったり、女性をからかったりしています。舞台設定が終戦直後・・のようにも思えないのですがなぜに。
また、日本の警察署に、普通にアメリカ人の刑事が歩き回っている。
出向していたのだろうか。

出てくる日本人全員は、ほぼ敬語を使います。
親が子供に話すときも「ですます調」で、「はいっ、そうです」と言ったりします。

一方で官憲は、「おいこら!」「おい山田!」など横柄な口調ですので、そういうのは在米日本人移民の方からアドバイスを得たのかもしれません。


こう言う英語を、誤訳したんだなぁ、という、変な日本語もいっぱいです。
例えば、ラストの方で、「屋上から人を避難させろ」と言うことなのでしょうが、「屋根を開けろ! 屋根を開けろ!」と言っていたり。そういうのが随所にあります。

それでいて、いきなり流暢な英語を話す茶店のおじさんや、
子守をしているおばあさんが出てきたりします。

日本人は何かというと、「あ、そう」「ああ、そうですか」と言います。
これは、昭和天皇の口癖が、海外でも有名だったのかもしれません。


書いている私だけ楽しいみたいな感じになってきていますが、
すみません、あと2回ぐらい続きそうです。


こちらを読まれて、満足されましたら、明日以降は、スルーしてくださいませ。



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