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橋本愛を讃える

2014年8月31日をもって新橋ロマン劇場閉館。あれから1か月近く経ってしまったが、この先わたしはどこで日活ロマンポルノをみればよいのだろう……。最後の3日間はロマンポルノの名作を連続上映していたので、おぼえがきとして記しておく。ちなみに、それぞれ恋の日、暴の日、秘の日とテーマが設けられている。

8/29(金)
『さすらいの恋人 眩暈〈めまい〉』(監督:小沼勝、1978年)
『恋人たちは濡れた』(監督:神代辰巳、1973年)
『恋の狩人 ラブ・ハンター』(監督:山口清一郎、1972年)

8/30(土)
『暴行儀式』(監督:根岸吉太郎、1980年)
『人妻集団暴行致死事件』(監督:田中登、1978年)
『マル秘ハネムーン暴行列車』(監督:長谷部安春、1977年)

8/31(日)
『マル秘女郎市場』(監督:曽根中生、1972年)
『マル秘色情めす市場』(監督:田中登、1974年)
『マル秘女郎責め地獄』(監督:田中登、1973年)

混みそうだなあと思っていたから、行こうかどうしようか迷っていたのだけれど、結局、土曜と日曜に足を運んで、それぞれ2本ずつ鑑賞。根岸吉太郎の『暴行儀式』には廃墟と化したポルノ映画館が出てきた。これは自らの姿と重ね合わせているのだろうなあ。こんなふうに新橋ロマンはちょっとした遊び心を感じさせるセレクトが素晴らしかったのです。

おどろいたのが橋本愛が来ていたこと。前々から新橋ロマンに通っているらしいという噂は耳にしていたのだが、まさか同じ時間、同じ空間でロマンポルノをみることになるとは。その日わたしは『桐島、部活やめるってよ』の主人公・前田君になりました。

ロマンポルノへの思いを、橋本さん自身が語っている。インスタグラムから全文を転記する。
http://instagram.com/p/sbzBpQvJMT/

「18になったときロマンポルノやピンク映画を観狂ってた時期があって、 高校卒業してからだからたったの4.5か月ですが、新橋ロマン劇場に通い続けてました。 魅力的なラインナップにいつも救われていて、はっきり言って青春でした。 抜群に好きな女優さんは宮下順子さんと芹明香さんです。 それから隣の新橋文化劇場にも通うようになり、ぽつ、ぽつと座っているおじさま方と一緒に映画を観るのが大好きでした。 それが先日閉館したんです。 ラスト3日間の特集は這ってでも行く気だったので、無事見届けられて良かったです。 生活から文化もロマンも無くなったらもうテレビのニュースしか残らないよ、守っていかなきゃ〜」

ここで注目したいのは、ちゃんと「ロマンポルノやピンク映画」と区別しているところ。ええ、ロマンポルノとピンク映画は違うのですよ。ロマンポルノは日活が製作した成人映画で、ピンク映画は「五社の配給網に乗らない成人(劇)映画」のこと。……と知ったふうなことを書いたけど、後者の定義は二階堂卓也の労作『ピンク映画史〜欲望のむきだし』(彩流社、2014年)から引きました。

橋本さんは「魅力的なラインナップにいつも救われていて」とも書いている。2013年あたりから、ロマンポルノやピンク映画の3本立てではあるけれども、映画好きの心を刺激するような番組編成にシフトしていたから、この「魅力的なラインナップ」というのは劇場支配人の心意気がちゃんと伝わっていたということですね。伝わるといっても、わたしのようなぼんくら中年に伝わるのは、まあ想定内でしょうが、10代の女性に伝わったというのはすごいことですよ。というより、橋本愛のセンスの良さに感動してしまう。

センスが良いといえば「抜群に好きな女優さんは宮下順子さんと芹明香さんです」。宮下順子と芹明香って……。こんなことは熱心にロマンポルノをみていないと絶対に言えない。ちなみに橋本さんはラピュタ阿佐ヶ谷での特集上映「わたしたちの芹明香」にも足を運んでいたそうである。新橋ロマンに通っていたことを週刊新潮から奇行呼ばわりされていた橋本さんだが、そもそも劇場で映画をみることが好きらしく、文芸座や新宿ミラノに足を運んでいる様子も、やはりインスタグラムにアップされていた。いやはや本当に素敵な女優さんです。

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