オカンと外泊 2013初夏

86歳の母親が抜歯のため口腔外科に3泊4日の入院をした。

痴呆が進んでるとはいえ、ベッドまわりや直接本人に取り付ける
センサーもあるし、ま、大丈夫でしょう・・・ということで
なんとか預かってもらった初日。

久々に上階に母親がいない解放感を味わったのも束の間ですわ。

翌日、早朝からぼくの携帯が鳴る。

どうやったは分からんが、夜中、各種センサーをくぐり抜け、廊下へ出て
転んで顔面を打ったという。
危ないので、付添をつけてくれ、という電話。

その日の昼間の抜歯に付添い、いったん帰って、晩の8時から病室で付き添った。

ぼくはなんと生まれて初めての病院泊。
こっちも緊張してたかもしれんけど、やっぱり痴呆の進んだ母は「普段とちがう環境」 でめちゃくちゃなハイテンションでしたわ。

とうとう初めての「息子と認識してもらえん経験」もさせてもらいました。
ま、ショックやったけど、予想はしてたからOKの範囲でしたけどね。

本人の中ではまだ自分は会社に勤めているらしく、ぼくは同僚の男性になってました。
「若々しなったな」言われました。
庶務の誰ちゃんがどう、局長がどう、定期券がどう、今日、駅で待ち合わせた
のに来なかったからどうのと延々としゃべる、しゃべる。

普段はほとんど会話なんてないのにね。

ちょっと寝てはまた起きてわけのわからんこと言うてましたから、こっちはもう 完全に「こわれちゃった」と思いましてね、帰ったらいよいよどっかの施設探さ んとしゃあないな、と覚悟しましたわ。

話が前後するけど、転んだ時に抜歯予定の歯を3本折ったらしく、それを申し訳 なさそうに報告してくれる看護師さんにぼくは「いや、ラッキーでしたやん、先生、ラクできますやん」
言うたんですけど、さすがに笑いがひきつってましたね。

けど、おもしろかったのが、その日、抜歯の処置をしてくれた若くて
キレイな女医さんが途中で報告にきてくれたのだけど、
「いやぁ、転倒されて3本抜けましたからねー」という顔が一瞬半笑い・・・(見逃さなかった)
ぼくも「よかったです、手間が省けて!」言うたけど、さすがにその後は
盛り上がりませんでしたわ。
その後残りの5本を抜いて処置は全部終了しました。

けど、実際転んだおかげで、抜く歯が減って3泊4日の予定が2泊3日になりまして、付添いも一晩だけで済んだんですよ。

まじでラッキー。

早く帰りたいもんやからばぁさん、自分で抜きよったんや、と確信しております。

ま、またまた話は前後しますが、ふっと起きてはちょっとしゃべり、トイレいったりのくりかえしで、ちゃんと眠りについたのが朝の4時ごろですよ。
おかげでこっちはほとんど寝られんかったわい。

でもまあ、セルフ抜歯作戦の成功でその日の午前中には、退院できて、家に
着いたら現金なもので、今まで通りのボケ方に戻って一安心ですわ。

あとで調べたり人に聞いたりしたら、やっぱり高齢者(とくにボケてる人)が入院 すると急激にボケが進むらしいですね。
一時的な人もいれば、そのまま元に戻らない人もいるようですが、うちのばあさん のはどうやら一時的なパニックによるものの方でよかったです。

ま、そんなこんなでオカンとの初めてのふたりきりでの外泊が終わりました。

人間生きてると色々経験させてもらえますね、ほんとに。

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