ぬくもりと問いかけ、恐怖感
ライブを経て、今まで聴いてきたMOROHAの音源が違ったものに聞こえていました。チケットを取って一緒に行ってくれた友人が帰りの車で流した『遠郷タワー』も、今まで聴いていたものと全く違う音に感じていました。ライブではやらなかった曲なのに。
MOROHAのライブがもう1週間も前のことだというのが信じられません。会場の不思議な空気感を思い出すと、不思議な気持ちになります。
UKさんがギターを弾く台に近寄って、写真を撮る方たち。物販に行く方たち。「俺のがヤバイ」と書かれたタオルを身に纏っているファンの方たち。全員が、じっと座っている姿。
全ての状況説明、全ての曲について書くのは無理です。が、当日演奏された曲の一部とわたしの気持ちについて、ちょっと書こうと思います。
誰も彼も冷めたツラ
皮肉ばかり競い合い
(笑)覚悟がない
あいつらには一生涯分からない
だとしてもうたってく
わかってくれ願ってる
ガッツだけのラップだぜ
それを無くして一体何が残る?
(RED)
わたしは、じっと座っていたか? じっとしてはいました。でも、めちゃくちゃ泣いていました。
最近涙もろかったので、どうせ泣くんだろうと思っていました。案の定泣きました。1曲目からすごく泣きました。『RED』は、ライブに行くまで1回くらいしか聴いていなかった曲でした。こんなにかっこいい曲だった……?
UKさんは本当に10本の指でギターを弾いていたのかと驚き、アフロさんの音源からは聞こえないぬるりとしたリズム感があることに驚いていました。
俺が悪い 俺が全部悪い そう思えりゃ俺の時代か?
明日があるさじゃ明日は来ない 来たとしたってろくなもんじゃないよ
(勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ)
この日、このライブの日。わたしは1日しか働いていないバイト先に「辞めます」という連絡を入れていました。迷惑をかけてしまった自己嫌悪に苛まれている自分。
わたしが悪い、全部悪いと思っているわたしの頭の中には『勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ』が流れていました。このタイミングでこれを聴いてしまうと泣いてしまう。
明日があるさじゃ明日は来ない。来たとしたって。
俺の 叶わなかった夢を 誰かが今叶えてる
(tomorrow)
散々聴いてきた曲をライブで聴いていること。
ライブなのにライブじゃないような、不思議な感覚になってしまいました。泣いている場合ではないな、ということを、理性ではなく感情で理解して、だんだん泣けなくなっていきました。
楽しいんじゃない、現実を見よ、と言われているような。自分自身を見ろ、と言われているような、そんな気持ちになっていました。『革命』と『tomorrow』を聴いてしまったら、もう泣けなかった。
こうしているうちにも、叶わなかった夢を誰かが叶えている。怖くなりました。
寂しさと眠るのももう慣れたって
嘘でしょ?愛されたいと願ってる
(GOLD)
最後の曲は『GOLD』でした。この曲もまた、1曲目の『RED』と同じように、個人的にはあまり聴いていない曲。
この曲で終わっていくというのが、絶妙でした。
ぬくもりを残して、クールダウンさせていくような。
切実に、ライブが終わってほしくないと思いました。公演が終わったら、現実が待っている。このことを、こんなにも怖いと思ったことはありません。
今まで聞いた音源が、今までとは違った音に聞こえる、
というわたしの感覚の正体は、ぬくもりをしってしまったことなのかなと思います。わたしはMOROHAの音楽、言葉、そこにある熱さと共感に惚れていたのですが、彼らの魅力はそれだけじゃなかったんですよね。
『Salad bowl』や『スペシャル』も、この日のライブで聴けて良かったのですが、この曲も、後ろににじみ出るせつなさが好きだったのでした。でもこの日受け取ったのは、あたたかさでした。
圧倒的なやさしさ、ぬくもり、やわらかさ。それがあるからこその、響く音楽なのかもしれないなという。そういうことを、知らされました。
ライブが終わって一週間。MOROHAの曲ばかり聴き続けている自分がいました。かっこよくて、かっこよくて。
でもわたしは「MOROHAを好きです」と言えるような生き方をしているか? ということを、不安になりました。どう生きるのかを問われているのに、それに答えるような生き方をしているとは、言えそうにありません。
ライブで感じた恐怖感が蘇る夜。おやすみなさい。