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よるくま

私の長女は、20歳を超えた今も、
「小さい頃、夜に目が覚めた時に、一緒に寝ていたと思っていたママがいなくて、悲しくなった。」
と、時々言う。
大人でも、夜に変な夢をみて目が覚めた時、不安な気持ちになることがある。
暗い空間というのは、不安な気持ちを助長するのだと思う。

私は、子どもが未就園の頃から自宅で仕事をしていたので、家族が起きる時間よりも早く起きて、まだ暗い明け方に仕事の時間を取っていた。彼女が言うのは、その時のことだろう。
彼女は明け方に目が覚めるととすぐに、隣の部屋で仕事をする私のところへやってきた。

小さい頃に読んだ絵本「よるくま」を彼女は、今でも大切に持っている。

くまの親子のお話だ。

こぐまが目覚めた時、お母さんがいない。
こぐまがお母さんを悲しい気持ちで探してまわる。
そしてやっと見つけたお母さんは、魚を釣る仕事をしていた。
お母さんに抱かれ、安心するこぐま。


彼女のお気に入りの本だった。
彼女の気持ちとリンクしていたのかもしれない。

私は、彼女が小さい頃、この絵本を何度も一緒に読んだ。
なのに、明け方の彼女の不安な気持ちを、なぜあの時分かってあげられなかったのだろう。
小さい彼女は「寂しい」とか「悲しい」とか、自分の気持ちを言葉で伝える表現方法をまだ持っていなかったのだと思う。
私は自分の仕事のキャリアを優先して、彼女の気持ちが見えなくなっていた。

彼女は成長して、言葉という表現手段を得て、ようやく私にその時の気持ちを伝えた。

サイン」でも書いたけれど、子どものための法の整備や社会システムは、大人が作るものだ。
そこに、子どもの目線を推し量る、想像力や優しさが、加味されることを望んでいる。



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