2021年に読んだ本ベスト10冊
今年読んだ本でよかったヤツを10冊紹介しておきます。
1:滝口悠生『長い一日』
現代日本文学の現時点での到達点といえる作品。
2:鳥飼否宇『本格的──死人と狂人たち』
理系バカミスの傑作
3:井上真偽『恋と禁忌の述語論理』
名探偵多しとはいえ、「名探偵の推理を査読する名探偵」はこの作品でしか読めないでしょう。
4:佐藤究『テスカトリポカ』
2021年はこの作品なしに小説の話はできない年だったと思います。
5:宮内悠介『偶然の聖地』
小説の勝利を感じられる本。このくらい自由なのが表現ってヤツですよ。
6:町屋良平『ほんのこども』
前述の『長い一日』と並んで2021年の純文学作品で最重要に挙げられる小説。この年は「私小説」がなにかと話題になりやすかったが、本作は「小説」を「私小説」にするものへ、技術的な考察がなされている。
7:ヴァージニア・ウルフ『波』
待望の新訳。ウルフ作品は一貫して語りの設計が緻密で壮大で、後期になるにつれて演劇的なカラーが強くなる。『波』は声が生まれる場、重なる場として「小説」という仮想的な空間=舞台が用意されているようで、現代でも古びない。
8:トマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』
ピンチョンはぼくにとって非常に大きな存在で、今年ピンチョンの仕事をできなかったことを一生悔しがると思う。ピンチョンが生きているうちにピンチョンの仕事がしたい。
9:クレメンス・ゼッツ『インディゴ』
一般的にこうした小説は大多数の人間に受け入れられないと思うのだけれど、こうした複雑怪奇な小説が翻訳され日本で出版されるのはささやかではあっても極めて大きな希望です。
10:青崎有吾『水族館の殺人』
「じぶんにはミステリは書けない」という声をよく聞くのだけれど、青崎有吾を読めばミステリは書けるようになる。裏染天馬シリーズは問題設計・特定プロセス・それを飽きさせない話運びの全てがある。
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