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オリジナル短編小説・シナリオ集

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birdfilmの映像作家 増田達彦が書く、映画やショートムービーの原案になるような不思議な短編・掌編小説や、昭和の時代を感じられる戦中戦後の少年成長物語、業界エンターテインメン… もっと読む
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記事一覧

短編物語 竜宮磯

 初夏、志摩の磯の海女漁が解禁になった。  海で母親を亡くし、男手一つでここまで育ててく…

birdfilm
5日前
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【なんちゃって小説】ハッピー・ニュー・イヤー

【前説】 こんにちは!birdfilmの映像作家、増田達彦です。 私がまだ局のテレビマンだった1980…

birdfilm
1年前
6

蒼穹の彼方へ ~沖縄戦追悼~

 【前書き】  今から79年前の春、沖縄に米軍が上陸しました。 日本の多くの若者たちが特攻隊…

birdfilm
1年前
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短編小説 海人(うみんちゅ)

   十月中旬というのに、この島を照らす日差しはまるで真夏だった。  珊瑚礁に囲まれた海…

birdfilm
1か月前
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タイパ・タクシー

ハイ、お待たせ、 どちらまで? え?次太夫堀公園民家園? 世田谷の? ・・・ お客さん、通な…

birdfilm
2か月前
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【短編歴史小説】ノンノ

その流行り病が都を襲い、人々が次々と倒れだしたのは、 まだ山の頂に雪が残る、早春のことだ…

birdfilm
2年前
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【幻想短編小説】魚玉石(うおたまいし)

 邪心のある者はその神社に決してたどり着けないという。  紀伊山地の奥地、奈良県十津川村大峰山系の霊山、玉置山九合目に立つ玉置たまき神社。このあたりはなぜかカーナビが効かず、目的地に玉置神社をセットしても、同じ山道をぐるぐると回って、神社にたどり着けない事がある。  晩秋、昔の記憶をたどり、無事たどり着いた玉置神社は、樹齢千年を遥かに超える杉の大木に囲まれて、ひっそりと佇んでいた。そのご神体は山頂に近い地表にわずかに露出する玉石で、「玉石社」として祀られている。  その

【短編小説】なつむし

 棚田を断ち切るようになだらかに上る一本の坂道を、一人の老婆が登っていく。丸まった背中が…

birdfilm
2年前
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スキャンダル・à gogo    #1 プロローグ

(書き下ろし) 「こんな領収書、経理通るわけないじゃないの!」  制作庶務担当の遠山佳子…

birdfilm
4週間前
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【短編歴史小説】瑠璃(るり)の玉

 天平感宝元年(西暦749年) 新緑が万緑に変わり始める初夏、 その万緑を水面に映して流れる …

birdfilm
2年前
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空とぶゴカイ

ざぶーん、しゅわしゅわー、 ざぶーん、しゅわしゅわー、 打ち寄せる波音が気持ちいい ここは…

birdfilm
1か月前
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全国カエル会議

 ある夏の日、日本のある所で、 全国に住むカエルたちの代表9匹が オンライン会議を開きまし…

birdfilm
1か月前
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【短編小説】らっぽやん #1

 空襲がひどくなるというので、 ミノルが名古屋から奥三河の村にある 親戚の農家へ一人で疎開…

birdfilm
2年前
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【短編小説】らっぽやん #3  らっぽやん、名古屋へ出る

 日本の一部地域では、子どもたちの間で トンボとり名人のことを「らっぽやん」と呼ぶ。  終戦から8年経った昭和28年。 疎開先の奥三河の山村から 焼け跡の名古屋へ戻っていたミノルは、 家政婦をして働く戦争未亡人の母を支えるため、 新聞配達をしながら高校へ通っていた。  暮らしは決して楽ではなかったが、 下町の人情に支えられ、 高校まで行かせてもらっていることが いかにありがたい事かと、心から思っていた。    昭和25年から始まった朝鮮戦争による 朝鮮特需とも言われた好景