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台湾、海のむこうに

後方視的にみれば抑うつ状態だったのだと思う。
数年前の冬、気づいたら流涙することが度々あった。
当時の配属先は仕事量が多く、運悪くとある上司に目をつけられていた。
職場に向かう時点で憂鬱だし、帰宅してからも勤務時間の出来事を思い出して暗澹たる気持ちになっていた。
初めは「出勤したくない」という明確な気持ちでもって泣いていたのだが、段々と何に対するどんな感情なのかわからないまま泣くようになっていった。
それがいつしか、泣いている自覚がなく涙がでるようになった。

そんな状態が2週間ほど続いたとき、勤務時間中に顧客から暴力を振るわれ、限界を迎えた。
暴力といっても顔に手がかすった程度で、普段の精神状態であればなんら問題なくスルーできるはずのことだったのだが、既にギリギリのところで耐えていた私にはもう無理だった。
それまでなんとか"無"で業務をこなしていたが、その時から、あらゆる事物に対して"殺意"しか湧かなくなった。
かくして私の心は絶対殺すマンに占拠されてしまったのだ。
何を言われても、何を聞かれても、何をされても、ベースの憂鬱さのうえに殺意を感じるようになった。
最悪なレイヤーである。
そんな自分が本当に嫌だった。
この最悪な層を捨て去るべく、何とかしなければと思った。
選択肢はいくつか浮かんだ。

  1. 職場の窓口に相談する

  2. 美味しいものを食らう

  3. 物理的に離れる

1.
 ストレス障害の診断がつけば1カ月の休暇が得られるのでは、と邪な気持ちが頭をもたげたが、有給を消費するうえに精神疾患の既往がつくのは正直避けたかった。
それに例の上司に聞き取りでもされれば関わりが生じてしまう。
却下。

2.
これはアリだ、と外食やお取り寄せに精を出したが、食事は時間をかけても精々1時間程度だし、あまりにも日常生活の一部だった。
食べている間は幸せなのだが、すぐ近くに次のシフトを感じてしまい効果が薄かった。

3.
これしかなかった。
休みを最大限使って、最大限遠くに行こうと思った。
日常を薄められる場所。
10年以上行っていない石垣島なんていいんじゃないか。
そう思って地図を眺めていたら、石垣島の横に大きな島があった。
なんこれ。

おわかりだろうか
その全容

台湾!!デカい島の正体は沖縄の離島ではなく、台湾だった。遠くに行こうと思いながら、国内しか選択肢に挙がらない時点で思考が阻害されていたのだと思う。は~、これは台湾だわ。

決めた翌週には台湾に来ていた。

なんとなく淡水へ
茫然と眺めた海とマングローブ
美味排骨飯
彼らから日本を感じるのは不思議と嬉しい
台北もうろうろ
いい顔
ここの鼎泰豊ももれなく激込み
台鐵弁当で〆

結論:最高

0泊3日の強行軍だったが、絶対殺すマンに巣食われた心を癒すには十分だった。
その後同部署での業務をなんとか終え、無事に次の配属先へ移ることができたのは、この台湾行きによるところが多いと思う。
ありがとう、全ての台湾。


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