羽鳥高広

心に闇を抱えた一人の男が、「癒しの技法」を求めてインド・ネパールを旅した三ヶ月間の物語…

羽鳥高広

心に闇を抱えた一人の男が、「癒しの技法」を求めてインド・ネパールを旅した三ヶ月間の物語。 旅のルート NPカトマンズ→ランタン谷→印ブッダガヤ→ラージギール・ナーランダー→バラナシ(サールナート)→クシナガラ→スラヴァスティ→リシケシ→ダラムサラ→ビル→デリー

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聖都バラナシ編3 サールナート 前編

写真:サールナート名物 ダーメークストゥーパ バイクタクシーの後部座席にまたがりバラナシの街を走り抜けること20分ほど、無事サールナートへ着いた。 ここもまた23年ぶりの訪問である。当時仏教には全く興味のない私だったが、偶然出会った仏教大学の学生に熱烈に勧められて訪れたのだった。田園風景の中にぽつんと佇む当時のダーメークストゥーパはいかにもインドの遺跡という趣があって印象深かった。それが経済発展の影響だろうか、今は近隣の建物や交通量も増え雑然とした汚らしい普通のインドの街並

    • ブッダガヤでPTSD再発しかけた話

      ブッダガヤでの滞在を始めてまだ日の浅い頃、宿の外へ出たところで一人のインド人に話しかけられた。アショーカと名乗るその男は、齡は四十後半と見えるのだが、少年のような小さい体をしておりちょっと異様な雰囲気を醸し出していた。しかもその両耳は西洋ファンタジーでお馴染みのあの架空種族「ゴブリン」のように尖っていて、その体の小ささもあって本当にゴブリンのようだった。 更に異様だったのはその血走った目だ。たまに笑いながらこちらを横目遣いに見上げるときなど、まるで地獄で責め苦を受けている真

      • 聖都バラナシ編 2 Airtel編

        異教徒の小僧を無事蹴散らした私は近くにあるAirtelの店舗へと向かった。Airtelとはインドの大手通信事業社の一つで、海外からの旅行者へのsimカードを提供している。空港でも街中でも店舗をよく見かけるため旅行者にとっては定番の事業社である。 私はインドに入国してからsimカードにトラブル続きだった。まずデリーの空港で購入したものがいつまでたってもアクティベートできず、後々不良品だったことが判明。ビハール州についてから道端の屋台で買い直したのだが、通常simカード購入の際

        • 聖都バラナシ編 1

          電車に揺られること4時間、なんとか次の目的地・聖都バラナシに着いた。ここはかの聖河ガンジスで有名なインドを象徴する街である。私はこの地を23年前に訪れたことがあり個人的にも大変思い入れがある。 当時世間知らずの18歳だった私は始めての貧乏旅行に何故かインドを選んでしまい、毎日質の悪いインド人にひたすら騙されつづけるという地獄を味わっていたのだが、ここバラナシにたどり着いてその独特の空気に癒されたのだった。 とはいっても当時のバラナシは結構治安の悪いところだった。火葬場で有

        聖都バラナシ編3 サールナート 前編

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        • 聖地ブッダガヤ編
          7本
        • 聖都バラナシ編
          3本

        記事

          続・ガヤ駅にて

          私が今から野宿しようとしているここガヤ市はビハールという州の一都市なのだが、このビハール州はインド全州の中でも貧困率・犯罪率共にぶっちぎりでワースト1位という、インド全土にその悪名を轟かすほどの最悪な土地なのだそう。ガヤ空港からブッダガヤへ向かう道では度々強盗がでて旅行者が襲撃されているという。出発前の私は巡礼者らしく歩いてブッダガヤを目指そうと思っていたのだが、先輩仏友(ブッとも)の一言「狩られるよ」で断念したのだった。 「忘れるな、ここは修羅の国。気を抜けばヤられる…。

          続・ガヤ駅にて

          ブッダガヤの物乞い 5 そしてガヤ駅へ

          一月以上滞在したブッダガヤも残り数日となったある日の昼、いつもの繁華街へと出かけた。ここで食事ができるのもあと数回か、と感慨に耽りながらカフェラテを嗜んでいると聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「グルジー、グルジーよぉ…」 振り返ってみると、いつかの投稿で紹介したあの「足が悪い振りをする男」だった。 (ブッダガヤの物乞い 1 参照) https://note.com/birdpato/n/n5bd9d442c3ba そしてあろうことか、性懲りもなくまた金をせびってきた…

          ブッダガヤの物乞い 5 そしてガヤ駅へ

          ブッダガヤの物乞い 4 仏五左衛門編

          写真 : 夜のマハーボディテンプル インドの物乞いには実に様々なタイプがいるが、金をせびる時はたいてい皆しおらしい感じで来る。だが時折とんでもなくぞんざいなやつがいて驚かされる。 いつだったか大通りを歩いていたときのこと。道端で車座になって団欒に耽っているホームレス一家の脇を通りすぎようとしたとき、母親とおぼしき女が私に気付くと、 「あ、ちょうどいいのが来やがった!」 とでも言うような勢いでステンレスの器※を手にとり、 「カンカンカン!カンカンカン!」 とアスファ

          ブッダガヤの物乞い 4 仏五左衛門編

          ブッダガヤの物乞い 3 中年の危機編

          2024/01/30 昨日はちょっと趣を変えてベトナムの寺院を訪ねてみようと思い昼過ぎに宿を出た。田園風景の中をさ迷っていると自転車に乗った子供(小学2、3年生くらい)がやってきてヒンディー語で何か叫んでくる。 「おい小僧、この俺にヒンディー語は通じねえぞ」 と自信をもって言い放つと、 「はぁー」 と、大人びたため息をついて今度は数字を連呼し始めた。 「ダース!ダース!(10)」 まさかこいつ金をせびっているのか?いやしかし、こんな愛くるしい眼をした子供がそんな

          ブッダガヤの物乞い 3 中年の危機編

          ブッダガヤの物乞い 2 カギュモンラム編

          2024/01/28 先日終了したカギュモンラムにはインド人のグルジー達が大勢参加していた。初日は十数人程度だったのが日に日に増えていき、最終日には200人近い大所帯になっておりなかなかの騒ぎだった。 昨今、インド人の仏教徒数は爆発的に増えていると聞く。特にカースト最下層の不可触民を中心に増えており二、三十年前には10万人単位だったのが今は1億人を超えているのだとか。 この人たちもそういった生まれなのだろうか。インド社会から生まれながらに拒絶されてしまった人たちが、イン

          ブッダガヤの物乞い 2 カギュモンラム編

          ブッダガヤの物乞い 1

          とあるレストランのテラス席で昼食をとっていたところ一人の物乞いに絡まれた。いつも足を引きずって歩いている男だった。「なんか食い物くれ」と手を動かして訴えてくるので「なにもあげらんないよ」とこちらも手を動かして牽制していると、向かいに座っていた女性が口に合わなかったらしく「これ飲みなさい」と自分のスープを差し出した。  しかし男は手を振ってそれを拒否、僕のベジターリー(スペシャル)についてきたヨーグルトを指差して「こっちをよこせ」と。物乞いが選り好みするのか!とその女性と2人

          ブッダガヤの物乞い 1

          とある駅での一コマ

          インドのとある駅で電車を待っていたときのこと。用を足したくなった私はトイレを探したのだがいっこうに見つからない。利用客の男に訪ねてみたところ「(そっちだ)…」と無言で指を指して教えてくれたのだがそこにもトイレはない。 「仕方ない、インド人に習ってその辺でするか…」 と思っていると、鉄道職員とおぼしき制服を着た集団が歩いてきた。その中の一人がキョロキョロしている私に気付くと、 「Hello my friend!どうしたんだい?何か問題かい?」 と話しかけてきたので事情を

          とある駅での一コマ