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セリエA 第24節 ユベントス vs ウディネーゼ 〜ロカテッリが消されても…

ウディネーゼとのホームゲームは0-1の敗戦。ここ3試合で勝ち点1しか取れていないという緊急事態です。ただ、ユベントスのゴール期待値は2点を越え、ウディネーゼのゴール期待値は1を下回っています。ウディネーゼの得点もセットプレーから。試合内容自体はユベントスが勝っていてもおかしくない試合でした。だからこそのブーイングだったのかもしれません。

ロカテッリの引力

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ウェア、ガッティ、ブレーメル、サンドロ、カンビアーゾ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、キエーザ、ミリク。いつもの5-3-2ですが、メンバーが変わっています。怪我のブラホビッチのかわりにミリク、サスペンションのダニーロのかわりにサンドロ。ミリクのパートナーにキエーザを持ってきました。前半戦で好パフォーマンスを見せていたルガーニよりもサンドロを優先した起用は正直納得できませんが、ボールを保持して押し込むプランの中でサンドロの機動力を活かした攻め上がりを期待したと考えれば理解はできます。実際にボールを保持して押し込み、「遅い」ハイプレスでボールを回収してまた押し込んで……とボールを保持して試合を支配。試合を通じた支配率は70%に到達しています。

ユベントスのボール保持は3バックとロカテッリが中心。この4人の中で特に警戒すべきなのはロカテッリです。ゲームのリズム、攻撃の方向を決定し、サイドチェンジや鋭い縦パスで局面を進める役割を担っています。攻撃面でのクオリティの高さは、前半6分にペナルティエリア外からキエーザに出した左足からのロブパスを見れば一目瞭然でしょう。この危険な男を放っておくわけにもいかず、ロカテッリをいかに消すかを相手チームが考えてくるようになっています。ウディネーゼも2トップが背中でロカテッリを消すように動いていました。ロカテッリも相手が自分を消しにかかっていることはわかっており、あえて囮となって味方をフリーにしようとポジションをとります。ロカテッリに引き寄せられるように相手のFWが動くため、当然ユベントスの3バックには時間とスペースが与えられます。ユベントスは余裕を持ってプレーできる3バックを起点にボールを保持して前進。ウディネーゼを押し込むことに成功します。

孤軍奮闘のミリク

ただし、3バックには縦パスを相手のライン間に通すだけの技術や眼はありません。必然的にボールはサイドへと流れていきます。この試合では、左にはキエーザが張り、右はウェアとマッケニーがポジションを入れ替えながらボールを受け取っていました。そして、右サイドで数本パスを繋いでウディネーゼの守備陣を右サイドに寄せておいて、サイドチェンジや素早いパス回しで左サイドに展開。ウディネーゼのスライドが間に合わないうちに3センターハーフの脇をカンビアーゾやラビオが取って大外のキエーザと連携しながら左サイドのハーフスペースを狙っていました。この光景は試合中何度も見られ、デザインされた攻撃だったのだろうと思います。サイドに預けてハーフスペースへと走り込むカンビアーゾから速いショートクロスが何本もゴール前に折り返されました。ただ、走り込む選手のタイミングが揃ってしまっていて、マイナスを狙う意識もなし。当然ゴール前に入ってくる選手にはDFがマークしているわけでフリーでシュートは撃たせてもらえません。バスケットボールでいうタフショットのような状態なので、落ち着いてコースを狙う余裕もなく、シュートは枠外やキーパー正面へ。

これは決定力不足というより、チームとしてペナルティエリアへ飛び込むタイミングをズラすなどしてフリーでシュートを撃てるように工夫する必要があるでしょう。そもそも2トップの一角として先発したはずのキエーザが左サイドに張っているわけですから、単純にゴール前から人は少なくなっています。その上、キエーザと入れ替わるように中盤へとポジションを移したカンビアーゾは、左ハーフスペースを狙って動いているラビオと狙いがダダ被り。右サイドではマッケニーとウェアがポジションチェンジを繰り返すおかげでタスクが複雑になってペナルティエリアに突撃するタイミングを見計らう余裕がないのかもしれません。せっかく左ハーフスペースを取ってショートクロスを折り返しても同じタイミングで揃ってペナルティエリアに入ってきては、相手のマークは外れません。そんな中でもシュートまで持っていき、3つの決定機に絡んだミリクにはむしろ感謝すべきなのかもしれません。

加えていえば、ミリクのプレーの真骨頂は下がってボールを受けてボールを散らすプレーです。一度ミリクが相手の守備を引きつけることで相手の守備を動かして周りの選手をフリーにする、もしくは相手の守備組織に穴を開けることができます。しかし、縦パスが入らない状況では、彼の本来のプレーでチャンスメイクすることはできません。ウディネーゼ戦に限っていえば、ミリクは本来の力を発揮できる状況にはなかったと言えるでしょう。

ユベントスの課題

この試合は、最悪の結果となりましたが、一定の評価はできる試合だと思います。それは、ロカテッリを消された時にどうやって攻撃するかということに対して一つの答えを出すことができたからです。サイドに展開して、CHがハーフスペースを取りに行くことです。アッレグリが授けた解答は、うまく機能していたように思います。再現性高く、かつ何度も狙い通りにハーフスペースを取ってショートクロスを折り返していたのですから。他にも、クロスからミリクが惜しいシュートを撃っています。55分のシュートはハンドを取っても良かったと思います。少なくとも、試合を支配して狙い通りに攻め続けました。

しかし、降格争いをするチームに対してホームでの敗戦は批判されて当然です。支配率は70%、ゴール期待値は2点を超えたにも関わらず、無得点に終わったことは反省して対策を打つべきでしょう。そのヒントもロカテッリが教えてくれています。27分、28分と立て続けにハーフスペースを取ったシーンで、ロカテッリは後ろから他の選手とはタイミングを遅らせてペナルティエリアに入ってきていました。もし、カンビアーゾがマイナスに折り返していれば、少なくともロカテッリがフリーでシュートを撃てた可能性は高いでしょう。ズバリ、ペナルティエリアに遅れて入ってくる選手を用意することが必要です。例えば、キエーザが左サイドで基点となってハーフスペースに飛び込む選手にパスを出したら、その選手とクロスするようにペナルティエリアに入り込む。ウェアがペナルティエリアに入っているなら、マッケニーは少し遅れてペナルティアークを目掛けて入ってくる。リスクを負って、ロカテッリが遅れてペナルティアーク付近に現れる。など。

他にもクロスボールをファーサイドを狙ってマイナスに折り返す場合にも同じことが言えます。あのアッレグリが再現性高く攻撃を仕掛けるプランを授けてきているという点はとても興味深い試合となりました。結果にはブーイングですが、試合内容についてはそこまで悪くはないと思います。問題は、次の試合でもこれだけの内容を示せるか。そして、勝ち点3という結果を出せるか。次節は継続性と結果の両方が問われる試合となります。

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