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ウイングバックは利き足同サイドがいい?


ユベントスとカリアリの試合を見ていて色々と考えたことを書いておきます。具体的には、カンビアソを右WBで起用した点についてです。

カンビアソの右WBについて

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアソ、ガッティ、ブレーメル、ルガーニ、コスティッチ、マッケニー、ロカテッリ、ミレッティ、キーン、キエーザ。いつもの5-3-2をベースにしていたが、大きなポイントは右WBにマッケニーではなくカンビアソを起用したことでしょう。ウェアの負傷とラビオのサスペンションによって右WBと中盤のやりくりに苦慮しているアッレグリは、カンビアソを右WBに持ってくるという決断をしてきました。スタメンを見た時には、カンビアソを中盤でマッケニーがWBかと思いましたが、逆でした。カンビアソは固定されたポジションでプレーする選手ではなく、流動的なポジションをとりながらプレーします。左WBで起用された時も積極的に中盤に流れてきてボールを引き出すプレーが目立ちます。中盤で起用した際、守備時にロカテッリの横を開けてしまうリスクを避けたかったのかもしれません。

しかし、カンビアソの右WBはうまくハマらなかったように思います。構えて守る守備をメインに据えるユベントスは、攻撃開始位置がどうしても低くなります。そのため、ポジティブトランジションではロングカウンターがメインの選択肢となり、縦に速い展開が必要になっています。さて、カンビアソは左利きの選手です。低い位置でボールを奪い、右サイドへ展開した時、カンビアソは左足のインサイドでボールをコントロールしようとします。そうなると、タッチラインに背を向け、体の向きはタッチラインと平行になります。この状態で左足インサイドでコントロールすると、ゴールから遠い足でボールを扱うことになり、前にボールを置きにくくなります。少なくとも、右利きの選手が相手ゴール方向に体を向けて右足インサイドで前に押し出すようにボールをコントロールするプレーに比べれば、ボールを前に運ぶ速さは遅くなります。実際にカンビアソはタッチラインに平行な体の向きで左足でファーストタッチを行い、縦ではなく中へのボールコントロールをしていました。それによって縦に速くボールを運ぶことはできなくなり、カリアリの守備陣の帰陣が間に合っていました。ボール保持にはつながっていましたが、カリアリの守備陣が戻り切る前に敵陣深くまで侵入して、出来ることならキエーザやキーンにボールを預けたかったところです。彼らが相手ディフェンスと対峙するなら、それはそのままシュートチャンスにつながる可能性が高いからです。

カンビアソがポジティブトランジションで中にボールを運んだとしても、ボール保持につながっているのは間違いありません。しかし、カンビアソが中に運んだということは、ボールの高さは変わっていないということでもあります。カリアリの守備ラインを下げさせることはできません。カリアリのミドルプレスを攻略する段階から攻撃を始めなければいけなくなります。

一方、カンビアソが縦にボールを運べていれば、ボールの位置に合わせて守備ラインも下げなければいけません。つまり、ユベントスは相手を押し込んだ状態で攻撃を始められることになります。いや、縦に運んでいれば、ドリブルで運んでゴール前にクロスを送り込めばチャンスになる可能性が高いでしょう。自陣ゴールに向かって走りながら、相手のフォワードをマークするのは簡単なことではありません。まして、相手のフォワードが自分の背後を狙って走り込んでくるなら尚更です。ボールと相手の同一視は不可能です。フィオレンティーナ戦のルガーニのギリギリのクリアはまさにその典型です。

結局、カンビアソがポジティブトランジションの時など、前にスペースがある状況で前に運ぶファーストタッチができなかったことでユベントスの右サイドからの攻撃は遅くなってしまいました。まあ、アッレグリもこれくらいは織り込み済みで中盤の強度を維持するためにマッケニーを中盤においたのだろうと推測します。中盤の人員不足は異常事態で、あちらを立てればこちらが立たずと言った状態が続いています。今回は中盤の守備を優先した結果、右サイドの縦に速い攻撃には目を瞑った格好になったのではないでしょうか。もしかしたら、カンビアソを使ってカウンターを捨ててもボール保持からの攻撃で得点を狙っていたのかもしれませんが…。

カンビアソのプレーを見ていて思い出したのは、ベンゲルが左サイドバックには何としても左利きの選手を起用しようとしていたことです。ベンゲルが率いたアーセナルでは、アシュリー・コール、クリシー、左利きの選手が左SBでプレーしていました。SB、WBは、基本的には利き足と同サイドでプレーさせる方がいいんだろうと思います。

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