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セリエA 第21節 レッチェ vs ユベントス 〜混沌のアッレグリ


レッチェとのアウェーゲームは3-0で勝利。年が明けてからは複数得点のゲームが続いています。レッチェ戦は得点シーン以外にもチャンスを多く創出しており、ブラホビッチの調子とともに攻撃の質も爆上がり状態となっています。ただ、レッチェ戦についてはゲームのコントロールを失っているように思えるところもあり、アッレグリのチームらしくない試合だったように思います。そのあたりについて考えてみます。

手綱を緩めたアッレグリ

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアーゾ、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、マッケニー、ロカテッリ、ミレッティ、ユルディズ、ブラホビッチ。5-3-2をベースにしつつも、特に攻撃時はカンビアーゾ、ミレッティ、ユルディズのNEXT GEN組がかなり自由に動き回って、流動性がこれまでのユベントスに比較してとんでもなく高い仕様になっていました。その上、ガッティの攻め上がりまで最初から解禁してペナルティエリアへの圧力を高めていました。結果としてレッチェ人内のペナルティエリアまで攻め込む機会が増加し、序盤から多くのチャンスを作り続けました。一方で流動性を高めた上にガッティまで攻め上がったことで守備のポジショニングが乱れ、レッチェにもシュートチャンスを多く与えることに。ブレーメルやロカテッリが開いたスペースをカバーしつつ、シュチェスニーの力を盾に凌ぎ切りました。試合のコントロールを敢えて放棄してカオスなゲームを選んだようにも見えました。これはこれで興味深い試合ではありますが、大味でアッレグリらしくない試合運びです。ただ、タッチライン際で怒り狂うでもなかったので、むしろアッレグリはこの試合運びを許容していたのだと思います。なぜ、こんなゲームを選んだのでしょうか。

ラビオ不在

一つ目の要因は、ラビオの不在です。ラビオは軽症のようですが、大事をとって休ませているのだと思います。どうも、アッレグリは来月に控えているイタリアダービーでラビオを使える状態にしておくため無理はさせないように起用を控えているようです。確かに、勝ち点差2で首位インテルを追うユベントスは、スクデットを狙うなら次のイタリアダービーで負けることは許されません。最低でも引き分けで勝ち点差2をキープしたいところです。もちろん、勝って首位の座につくことを狙って行くはずです。そのためにはラビオはどうしても必要な選手です。だから、イタリアダービーまでは無理はさせたくない。となると、現在のスカッドで3センターを組むなら、ロカテッリ、マッケニー、ミレッティがファーストチョイスとなるでしょう。

アンカーはロカテッリだとして、マッケニーとミレッティの位置はどうするか。マッケニーは今季、右サイドでウイングバックとポジションを入れ替えながらビルドアップや攻撃に関与するプレーでユベントスの攻撃を牽引しています。一方のミレッティはボールの扱いが上手く、ライン間にポジションをとってボールを受けるプレーに特徴があります。左サイドを精力的に上下動するプレーが真骨頂のコスティッチと組むならミレッティの方が適任ですし、右利きのマッケニーがウイングバックとポジションを入れ替えるなら右CHの方がいいでしょう。

そして、中盤3枚が大きくスライドしつつミレッティとマッケニーが左右のサイドバックにプレスに出て行くというスタイルで守備を行いました。アッレグリが前の選手と考えているであろうミレッティにできるだけ中盤低い位置の守備をさせないためにも、ミレッティを前に押し出した守備を狙っていたように思います。そして、この形を基本としつつ、WBが上がって中盤のフォロー入るなど、即興的に対応する場面もありました。

フリーマン・カンビアーゾ

そんなところにポジションの概念がないプレーをするカンビアーゾを入れたために混沌は加速。右WBで先発したはずですが、そのポジションにいることの方が稀で、中央、何なら左サイドまで出て行ってプレーしていました。ブラホビッチの先制点に繋がったクロスもカンビアーゾから。カウンターに合わせてチームの先頭を走り、こぼれ球にいち早く反応してブラホビッチを狙ってクロス。守備の時に右サイドはどうなっていたんだと言いたくなるのをグッと堪えて、その積極性を買いましょう。おそらく、アッレグリも同じ考えなのではないでしょうか。ユルディズとミレッティも比較的自由にピッチを動き回りますが、カンビアーゾは別格です。当然、守備の穴は大きくなりますが、そこはスペースカバーのスペシャリスト、ロカテッリが守備の穴を埋め、セリエA最強DFのブレーメルが対人守備で跳ね返し、シュチェスニーがシュートを止めてくれます。要は、流動性を高める代わりに守備で混乱が生じても、個の力でカバーできるという計算がアッレグリにはあったのだと思います。同じことは攻撃に関しても言えるでしょう。流動性を高めて攻撃に出れば、好調のブラホビッチを筆頭に得点を取って帰ってくるだろうと。レッチェのスカッドとの比較もあったとは思いますが、この試合のアッレグリは選手の力に信頼を置いているように見えました。いわば選手の質で殴りかかるユベントス。アッレグリ自身が若手の成長を感じ、チームへの信頼を深めているのかもしれません。

カンビアーゾの動きを見ても、アッレグリがかなりの自由を与えているように見えます。マッケニーとのポジションチェンジについては想定の範囲内でしょうが、ウイングバックの選手がカウンターの際にチームの先頭を走っているシーンはなかなか見られるモノではありません。カンビアーゾのプレーは攻撃に予測不可能な意外性をもたらす代わりに守備の混乱を招きます。レッチェが相手だったからこそカンビアーゾの流動性を最大限活用する方向に舵を切りましたが、例えばインテルやミランとのゲームであればアッレグリが調整するか、ウェアを使ってくるでしょう。レッチェ戦では、むしろ交代カードを切るごとに攻守に渡ってポジショニングが整理されていきました。主に右サイドを躍動するウェアを入れて右サイドの守備を整理。広範囲に動き回っていたユルディズに代えてミリクを入れて前線の流動性も低下させ、最後にカンビアーゾを下げてゲームをクローズしにかかりました。この一連の選手起用もなかなか興味深いものでした。

右利きのディバラ

ユルディズのプレースタイルも徐々に全貌を現しつつあります。キエーザの怪我によって出場機会を得る形になっていたため、当初はキエーザのようなスピードスターだと思っていました。しかし、ここ数試合ユルディズのプレーを見てきて考えを改めました。敢えて似ている選手を上げるなら、ディバラなのではないかと思います。卓越した足元の技術、左サイドに限らず広範囲に動き回ってボールを引き出すプレースタイル、ボールを受けた後のキープ力、ドリブルでボールを運ぶ力、そして思い切りの良いシュート。スピードでぶっちぎるだけのフィジカルはないかもしれませんが、相手の重心や出してくる足を見て逆を取るドリブルのスタイルはディバラやメッシの系統に入ってくるでしょう。周りを囲まれながら巧みなボールタッチとステップでボールを運ぶシーンをここ数週間で何度見たことか。ゲームを作りながらゴールも決めるストライカー。ポグバの不在によって実質的に空席となっている10番に相応しいタレントだと思わさせてくれる逸材です。18歳ながらチームに不可欠な存在へと成長しつつあると思います。今後の課題は守備面、特に守備戦術の理解を高める必要はあるでしょう。先達のディバラはアッレグリに鍛えられ、CLのノックアウトラウンドで守備のキーマンに指名されていました。攻撃面の貢献だけではユベントスのFWは務まりません。ただ、それでも次のイタリアダービーに先発するだけの力量はすでに備えていると見ます。アッレグリの選択が楽しみです。

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