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セリエA 第13節 イタリアダービー(HOME) 〜インテルで最も危険な男


首位と2位の直接対決となったイタリアダービーは1-1で引き分け。ケガ人を多く抱えている中で行われた試合であることも考えれば、悪くはない結果と言えるでしょう。アッレグリの選手起用が消極的だったことで勝てなかったという見方もあるようですが、インテルを舐め過ぎだと思います。スカッドの質、量はインテルの方が上。バレッラを下げてフラッテージが出てくるわけですから。インテルの独走を許さず、勝ち点差2で着いていけば、どこかで逆転できるかもしれません。また、リーグを面白くするという意味でも、この引き分けは良かったのではないでしょうか。

インテルで最も危険な男

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアソ、ガッティ、ブレーメル、ルガーニ、コスティッチ、マッケニー、ニコルッシ、ラビオ、キエーザ、ブラホビッチ。ロカテッリが軽度の肋骨骨折を負い、スタメン起用できない中、ニコルッシをアンカーに置いてお馴染みの5-3-2を選択してきました。まずは選手選択について考えてみましょう。

ロカテッリがスタメンで使えないとなると、中盤の構成が大きく変わる可能性がありました。ロカテッリはもはやユベントスにとって絶対的に不可欠な存在だと思います。その戦術眼とパスワークでゲームの方向性を決め、的確なポジショニングで守備のバランスを保つ。アンカーというポジションを任されていることもあり、文字通りチームの中心としてプレーしています。

そのロカテッリがいないとなると、アッレグリはそもそもアンカーを置くべきかどうかを検討したのではないでしょうか。具体的には、前線を一枚増やした5-2-3も選択肢に入っていたかもしれません。しかし、インテルが5-3-2で来るとすると、中盤で2対3の数的不利は避けたかったはず。

なぜなら、インテルで最も危険なプレーヤー、バレッラがいるからです。2対3の数的不利が生まれるシステムでの対戦になると、 3センターの一角として出てくるバレッラをマークしきれない場面が出てくることが予想されます。バレッラをフリーにすることは、インテルにチャンスを与えることを意味します。バレッラはボールを扱う技術と運動量はもちろん、ボール保持のために守備ラインに落ちたり、相手守備組織のギャップをつくポジショニングなど高い戦術眼を持っています。中盤の選手としてはほぼパーフェクトと言っていいレベルだと思います。少なくとも、セリエAでプレーする中盤の選手の中では最高峰の選手です。後述しますが、中盤でほんの一瞬バレッラをフリーにしたためにユベントスは失点しました。バレッラをフリーにしないこと。インテル対策の第一歩はここにあり、ユベントスのスタメンや戦術はここから組み上げられたのではないでしょうか。

ニコルッシ・カビリア

メインのフォーメーションについては、インテルの3CHに対して数的不利にならないように5-3-2を選択。バレッラにはラビオを当てることを前提にすれば、アンカーはニコルッシしかいないということになるでしょう。もう1人の中盤は、ハイプレスの際に前に出るタスクを任せなければいけない関係で運動量を担保できるマッケニーを選択したのだろうと思います。

ということで初先発でイタリアダービーのピッチに降り立ったニコルッシ。与えられたタスクはおそらく以下の通りでしょう。①守備時は5-3-2守備ブロックの 3センターハーフ真ん中のポジションを維持すること。②ハイプレスに出たらチャルハノールのマークにつくこと。③ボール保持時にはインテル2トップの間を通すパスラインを維持して、ボールを受けたら素早くパスを捌くこと。
いずれのタスクもそつなくこなしていたように思います。ただし、マッケニーとラビオのフォローがあった上でのことですし、局面を進めるようなプレーはありませんでした。むしろ、交替間際に不用意にドリブルで仕掛けてカウンターを誘発してしまっていました。初先発で相手がインテルということを考えればまずまずのプレーなのかもしれませんが、ロカテッリもまだ25歳。そのロカテッリは30分程度のプレーでサイドチェンジや縦パスで局面を進め、タイミングを見計らった攻撃参加でチャンスを演出。軽度の肋骨骨折を抱えながら危険なスペースをインテルに明け渡さないポジショニングで守備にも貢献していました。2歳しか年が違わないロカテッリとの間には大きな差がある現実を突きつけられています。ロベッラがモンツァ、ラツィオで確実に経験を積んでいることも考えれば、ニコルッシがユベントスに残るためにはこれから相当の努力が必要だと思います。

ユベントスの守備

さて、いつものように守備から試合に臨んだユベントス。アッレグリは左右非対称な守備戦術を用いてインテルを封じ込めようとしてきました。

ミドルプレス、ロープレスはいつも通り5-3-2ブロックを敷いてゾーンディフェンス。ニコルッシのポジショニングもズレることはなく、マッケニーとラビオのフォローもあって5-3-2ブロックの強度は保たれていました。キエーザはブラホビッチの横にいたり、中盤のラインにいたりと位置が安定しませんでしたが…。

ハイプレスは、ブラホビッチがデフライ、キエーザがダルミアンにマークについて、アチェルビにはマッケニーが出ていくように設計されていました。ウイングバックにはウイングバックをぶつけ、ラビオがバレッラを、ニコルッシがチャルハノールをマークしていました。マッケニーが上がることで浮いてくるムヒタリアンにはガッティが上がって対応。ブラホビッチとキエーザが早めにマークに出てボールをアチェルビに誘導してマッケニーを前に出すという流れでハイプレスに出ていました。インテルにうまくボールを動かされてタイミングで先を取られてハイプレスを外されるシーンもありましたが、ブレーメルの高速のカバーリングで事なきを得ていました。ハイプレスに対してインテルのパスワークが上回ったとしても、素早くマークについて時間を削ればパスの行き先は予測しやすくなります。ブレーメルのフィジカルであればカバーできるという計算があったように思います。ハイプレスもチームとして連動して機能させていましたし、ブレーメルのカバーも完璧。引いて構えた時の5-3-2ブロックの堅さは相変わらずで、失点シーン以外はインテルをうまく守備でコントロールできていたと思います。

連動しないハイプレスでは…

さて、問題の失点シーンです。ルガーニの無謀なスライディングが直接的な原因なのは間違いないのですが、そもそもルガーニがスライディングした相手はバレッラ。ここに最大の問題があります。ルガーニからしたら、危険なスペースでなぜバレッラがフリーなのか。なぜ自分がバレッラのマークに出なければいけないのか。文句の一つも言いたくなる状況ではあったはずです。それでも、冷静にバレッラから縦パスのコースを消して欲しかったところではありますが。

そもそもバレッラにはラビオがマークにつくはずです。なぜ、バレッラにルガーニが出なければならなかったのか。ラウタロのゴールから15秒ほど遡り、キエーザがダルミアンに倒されたシーンに戻ります。倒れたキエーザはファウルをアピールしていました。このプレーに関しては腕がキエーザに当たっているのでファウルを取っても良かったかもしれませんが、この際それはどうでもいい事。問題なのはキエーザがファウルをアピールするために使った時間ですでにインテルはボールを動かし、ポジションを修正し、キエーザがマークにつくべきダルミアンはフリーでボールを受けられる状況にあったという事です。つまり、ユベントスはハイプレスに出るタイミングは逸しており、一度引いてポジショニングを修正して態勢を立て直すべきでした。キエーザがロストした段階でコスティッチ、マッケニー、ニコルッシは一度引く構えを見せていました。しかし、ブラホビッチは前に出て、あろうことかキーパーにまでプレスに行く始末。相手にフリーな選手がいる中でプレスに出れば、ボールは早く動きます。プレスに来られた選手はプレスに対応するためにフリーな選手にパスを出すのは明白ですから。案の定、ゾマーはフリーのダルミアンにパス。キエーザがロストした時に惰性で前に走っていたラビオはそのままダルミアンにマークに出ますが、右サイドのダンフリースにボールを逃がされてしまいます。一度引く構えを見せたコスティッチはダンフリースへのプレスが遅れ、ダンフリースから斜めのパスでバレッラへボールが渡りました。おそらく一度は引いて構える姿勢を見せていたであろうルガーニが必死にバレッラに出ますが間に合わず。ルガーニがギリギリで離したテュラムへブレーメルがカバーに走りましたが距離を詰め切るところまでは行けず、クロスを入れられてラウタロの完璧なシュート。結局、インテルで最も警戒すべきバレッラに一瞬の隙を突かれた形で失点してしまいました。

ただ、何度も言及してきたように、キエーザがロストした時点でブラホビッチ、キエーザ、ラビオとその他の選手のプレー選択が異なっており、連動したハイプレスをかけられていなかったことに原因があります。厳しいことを言いますが、ユベントスのキャプテンマークを巻いているなら、ラビオは惰性でハイプレスに出ず、下がって5-3ブロックの形成に戻るべきでした。連動していないハイプレスなど、インテルクラスのチームからしたらひっくり返して擬似的なカウンターで仕留める絶好のチャンスにしかなりません。ユベントスが来季のCL復帰を目指すなら、是が非でも修正すべき課題です。アッレグリはブラホビッチとキエーザに守備や試合を読む戦術眼を叩き込むことができるでしょうか?

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