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セリエA 第23節 イタリアダービー(AWAY) 〜CL準優勝は伊達じゃない

サンシーロで行われた首位攻防のイタリアダービーは0-1で競り負けました。内容を見ても今季のインテルの充実を思い知らされる力負け。現時点ではインテルの方が上だったと認めるしかありません。これでインテルとは実質勝ち点差7となり、スクデットについては他力本願となってしまいました。ただ、2月以降にCLが入ってくるインテルが足踏みをする可能性もあります。諦めずに毎試合集中して準備をしていく必要があります。

ほこ×たて対決

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアーゾ、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、ユルディズ、ブラホビッチ。5-3-2をベースに守備から試合に入るプランでスタートしました。ペナルティエリアすぐ外にディフェンスラインの位置を設定して構えて守るユベントス。5-3-2ブロックを敷いてキーマンとなるチャルハノールとバレッラはユルディズとロカテッリが監視しつつ、スペースを管理してインテルを押さえ込もうとしました。

インテルはチャルハノールとバレッラが下がってボールを受け、ロカテッリとユルディズのマークを剥がしてボール保持に参加。その上でディマルコとパヴァールがペナルティエリア深くまで突撃してくる攻撃を展開。ポジションの概念を逸脱してWBやCBがストライカー然とペナルティエリアに侵入してきます。当然、ラウタロ、テュラムもゴール狙ってペナルティエリア内に陣取っていますから、ペナルティエリアにボールが入る時にはインテルの選手が3、4人はゴール前に絡んでいる状態でした。そこにインテルはペナルティエリア手前からのアーリークロスをシュチェスニーが出られないハーフスペースを狙って入れてきました。ユベントスの守備ラインが下がり切ってゴール前を固める前に、敢えて早めにクロスを入れて守備ラインの裏を狙うというコンセプトでしょう。シュチェスニーが出られず、DFも下がりながらの守備を強いられて対応が難しくなります。

また、ラウタロとテュラムは近い距離をキープしてプレーしており、縦パスが入ると素早く連携をとってシュートを狙ってきました。2トップへの縦パスは明確なスイッチになっており、周りの選手と連動して波状攻撃を仕掛けてきます。クロスの狙い所といい、縦パスが入った後の連携プレーといい、インテルの攻撃には狙いと再現性がありました。スペースの管理に重きを置くユベントスの守備に対して、隙間のような小さなスペースに人とボールを送り込んでくるインテル。正確な技術と連携でインテルの攻撃がやや優勢ではありましたが、それでもブレーメル、ダニーロ、ガッティがギリギリのところで体を寄せてシュートブロックやクリアして難を逃れていました。セリエA頂上決戦に相応しいほこ×たて対決がそこにはありました。

一瞬の隙

そして試合が動いたのも、インテルのポジションチェンジとハーフスペースを狙ったアーリークロスからでした。右サイドでボールを保持したインテルは、ペナルティエリアに侵入していたバレッラがポジションを下げ、入れ替わるようにCBのパヴァールがペナルティエリアへ入っていきます。バレッラのマークについていたダニーロはバレッラを離してマークを受け渡しますがうまくいかずにバレッラはフリーに。このタイミングで逆サイドからディマルコがダニーロのゾーンまで入ってきてダニーロはディマルコが気になったのかパヴァールがペナルティエリア内でフリーになってしまいました。自陣ペナルティエリア付近で2人もフリーにしてしまったら、失点を覚悟しなければなりません。ペナ角あたりでフリーになったバレッラからペナルティエリア内でフリーになったパヴァールに絶妙なクロスで勝負あり。ブレーメルがパヴァールを捕まえていれば防げた失点だったとは思います。マークの受け渡しのミスも絡んで、またもや一瞬の隙を突かれる形での失点となってしまいました。ただ、デフォルトでポジションチェンジからCBをペナルティエリアに攻め込ませる設計にしているインテルのアグレッシブな攻撃を褒めるべきでしょう。インテルはスピードとフィジカルの強さを備えたCBを揃えており、ネガティブトランジションも鍛えられています。多少リスクを負って攻め込んでもネガティブトランジションで相手のカウンターを抑え込めるという計算と自信があるように見えました。ラウタロの好調も相まって高い攻撃力を維持しながら、失点するリスク管理を徹底できているという良いバランスを見出していると思います。シモーネ・インザーギ監督の手腕には感服するばかりです。

ユベントスの反撃

ユベントスはボール保持時にはカンビアーゾとユルディズが空いているスペースに潜り込んで流動的に動いてボールを動かすつもりだったのだろうと思います。ただ、カンビアーゾとユルディズのフリーロールをうまく活かし切れずにインテルの守備ブロック内にボールを動かすことはできませんでした。ロカテッリが自らを囮としてCBにスペースと時間を渡していたのですが、そのスペースと時間をうまく使うことはできませんでした。ラウタロとテュラムがCBまでスプリントでプレスに出てきたとはいえ、中間ポジションを取っていたカンビアーゾやユルディズに縦パスを打ち込むだけの余裕はあったように見えました。結局、インテルの守備ブロックの外をボールが動き、ラウタロとテュラムのスプリントによってGKまでボールを下げさせられてインテルに守備ブロックの前進を許してしまうことになりました。特に前半は効果的にボールを前進させることができませんでした。

後半はマッケニーを押し出してマンツーマン気味にハイプレスに出ました。いつもの選択肢を削るタイプの「遅い」ハイプレスです。これでインテルのビルドアップを阻害して後ろからボールが出た先で回収して押し込む時間を長くすることに成功し、後半はユベントスが攻勢になりました。コスティッチのシュートやガッティのミドルは惜しいシーンだったかと思います。しかし、ラビオ、キエーザは間に合ったとはいえコンディションが悪かったのか不用意なロストも増え、前がかりになってきた分カウンターから決定機を作られてしまいました。シュチェスニーが2本ビッグセーブで救ってくれましたが、0-3のスコアでもおかしくなかったと思います。インテルからしたら後半はある程度ユベントスを引き込んでカウンターで仕留めるというプランも頭にあったのでしょう。ある意味、後半はインテルの狙い通りの試合展開となったのかもしれません。

グランデ・インテル

インテルの強さを見せつけられた試合でした。昨季CL準優勝は伊達ではありません。今季のCLも上位進出を期待したくなります。R16でアトレティコ・マドリーを引いているので、いきなり難敵が待ってはいますが、レアル、シティに続いていけるレベルのチームだと思います。後ろから人を押し出してペナルティエリアに攻め込ませる攻撃は魅力的かつ大胆で、人数をかけている分フリーになる選手も生み出しやすく得点のニオイがしています。なおかつ、ディマルコ、パヴァールがペナルティエリアに侵入したとしても、ダルミアン、バレッラ、アチェルビ、バストーニはセカンドボールやカウンター対応のために控えていますし、ネガティブトランジションが恐ろしく早いためカウンターも未然に防ぐ態勢を整えています。(その意味でもマッケニーが抜け出した場面でブラホビッチは少なくとも枠内にシュートを撃ってほしかった…。)

例えていえば、昨季のナポリを攻守のバランスを重視した形にチューンアップした感じです。4-3-3だったナポリに対して5-3-2のインテルは守備力で上回っている印象です。攻撃においても、オシムヘンとクバラツヘリアという絶対的な個の力では劣るかもしれませんが、ラウタロを中心としてポジションレスな動きで積極果敢にゴールを狙いに行っています。中盤の3人も経験豊富で高次元で攻守にバランスが取れています。スクデットは高確率でインテルが手中に収めるでしょう。CLについても上位進出はもちろん、ビッグイヤーも視野に入ってくるでしょう。ただ、絶対的な存在が多いチーム構成なので、怪我やコンディション不良が最大の敵になるでしょう。

数メートルの差

インテルとユベントスの大きな差は、ボールを前進させた最後の数メートルをどうするかというところにあります。ユベントスは、ポジションチェンジやポジションレスなフリーロールを主にビルドアップの段階で使っていました。ユルディズ、カンビアーゾが守備時のポジションを離れて中盤に顔を出す。そこでフリーになってターンするなりしてボールの前進に寄与するといった仕組みです。インテルもビルドアップの段階でポジションチェンジは多用してきましたが、特徴的なのはボールを運んだ後、ペナルティエリアを攻略する段階にこそポジションチェンジを大胆に使ってくることです。ペナルティエリア内に本来ならいるはずのない選手(ディマルコやパヴァール)がいる。これだけで守備は混乱します。ユベントスもうまく対応してはいましたが、最後はやられてしまいました。

ペナルティエリアをどうやって攻略するか。

この点につき、インテルの方がユベントスに比べてアグレッシブかつ挑戦的なプレーを選択していました。

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