藝大受験の話 まえがき

今季秋アニメで放送開始した「ブルーピリオド」。観てる人はいるだろうか。

このアニメは漫画原作だが、ざっくりあらすじを解説すると、何でも器用にこなせて一見充実しているが、どこか空っぽな日々を過ごしていた男の子が絵を描くことの楽しさに気付き、美大受験で最難関と言われる東京藝大を目指す、青春美術漫画である。

自分はアニメを追いかけること自体苦手なため、漫画しか読んだことがない。題材こそコアだが、主人公が葛藤しもがいて成長していく筋書きは王道そのものだ。また登場人物それぞれ人間味にあり、美術に興味がない人も楽しんで読めていい漫画だなと思う。面白い。


その一方で自分の場合、この漫画を読むと自分の藝大受験の記憶を掘り起こされて情緒がおかしなことになってしまうのだ。


ここからは自分の話をしようと思う。

自分は東京藝術大学絵画科日本画専攻を3回受験した。現役生、1浪、私大に入って一年生の時(つまり仮面浪人、実質2浪目)。

あの頃の自分は、人に自分の価値を認められたかった。絵を描くことにしか自分の価値を見出せなかった。そして、国内唯一の国立芸術系大学である藝大合格を掴むことは、自分の価値を証明する絶好のチャンスだった。

贔屓目抜きにして、藝大に受かる素養、可能性は十分あったと思っているが、結果的に自分は勝負に負け続け、いつになっても消せないコンプレックスを背負ってしまった。何年もチクチクコンプレックスを刺激されてもうそろそろうんざりしてきたし、アニメ放映を機にあの頃のことを整理して向き合ういい機会だと思う。ここで自分の藝大受験の話をしたところで、今までの経験に則り鑑みて「コンプレックス解消!スッキリ!」とすんなり行くとは思わないが、読み手の人にはそんな世界があるんだという面白話として読んでもらえればいいと思っている。


2021.10.17

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