自我崩壊〜新〜

おはようございます
今日は学校だ。
転校して初めての学校だ。
学校は山の奥でクラスの人数は自分を含め手のひらに収まる人数だ。
友達は生まれて数年いたことはない。
ここでもそう言った人はできないだろう。


        「「私は何も思わない。」」


昔からそうだった。
そのせいでいつも気味悪がられた。
転校の理由はそれだ。
いじめられているつもりはなかった。
だが側からみれば物がなくなったり水をかけられたりするのはいじめというらしい。
別に嫌な気持ちにはならなかった。
だが母さんは違ったようだ。
母さんは自分の子が虐められているという事実にココロガイタムらしい。
自分はよくわからない。




おはようございます。
「今日は待ちに待った転校生が来る日」とでも言いたかった。
今日は転校生が来るらしい。
興味はない。
どちらかといえば無い。
この間出ていった奴の時もそうだったから。
長い間共に生活していたが別に
「寂しくなるな」
んとは思わなかった。
何となくわかるだろうか?
そうだ。
自分は喜怒哀楽など感情が薄い。
いや、
無い。
だから良くも悪くも万年ぼっち。
転校生が来る前のHR。
めんどくさいことに、転校生が来たらみんな一言ずつ自己紹介をしなければならないということになった。
特にコレといって出来ることもなかったため何を話そうか考えていた。

「よろしくお願いします」
一言そう言った。





転校初日、皆が自分
に自己紹介と言って一言ずつ話してくれた。
別に「あたたかく迎えてくれて嬉しい」なんて思わなかった。

だが、一人印象に残る子がいた。

最後に自己紹介した子。
皆「運動が好き」とか「本を読むのが好き」とか
自分のことを言ってくれた。
だが最後の子だけ違った。
「よろしくお願いします」
一言だった。
違和感があった。
それは自分のことを話さなかったからではない。
あの棒読みの感じ
興味のなさそうな目
だけど奥に何かありそうな感じ。
少し探ったら穴が開きそうな感じ。





         「「今日も疲れたな」」

そう道に寝転がっている猫に話しかけて道草食べる帰り道。
今日来た転校生の率直な感想は、、、

そんなものはない。
           
楽しみそうにも嬉しそうにも緊張も
なにもしていない様子。
行けと言われたからきた。
ただそれだけという感じ。
だけどどこか何か伝えたそうなあのなんとも言えない目。
そんなことを考えながら公園のブランコに乗った。


16:25
「ただいま帰りました」
そういった。
母さんは来なかった。
まだ仕事中だ。
母さんは作家兼画家だ。
母さんの書く本は動物と子供の成長の本が多い。
だけど絵は
 血と欲にまみれた醜い人間というかなんというか気持ち悪くて抉られる様な絵だ。

母さんは自分に
「お母さんはね物語を書くお仕事してるのよ」
と教えてくれたことがあった。
“絵"に関しては

みつけてしまったのだ。

きっと母さんは隠したかっただろう。
一般的には受け入れられ難い絵を
自分の母親が書いているのだから。

いきなりみつけてしまった

気持ち悪い絵だった。

だが、不思議なことにこれを初めて見つけた時涙がでた。
何故かは解らない。
だけどなにか重い鉛のようなものがココロに刺さった感覚だった。




"ただいまお父さんお母さん"

父と母は17年前に死んだ

今は祖父母と住んでいる
祖父母はお父さんとお母さんの死は事故だと言っていた。
だが真相は違う。

心中しに行ったらしい。

母は元々心の病を持っていてらしい
父はそんなに依存していたらしい

そんなことを聞いたって僕は何も感じなかった。
自分の両親がいた生活をしたことがなかったから、比べる対象がないため悲しいとは思わなかった。
でも、ふと"両親のいる生活だったら"と考えてしまうことは多々あった。
こんなことを考えてもしょうがない。
今日を早く寝よう。
22:57  「おやすみなさい」



おはようございます。
学校2日目。
彼に話しかけてみようと思う。


「おはようございます××といいます。
昨日も言ったけどきっと忘れているだろうと思って。
突然だけど、私はあなたのことが

"よくわからない"そして"知りたい"

だから簡潔にまとめます。
「今度一緒に遊びに行こう」



学校に着いた。
おはようございます。
まだ誰もいないけどな
いつもみんながいない時間に一番最初に来る。
HRは8:30からだ。
それまで寝ていよう。
と思ったのに今日は学校についてすぐに昨日の転校生がやってきた。
名前は興味がないから覚えてない。
暇で退屈だから寝ようとした途端あいつが話しかけてきた。
一緒に遊びに行きたいらしい。
答えは


「OK」だっ。




遊びに行くってどこ行くの?

ちょっと行きたいところがある。

××美術館。

あそこって廃墟だよね?

そうだよ。

なんで?

素敵な絵があるの。
それを見てほしいの。

わかった。

でもね、日中は人が見張ってるから夜に行こう。
24:00にここ集合で。



"着いた"
見せたい絵があるらしい。
どんな絵か想像はしない。
とりあえず行ってから色々聞こう。

おはようございます。
いや、こんばんはか。
それじゃ行こうか
フェンスの穴を通っていくから気をつけて

裏のフェンスから敷地内に入るとお屋敷があった。だけど外壁はボロボロでツルと葉が絡まり合っていて窓ガラスは割れて荒れ放題という言葉がとても似合う。

少し進む入り口が見えてきた。
中に入るといくつも部屋があって、二階に行った。
左に曲がって一番奥で隅の部屋。
そこだけは綺麗だった。
その部屋についてしばらくキョロキョロしてると
"ここに座って目を瞑ってて"と言われた。フェンスを通って屋敷に入った。
すごくキョロキョロしているようだったがそんなことは気にも留めずに足速に部屋に入った。

ここはあの"絵"

母の絵を見つけてしまった場所なのだった。
ここに座って目を瞑っててそう言ってきた。
すぐに倉庫に入って絵を持ってきた。
これを見たらどんな反応をするか正直見当もつかなかった。 
だけどどこか

楽しみだった。
(タ…タノシミ?    オッ…オカシイナァ)

目を瞑っててと言われても部屋は暗くて少し怖かった。 
だが、
すぐにカーテンを閉めて電気をつけてくれた。

"この絵だよ"

瞑っていた目に光を入れていると
真っ赤ななんとも醜い絵が目の前にあった

びっくりした

驚いた

何か熱いものが体の底からマグマのように上がってきた。

そして吐いた。


でも醜さと同時に物凄く美しいと思った。

本当に美しかった。

ありえない方に曲がってる球体関節人形がゴロゴロと落ちている中でひとつだけ蜘蛛の糸に絡まれて美しくおどっているようだった。周りには潰れた林檎や破壊した柘榴
、葡萄他にもいろんな“果物“がナイフに突き刺さっていたり破裂したりしていた。
そして、何よりも衝撃的だったのは3枚絵をつなげると泣き叫ぶ女と殴りつける男の絵になることだった。

こんな絵どうしたの?




絵を見せたらあの人は三十分間も睨めっこしていた。

そして

吐いてた。

そのあと1時間ほど見つめ続けていたその間あの人の顔は今までにないくらい表情が変わっていた。
あまりにも食いつきが良かったので他の絵も見せてあげた。合計3枚の絵を、
そしたら驚くべきことが起こったのだ。
この倉庫にある絵は昔見つけた絵に加えその後に描いたと思われる二つの絵があった
適当に飾るために壁に立てかけていたら
自分のしっくり来るように置きたくなって少し考えていた。
しっくりきて絵をじっと見ていたら

3枚の絵は繋がっていたのだ。

今全てを思い出したあの憎む気持ち
忘れていた過去
なぜ自分が自我がなくなってしまったのか

根本的問題を今全て鮮明に思い出した。

そうだよ、、、私はあの母親の×××に
××されてたんだ。
いつも気になっていたものがあった。
それは服の下の無数の薄紫の花弁だ 
その後から恐怖感情を無くそうとして
だんだん感情がなくなっていったんだ。
早く帰ろう




なんでなんで?
もう少し見ていこうよ?
見せたかった絵なんだろ?
すごく綺麗な絵だよ?

綺麗?
これが?
この真っ赤で醜い絵が?
そんな訳ない
だってこれは…
これは…
私の昔の××されていた時の苦しみの絵なんだよ

えっ?

そっか色々戻ってきたぞ
あの時忘れた感情を
とにかく早くここから出よう
帰ろう


おはようございます
今日は××さんはお休みです。

今日は休みだった。
あいつがいないだけなのに少し前と変わらない生活なのになんかモヤモヤした。
何かもの足らなかった。
先生は××は××の家知ってるよね?
プリント届けてくれない?
と言ってきた。先生は家を知ってるはずだ。
あの子がクラス内で少し不気味がられてるのは知っていた。
だからだろうあいつは自分以外誰にも話をかけなかった。
とは言っても自分もあいつの家を知っているわけではない。だけどいる場所の目星はついた。

やっぱりそうだった昨日のアトリエにいた。外のドアの隙間から見ていると3枚の絵を見てはずっと泣いていた。
その時に思った。

       "美しい"



どうしよう。
生まれて初めて学校を休んだ。
気持ちの整理がつかなかった。
あの後家にも帰れなかった。
ただずっと3枚の絵を見ていた。
そしたらいつの間にか服が涙で濡れていた。
ここ2日でたくさんの驚きと感情の蘇りがあった。
良いのか悪いのか。
泣いていたらあいつが来ていた。


ごめん勝手に見るつもりではなかった
コレ今日のプリント。

ありがとう

…今日はなんだかつまらなかったよ
少し前に戻っただけなのに何故か物足りない退屈な1日だった。
今までこんなのなかったのに

私もこんなに感情が動いて驚いたよ。
泣いて、怒ってそれに今はなんだか嬉しい。

明日は学校に来れそうか?

うん。行くよ
ただ…

何かあるか?

今度の金曜日また少しだけ会ってくれない?

OK。



おはようございます
今日の放課後16:30頃にあの廃墟でいいですか?
良いなら返信はいらない
追伸
この間はプリント届けてくれてありがとう
また頼まれるかもしれないけど、××からならプリント受け取ってもいいな。
他の奴らはきっと嫌そうに渡すからな


あんな連絡が入ったから朝から気になってしょうがなくて授業に身が入るなんてあるわけなかった。
今日の6限目ラストの授業はクラス活動だった。
それもよりによって
人権作文。
一言書いた。
“人間は平等なんかじゃない"
人間は自由という重いものを持って一生という道を歩かなければならないのだ。
人間は世界の主人公だと思っているそうだが、他にも生き物はいる。
人間なんて*********しまえ。"
一番面倒くさい授業だった。
そのあとはずっと寝ていたため
夜はすっかり元気だった。

約束の時間になってあいつはでかいボストンバックをひとつを持って現れた。



お待たせ
それじゃあ中にはいろう。






実はね今日家出していたの。
改めてあの3枚の絵を見て
お母さんがあの時何を考えて何を感じてなんでこの絵を描こうと思ったのかなんとなく考えたの。
でね、ここじゃないどこかに溺れてみようと思ったの。
それだからね今日はお祝いなの
少し待っててね。

…じゃ…じゃーん…、、、




中に入ったら
家出をしてきた
今日はお祝いだ。と言われた。
それで少し待てと言われた。
情報が渋滞していた。
それなのに次の瞬間目に入った光景はとんでもなかった。

おい、お前何やってんだ、
髪にカッターなんて向けて、。


なに
どうしたの
私は言ったでしょ"違う世界に溺れよう"って
これからその未練タラタラを切るんだよ

お前半泣きで何言ってんだよ
マジやめろ!

そんな…
やめろよ…



立ち崩れた
俺はな、
昔父さんと母さんが死んだんだよ。
心中だってさ。知ってる?心中って?
まぁいいや
それだから生まれた時から父親も母親も一緒にいなかった。
それだから自分は少し母親のいる××が羨ましかった。 



立ち崩れた
そんなのやめてよ
せっかく決心つけたのに
もう
ダメダメダメダメ私は消えなきゃいけないの!!!!!
ああああぁぁぁぁーーーーーっっ

嫌な未来が見えた気がした。
いつのまにか
二人で倒れて朝になっていた





また倒れ込んだ


安心した


倒れててやっとわかった。
凄く重い何かが乗っかっていた。
ココロがだんだん薄くなってた。
辛かった。
なにかに寄りかかりたい
何かに頼りたいと思った 

そう言っていた。
話を聞くだけ聞いてすぐに帰った。

そのあと大人たちがきて家族とは別れて外に出たらしい。

会えなくなって知った。

段々異変はあったがただの情だけでない何かがあったみたいだ。


会えなくなってつまらない元の日常に戻ってつまらなかった。

どうやら恋に落ちてた様だ。

そのまま進学をして大人になった。

社会人4年目のある秋とも冬とも言えない日

いきなり知らないアカウントから一通の連絡が来た

"あの場所へ来て"

中に入れば柔らかい光の奥に人。

そこにいたのは昔とは違う笑顔が多くて似合う人が。 
絵を描く。

またすごい汚し方しましたね。
真っ白なワンピースに
油絵具が飛び散っていた。

おお!
××くん!来てくれたんだね?!
ひさしぶり!

お久しぶりです鈴蘭さん。



鈴蘭の花言葉は
再び幸せが訪れる


二人だけの世界へ逃避行。
幸せ風ではなく幸せを
型破りでも幸せを 


そんな僕の名前は菖蒲

菖蒲(アヤメ)の花言葉は
嬉しい知らせ、希望

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