見出し画像

味覚障害で塩分が感じられなくなった話

その日私は朝ぼんやり起きて家事を済ませて二度寝を敢行する優雅な休日の中にいた。
朝ごはんを食べるのはめんどくさかったので、昼ごはんを適当につくる。
そして食べてから気づいた。

あれ、塩味がしないな…と。
クリティカルに塩味だけしないことに気がついた。
マジか?流行病か?と一瞬焦る。
他症状は咳なし、喉の痛みなし、熱もなし。
ついでに嗅覚も正常。

ちょっと不気味なこの感覚を共有したい。
塩味だけクリティカルにしないというのはどういうことか。

普通にご飯を食べる分にはなんとなく楽しめる。
塩味以外は普通にするので甘いものも問題なく食べられる。
ただ、問題は元から塩味が強いものを食べた時。
例えばのり塩のポテトチップスを食べると芋・油・青のりの味だけする。塩味のもたらすシナジーやまとまりというのは一切なく、味の構成要素がレイヤーのようにはっきり分かれて感じ取れる。
あまりに素材そのものが分離して感じられるので塩味だけでまとめられていた料理の味はすべからく口の中で分離していく。これにより今まで美味い!と感じていたジャンクフードやらおつまみやらがどれだけ塩味に頼った料理だったか…というのを痛感した。
そして、塩味をとった結果というのは感じ取れる。
たくさん塩を舐めた時の舌がキュッとする感覚、そして大量摂取した後の胃の痛みまで…

食事の結果は味を感じ取ることにあるはずなのに、そこを無視して食べた後の感覚だけが結果として残ってしまう。
あんなに塩味がしないのに塩味を摂った結果だけが残るのも気味が悪い。

ちょっと塩味だけしないのが面白くなってきたのでコンビニのバジルサラダを買ってきてみた。
おお…まとまった味がする…!
なぜまとまった味がするのか?
おそらく、バジルソース全てまとめているのは塩分ではなくオリーブオイルだ。ニンニクと粉チーズという塩分なしでもガツンとくる旨みをオリーブオイルでまとめ上げているため、本当に美味しく感じられた。

一通り自分の味覚で遊んだあと、塩味だけしないのは流石に異常なので翌日、即病院に行った。
医者曰くただの味覚障害、らしい。
ただの、ってやつなんだと思いながらもらった亜鉛の薬を飲んだら治った。

すごく不思議な体験だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?