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私のリハビリは基本40分でやっており、患者さんとの対話が長く出来、それが何より楽しい。

あるおばあちゃんは、60年前に保育士になって、園長をされたり市の地域センターの立ち上げに携わってきた。公的な仕事が終わった後も、地域活動に余念が無い。とっても世話好きな人なので、リハビリの度に何か小さなプレゼントを持って来られる。

飴玉に、チョコレートを2、3個

時に、家になっていた金柑を何粒か。

時に、もらったふりかけの袋の詰め合わせ。

時に、食べかけのスルメ!

それを、人が周りにいないことを確認して、シャッと私のケーシのポケットに滑り込ます。

「受付に渡してもらってもいいですよ」と言っても、学園ラブコメディーのように大部屋であるリハ室の人の目を盗みシャッと出てくる。毎回出てくる。何事もなかったかのように会話を続ける。
流石にスルメの時は、大きな袋がポケットからはみ出てガッサガッサして、しかも開けてあるからスルメ臭いし可笑しかった。
いつも、滑り込ますタイミングを見計らっていて、全然リラックスしているようで、していない。周りの気配に全神経を集中しておられる。

今日は、切り餅2個。

それで、一昨日は旦那さんの7回忌だったとのこと。

「どんな7年でしたか」

「うん。まああっという間。もうすこしで2人は結婚50年だったんよ」

「そうですか。きっとLさんの旦那さんだから、ええ人だったんでしょうね」

「ええ人いう訳じゃないけど、、、」

と、その方は目をつむり、何も言わなくなった。

1分、3分、、、私も合いの手を入れない。

一昨日は、広島市の桜の開花宣言で、日中はちょっと窓を開けておくのがちょうどいいくらいの春の午後。

沈黙と柔らかい光。

仰向けに寝てもらい膝の治療を続ける。

寝たのかな?

5分経った。

もっと経ってたかもしれない。

突然、目を開けて、

「うちのがやってきたのを、最近見返したりしたらね。いろーんなことを考えてやってくれとったんだなぁというのが、7年経ってまたやっと分かってきた気がするんよ」

と言われた。その瞬間。
まるでくっきりと、ふたりの想いと想いがつながっているのを、見るような気がした。

離れていてもこんな夫婦の形があるんだな。

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