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2019-20 プレミアリーグ第29節 マンチェスターダービー マッチレビュー~努力無くして成功無し~

 今更かよ!と思われるかもしれないが、マンチェスターダービーについて書いていく。この試合を見た時、「あ、レビュー書こ!」と思ったのだが、筆者も就活生という身分である。言い訳になってしまうが、なかなか時間が確保できずにこの時期になってしまった。現在はCLの結果に熱狂するファンが多いのが現実だし、この記事がアップされた頃には沢山のブロガーがCLについての考察記事を上げているはずだ。
 それでもこの記事までのリンクをポチってくれた数少ない読者たちには、時代から半歩取り残された筆者の戯言にお付き合いしてもらう。あの、わざわざ読んでいただき本当にありがとうございます(泣)

両チームのスタメン

 シティは、FA杯から5人のメンバーを変更。チームの核となるデブルイネは、ハムストリングの怪我で戦線離脱中。そのため、中盤はロドリ、ギュンドアン、ベルナルド・シウバの3人で形成される。
 対するユナイテッドは3-5-2(中盤は正三角形)のような布陣でスタート。この冬に加入したブルーノフェルナンデスがトップ下の位置に入った。

どのゾーンでも徹底。正しいバスの停め方。

 現在の3-5-2といえば、2IH+アンカーを用いた逆三角形型が主流となっている。だが、ユナイテッドはフレッジとマティッチをCHに置いた正三角形の形を採用している。基本的には、この2人が中盤でフィルター役として機能するシーンが多いのだが、この試合は2トップ+トップ下を含めた牽制が効いていたように見えた。

 試合開始して、わずか30秒でボール保持の体勢に入ったのは大方の予想通りアウェイのシティだった。この際、GKのエデルソンにボールを渡して各々ビルドアップの配置に着くのだが、画像を見て分かる通り、ユナイテッドの前線と見事に噛み合ってしまっている。
 2CBにはジェームズとマルシャル。SBにはWBのウィリアムスとワンビサカ。IHには両CHが着いてきて、アンカーのロドリにはブルーノ・フェルナンデスがマンマークしていた。

 これにより、パスコースを消されたシティはなんとかボールを動かすも、マンツーマンで着いている相手が寄せてくるため、なかなかパスコースを作り出せなかった。そのため、この時間はGKのエデルソンから長いボールを蹴って、状況を打開する術を選んだ。

 さて、エデルソンを使ってビルドアップが出来ないシティは、ある程度前進した位置で組み立てることを選択した。

 GKまでボールを下げずにゾーン2でボールをキープすると、左SBのジンチェンコは偽SBとしてロドリの横でプレーをするようになる。そして、右SBのカンセロ、フェルナンジーニョ、オタメンディの3人が後方でビルドアップを行なった。
 それに対しユナイテッドは、5-2-3のようなブロックを形勢。SB+2CBの3枚には2トップとブルーノ・フェルナンデスで牽制をかけ、各位置で数的同数の局面を作り出していた。

(GIF画像:4秒で変化)

 ②のようにベルナルド・シウバが親戚のオジサンのように気を利かせてボールを受けに来るが
 ③のように、ウィリアムスがフォーデンを捨てて奪いに来るシーンが見られた。左利きであるBシウバは内側でボールを受けてしまい、狭いコースでのプレーを迫られていた。
 なかなか前からのプレッシャーを剥がせないシティは、この後のプランとして、アグエロを使ったレイオフを慣行。

(GIF画像:4秒で変化)

 ①のようにアグエロにクサビのパスを入れるシーンは多く見られた。これでユナイテッドの5バックを押し下げるところまではいった。しかし問題はそのあと。
 ②のように落とした先のBシウバ、ギュンドアンには、人に対して強さを出せるマティッチとフレッジが待ち構えている。また、シティのストロングポイントであるスターリングの居る左サイドの相手は、プレミア界でトップクラスの対人能力を備えたワンビサカがいるのだ。ユナイテッドの考えとしては、「ある程度ラインを突破されても、ゴール前にバスを停めれば問題ない!」といった感じだった。5バックでボールを奪いきることを目的とし、仮に自陣深くまで押し込まれて、クロスを入れられても正確に跳ね返す。これが90分間通して徹底されていたいように感じたのは筆者だけじゃないはずだ。
 案の定、スターリングは、なかなかワンビサカを攻略することが出来ずに、シティの強みが徐々に無効化されていった。
 ペップは後半にある手を打つのだが、それについては後術する。

2CFでスピード勝負!

 ユナイテッドがボールを奪いきった場合は、2トップに素早くボールを供給するシーンが多かった。これは、2トップに位置するマルシャルとジェームスはスピードを活かしてシティの2CBをぶち抜くためである。
 現在、ラポルトが離脱しているためシティの2CBは、本職だがややスピードの劣るオタメンディと、本職では無いフェルナンジーニョのコンビだ。どちらかと言えばビルドアップ特化した人選であるため、守備の際に広いエリアをカバーするための機動力に欠けてしまうのだ。
 シティと対戦する相手からしてみれば、その2CBと如何にフィジカル勝負で勝てるかに勝機があると筆者は感じている。この試合もそこに注目して見ていたが、ユナイテッドの攻撃はその2CBの背後を徹底して狙っていたし、1on1の局面を何度も作り出していた。特に試合終盤にかけて、ジェームスが勇猛果敢にオタメンディへ勝負をしかけるシーンは迫力があり、シティは後手を踏みながら守備をしなければいけない局面を作られてしまっていた。
 そして、前半30分にFKのサインプレーからマルシャルが決めて先制。これまで押し込まれながらも効果的に試合を進めていた、ユナイテッドがホームで貴重な先制点をあげた。

両チームの交代の意図を読み解く

 前半を1点ビハインドで折り返した、シティが先に選手交代に出る。アグエロを下げて、ジェズス。Bシウバに代えてマフレズを投入した。

 この際、マフレズを右WGに置き、フォーデンをIHに配置。これによって右サイドの攻撃がより活性化されることになる。

(GIF画像:4秒で変化)

 後半30分のシーンだ。
 ①シティがボールを奪い取った後、ユナイテッドの陣形が整う前にボールを運ぶ。この際、フォーデンが足元で受けようとするが、ショーがフォーデンに着いて行く。
 ②そして、その裏に出来たスペースめがけてカンセロがスルーパスを供給し、マフレズが抜け出した。
 このシーンがオフサイドだった場面を除けばこの日一番の決定機だった。左サイドのスターリングはワンビサカ太刀打ちできない。ならば、マフレズによって活性化された右サイドを使うというのがペップの意図だったはずだ。これによりある程度チャンスを構築できるようになったシティだが、ユナイテッドは、マルシャルとウィリアムスを下げてマクトミネイとバイリーを投入。リンデロフが左のハーフDFに入り、ショーが左のWB。バイリーが右のハーフDFに入った。

 再び守備を堅め直したユナイテッドに抗うため、シティはジンチェンコに代えて推進力のあるメンディを投入。メンディを大外に残し、エリア内の人数を増やした「メンディクロス大作戦」を決行。だが、メンディはワンビサカ、バイリーの2人に仕事をさせて貰えなかった。
 そしてユナイテッドも最後のカードを切る。ブルーノ・フェルナンデスを下げてこの冬加入したイガロを投入。ユナイテッドはボールを奪ったら素早くボールをイガロに当ててボールキープし時間を稼ぐ手段を選んだ。
 シティは同点に追いつくために、ジェズス、マフレズ、メンディという攻撃のカードを切ったが、ユナイテッドはリードを守るための人選をチョイスした。この投入された6人の役割はとても明確化されていたように感じる。特に、ユナイテッド3人に関しては「守備を堅め直して、逃げ切ろうぜ」という意図を感じ取れた。

総評

 試合は後半ATにまさかの展開を迎えた。攻撃を急ごうとしたエデルソンのスローが味方に合わず、そのボールを見逃さなかったマクトミネイが無人のゴールへと豪快に蹴り込んだ。突然のスコールに見舞われたオールドトラフォードで最後の最後に笑ったのは、ホームのユナイテッドという結末だった。

 これでユナイテッドは10年振りにマンチェスターダービーをダブるで飾った。試合を通して守備に終われていたため、後半にガス欠を起こすかと思われたが、スールシャールの交代カードによって、もう一度チームが引き締まったように感じる。サッカーの中で、「走る」ことと「守る」ことは基本中の基本なのだが、全員がやろうとするとなると難しい。誰か1人がサボれば歪みは生まれるし、そこに生まれた隙を攻略する上手さをシティは持っている。そう考えれば、この試合のユナイテッドの選手達は誰1人集中力を欠かさずに走り切ることが出来た。チーム全員で掴み取った勝ち点3だと言ってもいいだろう。

 対するシティだが、怪我人が続出する中で、ピッチ上でも常に難しい選択を迫られていた。パスコースを探すので手一杯であり、相手陣地に運んでも、停められたバスを破壊することは出来なかった。
 もちろん美しく勝つサッカーは観客を魅了するし、筆者も「守ってカウンター」よりも「パスワークで崩す」方を好んでいる。だが、軍配はユナイテッドに上がってしまった。シティにとっては悔しいシーズンダブル。ペップは今後どういう戦い方を選ぶかが見所になりそうだ。

 よく「努力無くして成功無し」という言葉がある。この90分で言えば、誰よりもそうしたのは、ユナイテッドの選手たちではなかろうか。就活真っ只中である筆者も、この部分は肝に銘じて頑張っていくことにする。

マンチェスターユナイテッド2-0マンチェスターシティ

得点者
前半30分 9マルシャル
後半52分 39マクトミネイ

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