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SWITCH『PERFECT DAYS』特集発刊イベント

この度、『PERFECT DAYS』の特集を実施した雑誌『SWITCH』の発売(11/20) を記念して、編集長の新井敏記を迎えトークイベントを実施!
代官山 蔦屋書店に集まったお客様と、オンラインで視聴しているユーザーに向けて、本作が生まれた背景や撮影秘話など、本作の裏側をクリエイティブの視点からたっぷり語っていただきました。

SWITCHの撮影風景(11/20発売)

まず、映画制作のきっかけを聞かれた高崎は、「共同脚本・プロデュースとクレジットされていますが、最初からそうと決まっていたわけじゃなくて、みんなでゴールを決めずにやってきたらいつのまにかそうなっていました。

スタートは、柳井康治さんの THE TOKYO TOILET というプロジェクトです。この新しいトイレたちの価値や、意味をみんなが考えるきっかけをどうつくれるか。とい問いに僕が巻き込まれた形で(笑)はじまりました。
いろんなアイデアを話あいました。ひとつひとつのトイレに渋谷系の音楽をつくって、とか。柳井さんとの会話も何かゴールが決まっていたわけじゃなくて、ふたりがこれだ!と思うまで話続けるという不思議な時間で。
でもそのうち僕が映像の人間でもあり、映像をつくろう、となって。」と、当初を思い出す。

誰もが驚いたヴィム・ヴェンダース監督の起用について、高崎はその動機と、経緯についても明かす。
「(たとえば)スピルバーグやタランティーノが東京のトイレを題材にした映画を作ったら、ワク ワクしますよね。荒唐無稽ですけど、そういうニュースにひとが触れたときにおっと思ったり、ちょっとそのおかげでテンションがあがったり、そういうものがいいと話をしていました。
そのなかでヴェンダー ス監督の名前を出したら、お互いがヴェンダースのファンだということでもりあがって。学生時代に 自主映画をつくりはじめたのはヴェンダース作品との出会いがきっかけで、そのおかげで今もこういう仕事をしている。自分にとってルーツのような存在だったんです。それでふたりで手紙を書きました。
断られても、『自分はヴェンダースに断られたことがある』って言えるっていいなってそのくらいの気持ちで。中身は何も決まっていませんでした。
清掃員を主人公にしたい。役所広司さん にやってもらいたい。そのくらいで。」

なぜ、監督が受けてくれたのか?という問いに高崎は「まず彼が、日本、東京が大好きっていうのはベースにありますね。約 11 年間、自分のホームタウンと言っている東京に来ていなかった。 いつか、チャンスがあれば行きたいってずっと思っていたようなんです。
そして、バジェットの大きな作品はどうしても口を出す人が多いというストレスがある。とはいえバジェットが小さい作品だと物理的な制約にいつも悩む。それを交互に行き来しているから映画を作り続けていられるかもしれないというヴェンダースのかつてのコメントを思い出して、 今回は、自由とバジェットのあるあなたがずっと願っていた環境になるかもしれないという話と、ドキュンメントとフィクションを行き来してきたひとにしかできないものを作りたいと言うことを伝えました。
スケジュールとか物理的な理由で断るかもしれないけれども、彼にとっても良いオフ ァーだったのかなと思います。」と、受けてもらえるのではという確信めいたものがあったということを明かした。

そんなスタートを切った本作も、2022 年の 5 月に「TTT プロジェクト」として発足した当企画の 記者会見では、また短編映画のイメージしかなかった。「彼(ヴェンダース監督)の作品で、撮り始めたら映画になったという作品はたくさんあった」というが、本作も監督が来日し、シナハン、ロケハンを重ね、トイレ清掃員の平山という男のイメージを少しずつ作り上げていく過程で、監督から「短編にするにはもったいない。映画にしよう」という話が出たという。
「心の底から嬉しかった。でもそんな顔はできないので冷静を装っていたら、『俺は映画を作ったことがあるから心配するな。』と言われました(笑)。柳井さんにすぐメールしましたね。夢の電車に乗り合わせた気持ちです。」と、当時を振り返り、素直な気持ちで喜びを語った。

最後に、高崎にとってヴィム・ヴェンダースという監督とはどういう存在か、と聞かれると「監督とし て、10のうち10です。目の前にあるものを映画にする時に、どういう方法でやることが良いのか、 というところから考えるので、常に新しいものを作ることができる人。好奇心が非常に強いので永遠 に映像を作っていられる。そういう意味でもめちゃくちゃ尊敬していますし、大好きです。」と、尊敬の念を込めて、監督への想いを語り、トークイベントを締めくくった。

ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース、そして日本を代表する俳優、役所広司。2 人の美しきセッションで生まれた『PERFECT DAYS』は、フィクションの存在をドキュメンタリーのように追い、ドキュメントとフィクションを極めた。ヴェンダースの最高傑作と呼び声 も高く、世界中の映画祭を席巻し、アカデミー賞日本代表としての自信を深めている。公開にご期待ください。

SWITCHの撮影風景(11/20発売)

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