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こんにちは、植毛医の内田直宏です。

連日、2000Gを超える手術が続きました。
移植の株数が多くなればなるほど、手術の難易度が増し、我々医師だけでなく、移植看護師の経験や実力がものを言います。

さて、本日はその大事な移植看護師の実力や質について、たくさんの看護師と手術を行なってきたわたしが赤裸々に書いていきたいと思います。
また、教育についても触れていきたいと思います。

クリニックにもよるのですが、植毛手術FUE法において植毛看護師の業務は主に

⑴医師の採取の介助
⑵採取した株の確認作業・株分け作業やトリミング作業、ゴミや脂肪組織除去作業
⑶移植作業(インプラント)

の3つです。
クリニックにより⑵を省くところもございます。
また、手術方法が異なり、インプランター(移植穴に株を挿入機械)にグラフトを積む人員として別途看護師を雇用しているクリニックもございます。

一般的な美容外科看護師と異なるのは植毛看護師は上記⑴〜⑶全ての工程で「鑷子」を使用する点です。(注:鑷子を使用しない方法を用いたり、鑷子を使用しないクリニックもあるので、必ずしも使用するとは限りません)

先が細いマイクロ鑷子

この鑷子というのは非常に恐ろしい側面を持ち合わせています。

私たち、形成外科医・植毛医は皮膚縫合や真皮縫合の際に馴染み深いものなのですが、同時につかんだ途端に組織を傷つける恐ろしいものであるからです。

縫合の際にもできるだけ触らない、掴まないようにと形成外科医時代に徹底されてきました。

強く把持すると、キズがたちどころに挫滅し、治りが悪いだけでなく、治った後にも傷跡が汚くなります。

縫合でもこのような気遣いが必須なのですから、繊細なグラフトではもっと異常なまでの愛護的な気遣いが必須となります。

採取した株は非常に細く、少しでも強くつかんでしまうと途端に株は挫滅してしまいます。バルジや毛根を避けながら端っこもしくは毛の先端を持つことが最大のポイントです。

採取した株(1本毛)

把持という言葉で簡単に表せるものの、採取したグラフトを丁寧に傷つけずに把持するだけでも習得には最低でも1年はかかると考えております。
せっかく採取したグラフトを挫滅させたら医師が丁寧に採取したとしても、元も子もございません。

実はこの鑷子は基本的に左手で使用し、手植えの際には両手で使用します。
利き手でないために、実力差が現れてしまうのです。

では、看護師の役割として、下記⑴〜⑶について詳細を述べていこうと思います。

植毛手術(主にFUE法)における看護師の役割
⑴医師の採取の介助
⑵採取した株の確認作業・株分け作業やトリミング作業、ゴミや脂肪組織除去作業
⑶移植作業(インプラント)

⑴医師の採取の介助
医師がパンチの機械でくり抜くように採取したグラフトをバルジや毛丘を傷つけないように丁寧に細心の注意を払って鑷子にて採取していきます。
看護師はこの介助を行うのに最低でも半年程度は要します。
お箸で物を食べるのも人間が慣れればできるのと同様にこの作業はやればやるほどうまくなります。ただし、看護師は利き手で介助するケースが多いので全くできないといったことにはなりずらいです。

⑵採取した株の確認作業・株分け作業やトリミング作業、ゴミや脂肪組織除去作業
これも非常に大切な作業となります。
この作業はグラフトの「生着率」に直結する作業です。
私が執刀医の場合、必ず、1本ずつ、毛根鞘が付着しているか、バルジや毛丘が損傷していないか確認しながら採取しますが、この作業をダブルチェックで看護師が確認することで、さらに生着の精度が増すのです。
人間は誰しも間違いをするという前提に立ち、丁寧に何回も確認し、グラフトのカウントを行います。

植毛手術は株数が1000、2000、3000と数える機会が多いため、1つずつの確実なフィードバックと確認は大変重要です。ダブルチェック機構が理想的となります。

さらに、採取した株にゴミや脂肪組織が付着していないかの確認をして、
必要に応じて除去していきます。

この時、トリミングとは毛根鞘や組織を除去するということではなく、
移植穴に見合うように必要に応じてトリミングをするということです。

この作業の習得に同じく1年程度の教育と訓練が必要と考えております。
経験だけでなく潜在的な器用さや本人のフィードバックをする力も影響してきます。

⑶移植作業(インプラント)での看護師の役割
さて、最終の砦となる移植作業(インプラント)ですが、
ここがうまくいかないと当然毛は生えません。
インプランターを使用する方法と手植えで両手を使用して移植する方法の2通りがあり、どちらも非常に大切な作業となります。

インプランターはグラフトに直接触れずに、airの力で愛護的に移植穴にインプラントが可能になるため多くのクリニックで使用されております。
このインプランターも左手と右手で上手に使用する看護師が左右の結果を均一に出すことが可能となります。
経験者であれば、インプランターの場合は著名な力量の差がでることはそこまでありません。

問題なのは手植え作業となります。
手植えに関しては直接、鑷子で把持するため、インプランターよりも力量に雲泥の差がでます。ヘタすると全く生えないということにもなりかねません。
実際に、他院で移植を行ったがほとんど生えてこないという事例は後を絶ちません。よくよく穴を見てみると、組織が目詰まり、毛髪伸長していない箇所も多く、切れ毛が非常に多いということも特徴です。

さらに、最も大事な生え際の前列やコメカミは手植えでの細い株の移植が必須です。
この手植えの習得には最低でも2年の教育と訓練が必要で、しかも継続的に両手を使用していることが重要となります。(ただし、左手を自由に使える人はもっと習得は早い場合あり)

大学病院やクリニック内でたくさんの看護師と接点を持ってきた私が思うのは、これらの技術(特に⑵と⑶)において、残酷ですが非常に努力している看護師でも挫折するケースをよく見かけます。
特に手植えに関しては、いかにグラフトを優しく愛でるようにそーっと持ち、左手と右手の連動した使い方、手や指の柔軟な使い方、視野をよくするための工夫や移植穴の中の余分な組織の除去等、左手と右手の両方をうまく使用する必要があります。手植えの精度こそが植毛手術の成否を決めるといっても過言ではありません。

そこまでいくともはやセンスの領域なのですが
お箸をずっと使えばある程度うまくなりますが、箸の持ち方が正しいのか、豆をつかめるかどうかというのはやはりセンスの域となってくるのは皆様もご想像に容易いのではないでしょうか。

すぐに習得できる人もいれば、努力しているつもりだがいくら教えても、上達しないという人もいるのです。

本当にセンスの領域となります。1ヶ月でかなりうまくなる方もおられれば長年経験を積んでもあまりうまくなれない方がいるのです。

たくさんの看護師と手術を共にしてきて、わたしが感じたこと。
それは、「フィードバックを常にかけられる自分に厳しい人かどうか」「利き手だけでない手も常々使う癖があるか、もしくは幼少期に両効きの指導を受けてきたかどうか」「裁縫や細かいことが好きかどうか」
この3点が看護師の実力向上に関わるであろうということです。

わたし自身、創傷治癒の知識や微小外科のイロハは常々看護師と共有し、学会の再診情報を共有するようにしております。これにより連携の取れたチームプレーで99点以上の点数が叩き出せると思っております。
また、看護師と綿密なコミュニケーションをとり、技術向上の練習、時に医師を含めて同志として教え合うことが必要です。

国際毛髪外科学会では移植看護師のことをSurgical Assistants とよび、 Per Diem (アルバイト)、Full-time Staff(常勤)どのように配置するか等のスタッフの人事についても触れています。当然、常勤が良いのは言うまでもないが、アルバイト医師と同じで、アルバイト看護師も存在し、結果が左右されるということですね。

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