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αエラー,βエラーのリスクを低減できるメタアナリシスの手法:trial sequential analysis (TSA)

敗血症患者に対するβラクタム薬の長時間投与と間欠投与のメタアナリシスですが,trial sequential analysis (TSA)という手法を使っています。
単に累積データを統合するだけの通常のメタアナリシスだと,RR 0.82; 95%CI 0.70–0.96; P = 0.01で統計学的有意ですが,TSAで調整した95%信頼区間は 0.62–1.07と有意ではありません。
結論は,長時間投与はshort-term survival benefits and higher clinical cureと関連するが,TSAからはもっと研究が必要だ,というものでした。

従来のメタアナリシスだと,RCTが1つ発表される毎に,メタアナリシスを行うことが可能です。しかし,これを1つのRCTになぞらえると,1つのRCTの間に中間解析を何度も繰り返すようなもので,αエラーを増大させます。
といわれてもなんのことかピンとこないかもしれませんが,
1)データが集まる度に,毎日P値を計算して,P値が0.05未満になったところで試験を終了する
2)すべてのデータがそろってから1回だけ検定(P値を計算)する
の2つを比べたら1)の結果はなんだかインチキくさいでしょう。

αエラー(タイプIエラー):あわてもののα
→本当は差がないのに,差があるとしてしまう
βエラー(タイプIIエラー)):ボーッとしたβ
→本当は差があるのに,差がないとしてしまう
と覚えることが多いです。

メタアナリシスの中でαエラー,βエラーともに制御しようというのがTSAです。
TSAは以下のTSA softwareマニュアルが詳しいです。

https://ctu.dk/wp-content/uploads/2021/03/2017-10-10-TSA-Manual-ENG_ER.pdf

TSA softwareは以下からダウンロードできます。


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