『設計ポリシー』とプリウスの事故

みなさんは、エレベータが閉まりかけて、慌てて誰かが乗ってきたときに、“閉まる”ボタンを押し続けたことはありませんか。
トイレの洗面台で水道の水を止めようとレバーを下げたら、勢いよく水がジャーっと出たってことありませんか。
 
私が帝国重工で飛行機の設計をしていたときに、必ず守らないといけないことがありました。それは「何かの操作をしたときに、必ず同じ動作をすること」
それを『設計ポリシー』と言います。

例えば、ON/OFFのスイッチが10個ついていて、9つはスイッチを上げるとONだけど、ひとつだけ下げるとONだったらどうでしょうか。しかも、それが命に関わる重要なスイッチだったら。

これは設計ミスではありません。
ちゃんと決められた動作をしますし、正しく操作をすれば何も問題が起きないからです。

ところが人間は、とっさの時には、自分の体に染み付いた動きをしてしまうのです。
先ほどの水道の蛇口も、自宅の洗面台で、レバーをいつも下げて水を止めているから、トイレでも無意識に同じ動作をしただけなのです。

ところで、

最近、プリウスと高齢者の組み合わせで起きる事故が多発しています。プリウスの販売台数が多いからとか、単なる偶然と言われていますが、本当にそうなのでしょうか。

私はカーシェアリングを利用していて、いろんな車種に乗ることができます。
そこで、気になることは「パーキングブレーキ」です。

最近はサイドブレーキは減りましたが、足で踏むタイプのフットブレーキや、スイッチでかける電気ブレーキがあります。
フットブレーキは、足で踏まないとブレーキが外れませんが、電気ブレーキはシフトレバーをDレンジに動かすと、勝手にブレーキが外れてしまいます。
普通はどちらかが付いているのですが、プリウスはフットブレーキと電気ブレーキの両方が付いています。

たぶん、「パーキングブレーキ」の『設計ポリシー』はバラバラ。
でも、これって設計ミスじゃないのです。

では、シフトレバーはどうでしょうか。

シフトレバーは、ガチャガチャと手前に引くとDレンジになるし、押すとRレンジになります。レバーはそれぞれのレンジの位置に止まるので、目の前のパネルを見なくても、目で見て確認をすることができます。
ここまでは『設計ポリシー』は同じですね。

ところが、プリウスは違います。シフトチェンジをしても、その後、レバーが戻ってしまうのです。目で見ても、今、どのレンジなのか分からず、センターに近い(目の前に無い)パネルを見なければ、確認ができません。
落ち着いて操作しているうちはいいのですが、急いでいたり、とっさの時は、私も一瞬、手が止まってしまうこともあります。

つまり、プリウスの『設計ポリシー』だけ違う。
でも、これって設計ミスじゃないのです。

多くの場合、
人間はとっさの時には、自分の体に染み付いた動きをします。

車の運転をしていて、何かとっさのことが起きたときに、もし『プリウス』に乗っていたら…。

トヨタは、自動車に設計ミスは無いと言います。
そうでしょう。設計ミスはありません。
ちゃんと操作をすれば問題ないので、WebやSNSでも「俺は間違えずに運転できる」という方もたくさんいます。

ここからは、私の設計者目線での推測ですが、
トヨタの車は車種ごとに、『設計ポリシー』はバラバラです。
たぶん、車種ごとにプロダクトマネージャーがいて、トヨタとしての『設計ポリシー』の横連携は無いのだと思います。
でも、そこには何も問題が無いのです。だから、トヨタ得意の「なぜなぜ分析」をしても、原因を特定することはできないでしょう。

今回は、少し違った目線でプリウスと高齢者の事故について、考えてみました。
みなさんの考えもまたお聞かせください。

(おわり)

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ありがとうございます!やる気をいただきました。
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小久保重信

業務コンサルタント 【私は】 ・問題発生の構造を解明 、顧客ごとの提案資料 、企業の良さと標準化を両立 、やり方は無限 、プロジェクトの結果重視 【一般は】 ・問題指摘、犯人捜し 、提案資料を使いまわす 、効率化のために標準化 、自社のソリューション売り 、プロジェクトの進捗重視
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