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上場アパレル企業における外部ECモール売上比率

株式会社Bizgemでは「すべてのクリエイターに良質な経営を提供する」をミッションに各種コンサルティングサービス、ECサイト開発サービスを提供しております。

弊社では、外部ECモールの売上がメインの企業様向けに自社ECサイトの売上を伸ばすサービスと自社ECサイトの売上がメインの企業様向けに外部ECモールの売上を伸ばすサービスの両方を提供しております。

またブランド立ち上げ期におけるコンサルティングサービスも提供しており、その際には自社サイトのみで提供するべきか、外部ECモールも活用すべきか議論することがあります。

今回は上場アパレル企業のIR資料を元に、各社がどの程度外部ECを利用しているのか見ることで、自社の自社EC・外部ECの戦略の参考にしていただければと思います。


EC以上における外部ECモールの売上比率

2022年度のBtoCのEC市場規模は経済産業省の統計によると、22.7兆円、EC比率は9.13%と引き続き増加傾向にあります。

その中で各社のIR資料や推定値などに基づき、ECモールの取扱高に基づくEC市場の概況は下記のグラフの通りです。

EC市場規模における各社の取扱高

楽天市場が成長を続け2022年度は取扱高が5.6兆円を突破しており、Amazonは日本の取扱高を公表していないため推計値になりますが、楽天とほぼ同等程度の5兆円規模の取扱高があると推測されます。

この2社で市場のおおよそ半分、そこにヤフーショッピング、ZOZO TOWNなど各種ECモールを含めるとEC市場のおおよそ半分はECモールということがわかります。

主要アパレル企業EC売上における自社・外部比率

次に主要アパレル企業のEC売上における自社・外部比率を見ていきたいと思います。自社・外部のEC売上比率を公表している会社が限られていたため、ある程度売上規模の大きい企業の中で公表している会社を抜粋してグラフを作成しています。

主要アパレル企業EC売上における自社・外部比率

オンワードHD、三陽商会など百貨店での売上比率が高めの企業の自社EC比率が高く、よりカジュアルなブランドでSCを主戦場とした企業では外部EC比率が高いことが伺えます。

※百貨店チャネルの売上比率はオンワードHD33.2%、三陽商会は66%(各社2022年度期末決算IR資料より)

ショッピングセンターの売りげ比率が高めのアダストリア、バロックジャパン、TSI、パルの各社は5o〜60%がZOZOを中心とする外部ECモールとなっています。

上記にあげた上場企業各社は歴史のあるブランドを多く持ち、ブランドでの氏名検索が相当数あるため、新興ブランドに比べると自社ECの比率を高くしやすい構造となっているにも関わらず、EC売上の半分程度をZOZOを中心とする外部ECモールに頼っているというのがわかります。

外部のECモールは自社ECと比べると販売手数料およびモール内での販促費用がかさむため自社ECに比べて収益性が著しく低いと考えて、自社ECを重視したいと考える経営者の方が多いと思います。一方で、①そもそものEC市場の半分以上をECモールが占めていること、②自社ブランドの氏名検索が多く自社ECを伸ばしやすい構造の大手上場企業でも外部ECの比率がある程度高いことを踏まえると、狙う売上規模・自社ブランドのターゲット顧客層によっては、自社ECだけでなく外部ECも選択肢としてあげてもよいのではないかと思っております。

外部EC比率の高い各社のIR資料

次に外部EC比率の高い各社のIR資料での記載を見ていきながら各社がどのように外部ECを利用しているのかを見ていきたいと思います。

安定して外部EC比率が50%前後を推移するアダストリア

アダストリアIR資料より

アダストリアに関しては自社ECサイトのドットエスティも会員数が1,550万人と好調に推移している一方で、外部ECの比率は一貫して50%程度を占めています。

自社ECサイトの強化を打ち出しながらも、外部ECの市場規模も理解した上でうまく付き合い続けていることが伺えます。

ZOZOの売上が2020年度から2023年度でおよそ倍以上に成長しているバロックジャパン

バロックジャパンIR資料より

バロックジャパンに関しては、IR資料でも「ECサードパーティーでのさらなる売上強化に向けた取組強化」と打ち出しているように、外部ECでの売上成長を成長戦略の一つとして捉えていることが伺えます。

ZOZO TOWNでの売上が2020年2月期26億円→2023年2月期50億円とおおよそ倍の規模まで成長しています。

収益性の観点から自社EC強化を打ち出していた企業でも、EC市場のおよそ半分を占める外部ECの市場規模の大きさから取組を強化する企業が今後も増えてくるのではないかと思っております。

ECモールでの値引き抑制・専売品強化で粗利率を改善しているTSI

TSI HD IR資料より

ECモールでの販売は、そもそも販売手数料も取られる上にクーポン・値引きしないと売れないというイメージを持っている経営者の方も少なくないことを日々のコンサルティング活動の現場で感じています。

一方で前職のD2Cブランドの経営経験からも外部ECモールでも収益性よく売上高を追い求めることは可能だと考えています。TSIのIR資料においても、「過度な値引きの抑制や専売品強化などにより、粗利率+7.6%と収益性を大きく改善し、全社営業利益計画達成の大きな要因となった」とあるように、取り組み方・外部ECモールの位置付け次第では収益性との両立が可能であることが伺えます。

自社ECであるPALCLOSETの成長率が高いながらもZOZO売上も同水準で成長させているパル

パル IR資料より

外部EC比率を公開している企業の中で63%と最も外部EC比率が高いパルに関しては、自社ECだるPALCLOSETの前年成長率が135%と最も高いものの、ZOZO TOWNの売上も127%と変わりない水準で成長させています。2020年2月期のコロナ以前の対衣料品のEC売上比率が18.1%から2023年2月期は40%と一気にEC化を進める中で、外部ECの市場もうまく利用しているものと考えられます。

上場アパレル企業の外部EC比率とIR資料から考える外部ECとの向き合い方

ここまで見てきた上場アパレル企業の外部ECの取り組みを見ていると、収益性の観点から自社ECだけに注力すべきというのは極端な意見で、そもそものEC市場規模の半分以上を占めるECモールとはうまく付き合う必要があると考えられます。

特に価格帯的に百貨店ではなく、ショッピングセンターなどで多くの消費者の方が手に取る価格帯のブランドであればECモールとの相性も悪くなく、TSI HDの外部ECにおける粗利率改善の取り組みのことを考えると収益性を担保しながら売上の規模を追求することも可能であることが伺えます。

冒頭でご紹介した通り、弊社では外部ECも自社ECも収益性を担保しながらD2Cブランドを運営してきた経験から、外部ECモール・自社ECの売上成長を支援するサービスも展開しております。外部EC・自社ECについて今後の展開、運用面でお困りのことがあればぜひお気軽に無料ご相談のご連絡をいただければありがたいです。

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